一年の思い出
魔法舎での年越しパーティー終了後、部屋に戻る途中に、紙ふぶきを頭に乗っけたままのスノウと遭遇した。
「賢者ちゃんとの一年は、色んなことがあったのう」
目を細めるスノウに頷くと、彼はしみじみと言葉を続けた。
「我らの長い生において、一年なんて一瞬じゃ。だが、賢者ちゃんがいてくれた一年は、我にとってかけがえのない年じゃったよ」
きっと同じことを、これまでの賢者にも伝えていたのかも。すると、顔に出てしまっていたらしい。
「おや、信じてないようだな? ――《ノスコムニア》」
スノウの呪文が聞こえた途端、大きな手に頬を撫でられた。驚いて顔を上げると、そこには美しい大人の姿をしたスノウが、うっとりとした笑みを浮かべている。
「では、我が特別に、賢者ちゃんに教えてしんぜよう」
硝子細工に触れるような手つきで顎を掬われて、雪が降り積もるように音もなく、スノウの唇が重なった。
short 望楼