朝早く、学校に着いた雫。
人もそんなにいないので自分の席を探して手持ちの小説を読み進める。

「あら、おはようございます。私の名前は八百万百ですわ、よろしくお願いいたします。」
「おはよう。私、水無月雫、こちらこそよろしくね。」
八百万と名乗った少女と握手を交わす。
しばらく読んでた本について談笑をしていると扉が開き誰か入って来る。
紅白の目立つ頭で彼だとわかった瞬間、雫は立ち上がり挨拶する。

「おはよう!轟君。」
「…話しかけてくんじゃねぇ。」
ギロッと睨まれて雫は苦笑いをこぼす。
心配をする八百万に雫は気難しい子だから大丈夫だと答える。
「そ、そうですの。」
「まあ、仲良くできると思うよ。
轟君は優しい子だから。」
そうニコニコ笑う雫。
人もまばらに入ってきて見知った顔に雫は笑顔になる。
「あっ、響香ちゃん!」
「雫、受かってたんだ。」
きゃっきゃとはしゃいで談笑をしていると急に注意する男の子の声が響いた。

「机に足をかけるな!
先輩方や机の製作者に申し訳ないと思わないのか?!」
「思わねーよ。
てめーどこ中だよ端役が!」
メガネをかけた男子が不機嫌そうな男子に説教をしている。

「朝から元気だね男子って。」
「まあ、ほっとけば良いんじゃない?ああいうのって注意すればするほど拗れるタイプだと思うし。」
耳郎の冷静な判断により雫は遠巻きに彼らの様子を見ていた。
途中、茶髪の女の子が入ってきて空気が変わり、いつの間にかその後ろにいた寝袋…もとい担任の先生によって終止符を打たれた。

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。
ここはヒーロー科だぞ。」
(なんか!!!いる!!!)
教室にいるみんなの心が初めて一つになった瞬間だった。

体操服を渡されてグラウンド集合とだけ伝えて相澤と名乗ったし教師は去っていく。
去り際に、猫柳だけは彼に付き添い、呼び止めた。

「あの!」
「あー、なんだ?俺は生徒贔屓しないつもりなんだが?」
「…そんなのわかってるにゃ。
だけど8年前、アタシを助けたお礼を言いにきたにゃ。
ありがとう、そして、アタシは貴方の力になりにきたにゃ。」

そう真っ直ぐ見つめる少女に彼は目を細めて笑う。

「…強くなれ。遅れたら除籍だ。」
「はいにゃ!」
そう行って再び彼は背を向けて去った。



体操服に着替え、グラウンドに集まると個性を使った体力テストを行うという。
みんな、最下位は除籍という言葉に驚いていたが猫柳だけなぜか余裕な顔で準備運動をしている。

一種目は50メートル走。
猫柳と並んで走ることになった。
足裏に水をためて圧を作りロケットスタートを狙う雫。
一方で猫柳はというと何故か靴を脱ぎ、耳を立てクラウチングスタートの姿勢を取っていた。
スタートした瞬間、二人は同時に個性を使ったが猫柳の方がわずかに早い。
【3秒8】
【4秒2】
(うあちゃー、やっぱ普通に走った方が足首に負担なかったかな。)
どうやら雫は先ほどの加速で足を若干ひねったらしい。
その後も足に違和感を覚えながら雫は難なく種目をクリアした。
目覚ましい記録は水圧で無理に上げた握力くらいだがこれで最下位になることはないと胸をなでおろす。
結果は中間くらいの位置にいてソコソコの成績だったが上位の猫柳に鼻で笑われた。

「フン、最初の種目で全力を出し切るニャンて愚かだにゃ。」
「ちょっと、そんな言い方ないじゃない。」
そう言って去る猫柳に聞き捨てならないと横に居た耳郎が言い返す。
「いいよ、響香ちゃん。最初の種目で張り切っちゃった私が悪いし。」
「でもなんかあんたに喧嘩売るのは違うくない?」
「う、うん。でも、あの子多分悪い子じゃないと思う。」
「お人好しもここまでくると重症だわ。
んで、その根拠は?」
「何となくね、足のこと気がついてくれたんだと思う。」
「足の事?」
耳郎が怪訝に聞くと雫は苦笑いをして言う。

「ちょっと最初の種目で捻っちゃっただけ。
大丈夫、緑谷君みたいに酷い怪我じゃないよ。」
「バカ!早く言いなさいよ!
ほら保健室行くよ!」
耳郎半ば引きずられる様にして保健室へ足を進める雫であった。



反省会をしようぜと誘ってくれた瀬呂達を丁重に断り雫は帰路へ着く。
今日は雫が夕飯の当番を任されているためだ。
「卵と春雨があるからスープにして…後は〜。」
ブツブツと夕飯を考えていると不意に肩を叩かれ振り返る。

「何一人でブツブツ言ってんだ。」
「轟君、さっきぶり。お夕飯の当番私だから考えてるだけだよー。
あっ、よかったらうちで食べてく?」
「…いや、いい。早く帰れよ。」
少しだけ迷った事を誤魔化して轟は黙り込む。
足をひねったと聞いたから声をかけたが元気そうで後悔した。

「轟君から声かけてくれるなんて嬉しいなぁ。
あっ、そうだ。汐も渚も会いたがってたよ。
またね、轟君、私お買い物してから帰るから。」
汐と渚とは雫の弟と妹達で彼とも面識があった。
だが疎遠になってからは全く顔を見ていない。
そうヒラヒラと手を振る雫を無言で見送って轟も家路につく。

懐かしい思いが胸を駆け巡って思わず呼び止めようとしたが辞めた。
自ら拒絶してしまった事を今更悔いる暇はない。



次の日、プレゼント・マイクの授業を受けているが普通の英語の授業だ。
(中学時よりもわかりやすいなぁ。)
呑気に雫はノートを取る。
普通過ぎてむしろわかりやすいことはありがたい事だ。
昼食を終え、午後の授業はいよいよ待ちに待った戦闘訓練。
各々、ヒーローコスチュームを持ちながら更衣室へと準備を進める。

「響香ちゃんのコスチューム、シンプルでいいね!」
「まあ、要望に動きやすい格好って書いたから…ってかあんたその格好はどうなの?」
私のコスチュームは麗日さんよりはパツパツではないが水着素材のコスチュームの上に絶縁体素材の上着を羽織っただけのものである。

「あはは、おかーさんのコスチュームリスペクトしたらこんな感じになっちゃったんだ。」
「ふーん、足元寒そうだから改良頼みなよ。」
「そだね、流石に寒いや。」
二人で談笑していると麗日さんがこちらにやってくる。

「ねぇねぇ、貴女達、入試で巨大ロボの動きを止めた人達でしょ?」
「そ、そうだけど…。」
戸惑ってる雫に麗日は気にせず話を続ける。
「噂聞いてびっくりじゃったよ。まさかデクくんの他にアレを倒せる人がいるなんて!あっ、私麗日お茶子!よろしくね。」
「耳郎響香、雫が無茶振り言ってウチはそれに従っただけだけど…。」
「あの時はみんなを助けなきゃって思ったら体が動いてた。
水無月雫、よろしく。」
三人は握手を交わしながらグラウンドへと足を進める。

さぁ、ここからがスタートだ。

【To be continued】


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