新年のキス
魔法使いのいる世界で、二度目の新年を迎えた。いつもより少しだけ遅く目覚めてしまったため、急いで身支度をして部屋を出る。扉を開けると、目の前にはルチルが立っていた。
「あ! 賢者様、おはようございます!」
「るっ、ルチル! おはようございます」
「今、ノックをしようとしたんですが、賢者様は早起きですね」
「いいえ。いつもよりかは遅起きです。起こしに来てくれてありがとうございます」
礼を言うと、ルチルの手が頬を撫で、首の裏に回る。目を丸くしているうちに、唇が触れ合った。
「っ!? んっ、る、ちる……んン!?」
唇が触れたまま名前を呼ぶと、ルチルは顔の向きを変えて、さらに深い口づけをしてくる。ぎゅっと目を瞑って、ルチルを受け入れるしかできなかった。いつの間にか腰には片手が回されており、逃げ場はなくなっている。
「ふ、ぷはぁ……! も、るちるっ、いきなり……」
息を整えながらルチルを見上げる。ルチルは、悪戯が成功したように頬を緩めた。
「賢者様の世界では、新年を迎えるときにキスをするんですよね? スノウ様、ホワイト様に教えてもらいました!」
「でも、こういうのは……恋人同士じゃないと……」
おそらく情報提供者は前の賢者様だろう。ルチルの唇の熱さや感触を思い出し、頬が熱くなる。するとルチルは首を傾げて微笑んだ。
「申し訳ありません賢者様。誰かが賢者様に口づけしてしまうかも、と考えたら、居ても立っても居られなくなっちゃいました!」
ルチルは、美しい南の国を思わせる双眸を、爛々とさせていた。
short 望楼