朝ランニングに遭遇1
朝陽がまだ昇っていない空は、じっと息を潜めている。人はもちろん、車さえ通っていない道は閑散としているのに、その景色こそがあるべき姿のように思えてしまう。
世界が光に包まれるまでの、夜との狭間の時間は、なまえにとって特別だった。一日の始まりにしては早いその時間帯は、起きているだけで得をしている気分になれる。時間の流れがなくなったような不思議な感覚。刻一刻と迫る一日に嫌気がさす気落ちが消えてしまうほどの、美しい景色。一日の中で、様々な空模様が拝めるのだ。
まるで宝石箱の中に一人だけ閉じ込められたような、不思議で神秘的な気持ちと孤独感。正確には、一人と一匹である。
なまえは日の出までの時間帯に愛犬であるイッヌの散歩に出るのが習慣だった。この時間帯は季節関係なく人通りがほとんどなく、アスファルトが熱くない。雨天以外の日は、快適な散歩時間なのだ。
平日の出勤時間が遅いため、余裕がある時は長いと一時間ほど散歩をする。イッヌの調子にもよるが、走りたそうにしていたら時々走る。
住宅街を抜けて大きな公園に入ると、日中は人が多いけれど、この時間帯はしんとしていた。公園の所有者になった気分で園内の歩道を歩く。
薄暗い空に向かって生えている緑葉が、風に揺れてさわさわとざわめいている。スマートフォンを開いて天気予報を確認した。どうやら今日は風が強いらしい。強風で電車が遅延する可能性がある。
「朝礼でるのやだから電車送れないかな」
本音をつぶやくと、イッヌが反応して見上げてくる。
「休みたいよー。休んじゃダメかなー」
犬の前にしゃがみこんでそのまま抱きしめる。毎日クソみたいな職員の相手をしなければならないのは、本来の業務よりもストレスだった。
犬をわしゃわしゃと撫でると、しっぽがぶんぶんと揺れる。愛おしさが相まって、体を離してスマートフォンで写真を撮りまくった。
「そろそろ帰ろうか」
ポケットに閉まって立ち上がる。すると、視界にの端で何かが横切った気がした。
動く何かの方向へ顔を向けると、ランニングをする男性がこちらに向かってくる。よく見かけるランニングをする人よりも、スピードが速い。ぐんぐんこちらに近づいてきて、顔立ちがよく見えるようになる。
「あ、邪魔になる」
公園内の道のど真ん中で犬とやりとりしていたことを思い出す。なまえはリードをくいっと引っ張って端に避けた。その間にも男性は走ってくる。
なまえの目の前を、男性が走り去っていった。風が吹くように走る姿は、朝陽が登っていないのに輝いて見えて、なまえは過ぎ去った背中から目を逸らせなかった。
「かっ……こいい……」
ブロンドの髪に彫りの深い顔立ち、背が高くなにかスポーツでもやっているのか、筋肉質の逞しい身体。スラッと手足は長くて、ワイヤレスイヤホンをつけていた。
「あんな人、いたんだ……」
既に大きな背中は見えなくなっている。けれど、なまえはその場からしばらくの間、動けなかった。
* * *
初めて男性を目にしてから、十日が経った。なまえは再び男性の姿を見たくて、可能な限り同じ時間帯に散歩へ出掛けている。雨天のため二日ほど散歩に出られない日があったが、それ以外は休日も頑張って早起きをして散歩に出た。それまで、休日はサボりがちになってしまっていたので、愛犬は驚いた顔をしながらもすぐにテンションが上がっていた。
結果から言うと、男性とすれ違えたのは、四日ほどだった。彼はいつもランニングをしており、同じジャージを着ていた。
