校庭の花壇にクロッカスが咲いている。
もうそんな季節かとしんみり二年生の教室の振り分け表を眺めて教室へと足を運ぶ。
今年は善逸さん達とクラスが別れてしまったし顔見知りも居ないから少しだけ寂しい。
ガラリと戸が開いて誰か入ってくる。
誰かと思えばきっちりスーツを着こなした冨岡先生で。
なんだか似合い過ぎてクスクスと笑うと仏頂面で睨まれる。
「…何がおかしい。」
「おかしくありませんよ先生。
唯、ジャージ着てない先生が珍しいなぁと思いまして、失礼しました。」
「…生徒の模範にならない教師がどこにいる。」
模範といっても厳し過ぎやしないかと思うのだがこの言葉を送れば彼はショックを受けてしまう。
目に見えているのであえて言わない。
無言で窓の外を見下ろす。
疎らに登校してくる生徒達。
校庭のクロッカスが紫と黄色でとても綺麗だ。
「先生、校庭のクロッカスって誰が植えたのですか?」
唐突に話題を振れば首を横に振った。
どうやらわからないらしい。
話題選びに失敗したなぁと思っていると隣に立ち同じく外の景色を見下ろす。
「…綺麗だな。」
桜の時期とあい余って鮮やかな絵画のような景色。
あの花かと校庭の花壇に彼は指を指す。
「因みにクロッカスの花言葉は切望と青春の喜びだそうです。」
色によって花言葉は変わってくるがこの説明をして仕舞えば彼は困ってしまうだろう。
気持ちに疎いとは言っても生徒からの好意を無碍にできない人だからこそ。
私の気持ちは卒業まで閉まっておく。
「そうか、いい年になるといいな。」
「はい、あ、私、来賓受付立候補してましてこれにて失礼しますね。」
ひらひらと手を振って教室を出る。
廊下は走るなという声に聞こえないフリをする。
だって振り返って仕舞えば顔が赤いってバレてしまいますからね。
クロッカスの花言葉
全体:切望、青春の喜び
紫:愛の公開
黄色:私を信じて