Red
すべての赤毛の女の子がそうであるように、私は「反乱女王にそっくりだ」と言われて育った。そしておそらくほとんどの女の子がそうであるように、私は自分だけが特別モイラに似ているのだと自惚れていた。
左手に反乱の炎を掲げ、右手に真実の剣を握って弱き者たちを導く、立ち塞がる巨悪を打ち倒すのだと誇らしげに胸を張る。ずっとモイラになりたいと願っていた。
馬鹿だった。本当に馬鹿だった。彼女のことなど何も知らなかったくせに、私は。
もう随分と昔に、ハウ伯爵が私を見て言った。母親譲りの赤毛を優しく撫でて「見る者を勇気づける色だ」と、あの女王が生きた時代を知る人に誉められたのが嬉しくて舞い上がった私は「モイラみたいに?」と尋ねた。彼は困ったように黙り込んだ。
そして今、燃え盛る城塞の廊下に横たわる私を見下ろして、彼はもうあの時のように誉めてはくれなかった。
私の赤い髪、ハウが放った炎、流れ出す血。それらが私を取り巻いている。モイラのようになれたならすべての暴虐を凌駕できると思い上がっていたけれど、もっと強く熱い赤がこんなにも。
「なぜここへ戻ってきたんだ、エリッサ」
せめて両親を置き去りにしたあの場所に辿り着きたかった。でも、もう足が動かない。ハウはもちろん連れて行ってはくれないだろう。私の足を切ったのは彼なのだから。私の腕を折り、胸を裂き、腹を刺したのはハウ伯爵だ。そして彼を染める血はきっと、父さんと母さんの色だった。
私は馬鹿だ。本に書かれたきらびやかな言葉だけが真実だとでも思っていたのか。モイラは父親の死によって女王になった。敗北の代名詞にまで貶められたブランデル、彼が死んだから、メグレンに首を吊られて殺されたから、だから彼女は戦場に身を投じたんだ。
そうでなければ何者でもなかったろうに。いや違う、父が生きていれば何者になる必要もなかっただろうに。彼女は英雄なんかになりたかったのか。彼女は今の私と同じ、ただの夢破れた可哀想な人。
復讐のための戦いで得る栄光など心に何ももたらさない。父さんも母さんも死んだのに私が反乱を起こして誰が救われる?
両親を見捨てて逃げたとき、燃え盛る髪持つ女王への憧れは一瞬にして焦げついた。
ハウに立ち向かったところで何も取り戻せないのは分かりきっていたのに、子供染みた名誉心をかさにきて誰に抗おうとしていたのか。頭上から愚かさを詰るように冷ややかな声が落ちてくる。
「馬鹿だな。エリッサ、お前まだモイラに憧れていたんだろう。剣を振りかざせば何かを得られると思ったのか」
「……」
「彼女がどうやって死んだのか知らないくせに」
「……」
本当は知っている。ただ見ないふりをしていたんだ。綺麗なところだけ切り取って勝手な幻想を抱いて。亡き父親の後を継いで軍を率いた偉大な女王モイラは、最後には騙されて捕らえられ、反逆の大罪人として城門に首を晒された。
結局のところ彼女も大切なものを守りきれず死んだ敗北者に過ぎなかった。
「運良く逃げ出せたのにむざむざ殺されに戻ってくるとはな。ブライスもエレノアも、もういない。お前は自分のために生き延びるべきだった」
ぼんやり見上げた天井にハウ伯爵の顔が覗く。彼がどんな表情をしているのか、陰になってよく見えない。
「首を晒したりはするまい。私はメグレンではないからね」
軍勢を集めた君と戦うのを楽しみにしていたのに残念だ。失望の滲む声で彼はそう言った。
私は死ぬ。モイラのように悲しみに焼かれて戦い、力尽きて殺される。私……彼女のようになれなくてもいいから、父さんに生きていてほしかった。どんなに崇高な意志を抱いて逝った死者よりも今ここに生きている者の方がずっとずっと素晴らしいのに。死んでしまえば愛や誇りさえ無意味だ。
生きていてほしい。生きていたかった。そんな単純な願いにすら気づかず名誉ある戦いなんてものを求めていた私は救いようのない馬鹿だ。
「……私、の……色は……どんな……?」
ハウ伯爵は昔と同じ優しさで私の髪を撫でると、慈しむように口づけた。やがて熱も輝きも失われるだろう。薄れゆく記憶の中、炎を背負ったハウの影が瞳に焼きついた。
「血に塗れ、炎の中で輝いて、とても美しいよ」
彼は言わなかった。私がモイラに似ていると、彼は一度も言わなかった。もう少し早くそのことを考えてみるべきだったんだろうな。