男性は立ち止まることなくただ走り去っていく。なまえの目の前を通るのは、わずか数秒だけ。じっと見つめることは失礼に当たるし、恥ずかしい。彼が目の前を通る時はいつも犬を撫でるふりをするか、帰路につくために歩いていた。
男性と会えた日は、一日穏やかな気持ちで過ごせたようだった。嫌な上司の話も最後まで面倒くさがらずに聞くことができたし、腹が立つようなことがあっても穏便に済ませようと自分の機嫌をコントロールできた。
散歩に出かける時、なまえはまるで推しに会いに行くような気分になった。彼と遭遇した初日はくたくたのジャージを着ていたけれど、それ以降の日は身なりにも気を配った。真っ直ぐに伸びる背筋が格好良くて、猫背ぎみな姿勢にも気をつけようと、鏡を見る度に姿勢を確認した。気になっていた補正下着にも手を出して、自分磨きをしようと心に決めた。
勝手に舞い上がってしまうだなんて、理想を彼に当てはめていい気分に浸っているのと一緒だ。彼に対して最低なことをしているという自覚がありつつも、ここまで自分磨きに気を配れる事実が、なまえの心を前向きにしていた。
今日もなまえは愛犬とともに散歩に出ていた。歩き疲れている愛犬を休ませようと、ベンチに座る。石畳が涼しいらしく、愛犬はべったりとうつ伏せになって荒い呼吸を整えていた。
「最近、結構歩いてるから、おデブから脱却してきたね」
触り心地の良いぷにぷにお肉は、徐々に少なくなってきている。それに喜んだらいいのか、悲しんだらいいのか複雑な心境だった。
「お水持ってくればよかったね」
普段は散歩に水を持って来ないが、ここまで疲れて荒い呼吸を続けているのなら、これからは必須となるだろう。
「水飲み場は嫌だもんなあ」
公園に備えつけられている公共の水飲み場は、あまり使いたくなかった。仕方ない、自動販売機まで行くしかない。
「お水買いに行くけど、一緒に……行けないか」
大きな舌を出しながらハァハァと激しく呼吸をしている。
「じゃあここで待ってて」
なまえはイッヌのリードを首輪から外し、持ち手部分の輪に金具を通して、再度首輪に着けた。これでベンチから離れてどこかに行くことは無い。日陰にもなっているから、そこまで暑くはないだろう。
なまえは走って自動販売機に向かった。少し走っただけでも息が上がってしまう。自動販売機が見え始めたところで走るのをやめて、呼吸を整える。ポケットから、鍵の括りつけてあるICカード入れを取り出した。
「うそ……売り切れだ」
ミネラルウォーターの下にある購入ボタンには、赤字で売り切れと表示されていた。人差し指を伸ばして、ボタンに触れようとした時に気づく。
仕方がない、水飲み場の水を飲ませよう。公共の場所は、何か変なものがついてないか気になって使いたくないけれど、仕方がない。
なまえはため息をついて踵を返そうとした。
「あの、すみません」
びくりと肩が震える。突然後ろから聞こえた男性の声に、なまえは飛び上がった。
「えっ、あ、はい……っ!」
振り返ると、なまえの前には彼が立っていた。なまえが自分磨きを始めたきっかけである、『ランニングの君』である。毎朝会いたかった、一目でもいいから拝みたかった推し。
近くで見ると想像以上に背が高く、身体は逞しい。そして、声が良い。聴き心地の良い低くもやわらかさのある、バリトンボイス。落ち着いた雰囲気を醸し出しつつも、大人の余裕さや色気のようなものも感じられる。
――なんで? なんで急に話しかけてきた? 私なにかしちゃった? まさか毎回ガン見してたの気づかれてた?
突然の推しの登場に、脳は興奮半分、焦りと恐怖半分状態だった。
「突然話しかけてしまい、申し訳ありません。驚かせてしまいましたね。……もしかして、これ、買う予定でしたか?」
謝られる理由は何もない。あなたは何も悪いことをしていない。むしろこちらが悪いことをしていました。どんなに脳内で返事をしても、言葉にできていないのだから、相手には伝わっていない。
男性が「これ」と言いながら差し出したのは、ミネラルウォーターだった。自動販売機で売られているものと同じである。
「私が買ってから売り切れ表示がでたので、どうやら最後の一本だったようです。よろしければ、これ貰って頂けませんか。まだ開けていないので、安心してください」
「えっ! いや、大丈夫です、そんな」
「実は買ったものの、すぐに飲もうとしていたのではなく、帰って飲もうと考えていたのですが、帰宅したら家にまだあることを思い出しまして」
「え、でも、あの、悪いです。私は大丈夫ですから」
優しい。ひたすらに優しい。一人称『私』の効果が抜群すぎてダメ。かっこよすぎる。しかもさりげなくこちらが申し訳ない気持ちにならないように、話を進めてる。家に水があることが、嘘か本当なのかわからないからなんとも言えないけれど。
「水、ワンちゃんにあげようとしていたのでは?」
「え、そうですけど……どうして知って……?」
「失礼。ランニングのたびに、あなたとワンちゃんと遭遇していたでしょう。この時間帯に外に出る人はまずいないので、よく覚えていました。今日はいつもの場所で会えなかったので、コースを変更したところ、あなたがワンちゃんと話している声が聞こえてきまして」
推しに認知されてた。しんだ。推し、『ワンちゃん』って言うの、あまりにも可愛すぎない? ギャップにしんだ。推しの過剰摂取で今日生きていけないかもしれない。いや、違う、生きられる。
「え、あ……聞いてて……?」
「私が水を買ったのは会話を聞く前だったので、すぐにでも話しかければよかったのですが、あなたは走っていってしまったので」
イッヌに話しかけてたところを聞かれていた。しかもその後走るところも見られていた。恥ずかしすぎて無理。じわじわと顔に熱が集まる。男性の顔を見ることも出来ず、あちこちに視線を惑わせる。最終的に視線は地面を見ていた。
「でも……申し訳ないです」
たかが水であるけれど、推しとの距離の縮まり感が急激すぎて、話についていけていない。ハッキリと断ってしまえばいいのに、男性の気遣いをあしらうこともできないし、もう少しだけ長く話したいと思ってしまう。指先をそわそわ弄れば弄るほど、うるさい心臓の音や下心が彼に伝わってしまいそうだった。
「では、取引しませんか?」
「え? 取引……?」
変わらず柔らかく低い声が頭のてっぺんに降り注いだ。独特な言い回しに顔を上げると、先ほどよりも目尻をやわらげた彼が、ゆるく唇に弧を描く。
「あなたは水がほしい。私は……実のところ、あなたのワンちゃんに興味がある。もしよろしければ、ワンちゃんに触らせていただけませんか?」
「イッヌに? それは、全然……大丈夫ですけど……?」
「ありがとうございます。では、そのお礼に、この水を受け取ってください。これで取引成立です」
爽やかな檸檬が似合う笑みを浮かべて、男性はミネラルウォーターを渡してくる。初夏の風が通り過ぎるように手渡され、自然と受け取ってしまった。
「えっ、あ……ああ! 取引って! そういうこと!?」
「ふふ、気づきました?」
「あ、え、あの、でも」
「すでに取引は成立しました。クーリングオフは受け付けていませんので」
彼は首を傾げて微笑んだ。ふわふわと風になびいたブロンドの髪がキラキラと揺れる。宗教画のような美しさと、推しの神対応さに胸が高鳴った。
「うぇ……あ、ありがとうございます……」
「いえ。私の方こそ、ありがとうございます」
「あっ……お金! お金! 払います!」
手首に掛けていたICカードケースを掲げた瞬間に、自分が今電子マネーしか持っていないことに気づく。
「……すみません、今ICカードしか持ってなくて」
「構いませんよ。その水は差し上げます」
「いや、だめです! お金払います」
「んー……そうですねえ」
彼は軽く腕を組んだ後、片手を顎に触れさせて、人差し指を唇にとんとんと当てる。
「ひえ……」
あまりにも絵になる構図に、口から変な声が漏れる。咄嗟に両手で自分の口を塞いだ。この仕草、よく海外ドラマや洋画で見た。まさか現実を生きている人でこの仕草が、フィクション以外で似合う人がいるだなんて。
「では、こうしましょう。次回もまた、ワンちゃんに触らせてください」
「次回……?」
なまえの頭の中で、男性の言葉が何度も再生される。ちょっと待って。次回って言った? 次回っていったよねこの人? 次回ということは、今回だけのやりとりでははいということ……?
ぶわっとなまえの頬が赤く染まる。同時に、薄暗かった世界が一気に色づき始めた。東の方角から徐々に夜が明ける。一日が始まったのだ。
光につられて朝日を見やる。ちらりと視線をあげると、釣られるように男性も朝陽を見つめていた。彼のブロンドがさらに輝いて、天使のようだと錯覚する。翡翠のような美しい瞳は細められているのに、輝きを失っていない。
――綺麗。
夜との狭間の時間。なまえにとっては特別なときだ。一日の中で、一番好きな時間。まるで宝石箱の中に閉じ込められたような気持ちになる。普段は一人と一匹なのに。隣に彼がいるだけで、涙が出てしまいそうなほど、美しくて瑞々しい。
人生の最期に見る景色が、この人と朝陽であれば良いと、なまえは心から願ってしまった。
*
少し時間を要したが、なまえは男性とともにベンチに戻る。イッヌはしっぽをブンブンふって立ち上がった。
「イッヌ、いい子だった?」
繋がっているのにイッヌは駆け寄ろうとしてウッと首が閉まっていた。人差し指を立てて座るよう促すと、興奮しているのにすぐにイッヌは座る。
「いい子だね、イッヌ。このお水ね、お兄さんがくれたんだよ」
お礼を促すようにイッヌに話しかける。イッヌは興味津々でしっぽをブンブン振りながら、座ったまま前足を足踏みさせた。
「すみません、先にお水あげてもいいですか……?」
「もちろん。喉が渇いたでしょうから。好きなだけあげてください」
「ありがとうございます。イッヌ、お水飲もうか」
彼にお礼を伝えてから、イッヌの前に跪いてペットボトルのキャップを捻る。片手をおわんの形にして、もう片方でペットボトルを傾けた。勢いよくミネラルウォーターが流れていき、お椀の片手から流れていく。
「イッヌ、お水飲んで」
声を掛けると、イッヌはすぐに飲み始める。大きく下を動かすから、ぴちゃんと水が撥ねてアスファルトに落ちていく。やっぱり上手く飲ませてあげられないな。勿体ないことをしてしまったと溜息をつきそうになると、お椀にしていた手の甲に大きな手が触れた。
「失礼します」
「ひぇっ」
彼の手だ。なまえの左手の下に、お椀をつくるように両手をぴたりとくっつけている。
「苦戦しているようでしたので、手伝いを。それにしても、勢いよく飲みますね。水が逃げていくようだ」
「はい、す、みません……。ありがとう、ございます」
彼の手はなまえの手を支えるように触れている。手が大きい方だと自負していたが、彼の手にすっぽりと包まれてしまう。顔上げると思ったよりも距離が近い。なまえはすぐに視線を逸らして、イッヌが早く水を飲み終えるのをひたすら待った。しかし、飲みやすくなったことで調子がでてきたイッヌは、一向に水を飲むのをやめない。隣で沢山飲んでるイッヌに興味津々な彼から、逃げるように目を瞑った。早く、早く終わってくれ。再びじわじわと頬が熱くなるのを感じて、なまえは泣きそうになった。
「……もうおしまい? 飲まない?」
しばらくして、イッヌが水を飲むのをやめた。口の周りにたくさん水滴をつけながら、男性に興味津々な様子で匂いを嗅いでいる。絶対いい匂いするじゃん。汗までデキる男な香りしそう。羨ましすぎる。
「ご馳走様ですかね」
「はい、そうみたいです。お水と、あと、手も、ありがとうございます」
「いえ。お役に立てたなら幸いです」
ようやく彼の手が離れていく。なまえは気づかれないようほっと息を吐いた。手を軽く振って水気を飛ばしてから、ペットボトルのキャップを閉める。水は半分以上なくなっていた。
ペットボトルをショルダーバッグに仕舞いつつ、ハンドタオルを取り出して手を拭く。男性も同じようにポケットから出したタオルで手を拭いていた。
「あ、ちょっ、イッヌ!」
イッヌは彼の足の間に擦り寄るように顔を突っ込んで、しっぽをぶんぶんと振っている。犬同士で肛門付近の匂いを嗅ぐことが挨拶であるのはわかるが、お願いだから推しに失礼なことはしないでほしい。
「はは、挨拶ですか? 初めましてイッヌくん。私は七海建人といいます」
彼は跪きイッヌの頭を優しく撫でた。気を良くしたイッヌは、その場にお座りをして、彼に甘えている。
――推しは神だった……?
思わず手で口を押さえてしまう。ななみけんと。推しの名前。知ってしまった。これからは『ブロンドの君』や『推し』やら『お兄さん』ではなく、『ななみさん』と呼んでしまうではないか。
――犬の推しと人間の推しの共演……!
写真撮りたい。撮っちゃダメかな。ななみさんとイッヌが仲良くしてるとこ、撮っちゃだめかな。かっこよすぎる。海外ドラマとかでこういう景色見たことある。かっこよすぎて脳みそどうにかなっちゃいそう。
「きみはいい子ですね。こんな私にも撫でさせてくれるだなんて。ふわふわだ」
ななみさんは柔らかい笑みを浮かべて、イッヌにベロベロ舐められている。ななみさん、絶対犬好きでしょ。しかも大型犬だいすきでしょ。犬好きのアンテナはピーンと事実を含んだ電波を拾った。撫で方や関わり方が、犬好きのそれである。
「犬、お好きなんですか?」
ぽろっと零れた質問に、建人は視線をあげる。
――うっ、推しの上目遣い。眩しすぎる。キラキラしてる。
「ええ。仕事柄、家を空けることが多いので、自分では飼えませんが」
イッヌの頭を撫でながら、建人は続けた。
「いつか、隠居生活でもした時には飼いたいと考えています。特に、大型犬はいい」
「わかります! 大型犬、いいですよね!」
食い気味に同意してしまい、目を見開いた建人と視線が絡まり合う。大きな声を出してしまったことに気づき、羞恥が身体を襲う。
「あなたこそ、お好きなんですね」
「……はい」
イッヌは建人によって、気持ちよさそうに頭を撫でられている。ななみさん、撫でるの上手だな。すぐにイッヌが撫でられて好きなところを見つけた。
「っ、すみません。そろそろ行かなければ」
「あ……ありがとうございます、お水と、それと……」
突然訪れた別れの時に戸惑ってしまう。しどろもどろになって、言いたいこともまとめられないでいると、建人は立ち上がって身なりを整えた。
「改めまして。七海建人と申します。あなたの名前をうかがっても?」
「あ、えと、みょうじなまえです……」
「みょうじさん」
口の中でぽつりと名前を呼ばれて、心臓が飛び出そうになる。かっこいい声に名前を呼ばれれば誰だってそうなはずだ。しかも、相手は推しのななみさんである。
「今日はありがとうございました。ではまた、夜明けにここで」
建人の言葉に『次回も撫でさせてほしい』と言った軽くお辞儀をして走り去っていく。軽やかな足音が公園に響く。朝陽を浴びたブロンドは輝き、すらっとした長身は、光の方へ駆け抜けていく。
「ま、また……」
なまえが返事をできたのは、建人の背中がはるか小さくなった頃だった。
short 望楼