※時系列は炭治郎君が珠世さんと出会う頃のオリジナル閑話です。
 

 満身創痍で帰ると眉を潜めた紫さんとオカメの仮面を被った人がいた。
「おう、ようやく帰ってきたか馬鹿弟子。」
「あらあらまあまあ、可愛いお弟子さんだこと。」
「ただいま帰りました。
お師匠様、そちらのお方は?」
私が首を傾げながらお伺いするとオカメの女の人が詰め寄ってきた。
「うちは鋼塚火花いいます。
鬼狩りの刀を打つ刀匠してます。
やや、そこに抱えるのは玉鋼!
それをちょちょいとアタイに預けてくだせえ!」
見事な土下座にちょっと引き気味に差し出す。
「は、はい。
よろしくお願いします。」
「ではではアタイはこれにてー!」
呼び止める暇もなく彼女は玉鋼を抱えて去って行く。
 

 
 二日後、庭先の掃除をしているとけたたましい足音が聞こえる。
「おはよーございます!
お届け物でーす!」
「ひ、火花さん。おはようございます。」
キンキンと元気な声を響かせて陽華さんは風呂敷を私の方に向き直る。
「やや!貴方はお弟子さん!
できましたよ!ついに貴方の日輪刀が!」
「は、はぁ、とりあえずここではなんですし、上がってください。」
勢いに押されつつ、居間に案内するとお師匠が報告書を書いていた。
私たちが襖を開けると同時に彼女は顔を上げにんまりと笑顔で出迎えてくれる。
「ついにか。」
「ええ、ええ、遂にですとも。
さ、お弟子さん日輪刀を握ってください。」
風呂敷の包みを解くと綺麗な真新しい刀が。
それを手に取るとみるみる間に刀身が薄紅色へと変化していく。
「まあまあ、美しいですねぇ。
兄様が居たら赤くねぇから微妙だとか言いそうですが私は感動しましたとも!
ああそうだ。こちらにお納めください。」
何かを思い出したかのように火花さんは背負っていたものの結紐を解き差し出してくる。
「番傘ですか?」
刀の鞘にしては随分と派手で町娘が好んで買いそうなものだ。
「ええ、貴方のお師匠さんからの入隊祝いだそうで。
肌が弱いから日除とあと雨具お使いください。
勿論、鬼の攻撃をある程度防いでくれる盾としてもお使いできますとも!」
「はぁ、それは大層なものをありがとうございます。」
挨拶もそこそこに彼女は嵐のようにさっていった。


 
 鬼殺隊は忙しいもので霞鴉の薬丸さんが北南ー!北南ーへ!と突いてくるので北南へ足を進める。
ふと、道の先に見知った羽織を見かけて思わず駆け足に。
「と、冨岡さん!お久しぶりです!」
「ああ、お前か。」
覚えてもらえていることに嬉しさを感じつつ足を進める。
「冨岡さんは今回の任務についてどうお考えです?」
「…人に危害を加えるのなら斬るまでだ。」
今回の任務とはとある村で宮参りをすると幼い子が行方不明になる現象を調査、捜索するのが目的だ。
冨岡さんの管轄地域であり、今回はそれを見て学べとのお達しだった。
 
 村に近づくにつれ、鬼の気配が強くなってくる。
冨岡さんの顔を盗み見ると彼も気がついているようだ。
村の道祖神も不気味な形をしていて思わず目を逸らす。
ようやく小道から村の入り口が見えた。
「やあやあ、お二人さん。
この村に何かようかね?」
門前に立っていた屈強な男性が私たちの前へ立ちはだかる。
「…。」
「あ、あの、私達夫婦でして。
丁度この村の寺に安産祈願とお宮参りの儀式の見学をしにききたのです。」
睨み合いを続ける二人。
咄嗟に嘘を付いたが信じてもらえるだろうか?
「お若いのに信仰深いのは肝心な事だ。
宮参りは明日になってね。
祈祷だけなら今日でもできるよ。
さ、案内しよう。」
男性の後をついていく私達。
だが村の人たちにはあまり歓迎されていないようだ。
不安と好奇の視線、それに見張られているような気配もする。
冨岡さんの刀が原因だろうか?
それとも私の髪色と目の色か?
悶々と考えて気配を探っていると肩を叩かれる。
「鶴岡、何か気がついたことはあるか?」
そっと彼が耳打ちをする。
私は怪しまれないように前を向いて小声で報告する。
「見張られています。
恐らく数人に。」
その時、男性が急に振り返った。
「この村は土着の神が祀られててね。
外部の人なんて滅多に来ないんだ。
失礼だがあなた方は誰の紹介でこの村のことを?」
「えっ、えっと…。」
「…俺の友人の紹介だ。」
私が言葉に詰まると冨岡さんが前へ出た。
「何だ、てっきり旦那さんは口が聞けないのかと思ったよ。
愛想よくすればいいのにもったいない。」
「…余計なお世話だ。」
「こう見えて優しい人なんですよ。
あはは〜。」
笑ってごまかしその場を切り抜ける。
確かに冨岡さんは愛想が悪いがあったかい人だと知っているから十分だと思う。
そんなこんなで寺に着く。
祈祷を受けている間、気配を探る。
村全体でも多くて三つ。
不審な気配がある。
目配せでその事を伝えたが伝わっているから自信がない。
その後も村人に宮参りの事を聞き込みをしたが皆、口を揃えて「和尚様に聞いたほうがいい」というばかり。
その肝心の和尚様は今は村の外に居るそうで聞き出せそうにない。
「収穫なしか…。」
「ですね。夜も老けてきましたし…。」
「それなら泊まって行くといいよ。」
先程、寺まで案内してくれた男性が
 
 民宿に通されたはいいが布団が一枚しか敷かれていなかった。
「わ、私、女将さんに言ってきますね。
冨岡さんは休まれてください!」
部屋を出ようとしたら手を取られて引き込まれる。
「夫婦と言っている以上、怪しまれる行動をするな。」
はいと返事をして部屋に止まることに。
誰かに狙われてる気配は相変わらずなので不寝番を決めて交代で仮眠を取ることとなった。
明かりを付けるよりかは夜目が効くので暇つぶしに報告書を書く。
夜の鳥の声がちょっと不安を誘う。
何かあったら起こせと就寝した冨岡さんの寝顔を見る。
穏やかな顔で寝ているのを見て安心感を覚えて顔を緩ませると目が開いて合ってしまった。
「…。」
「と、冨岡さん。
寝てていいですよ。」
無言のまま、布団に引き込まれて抱きしめられる。
「あ、あの、見張ってないといつ鬼に襲われるかわかりませんし…。」
抱きしめられたことよりも見張りを頼まれた義務感で離れようとすると更にきつくなる腕。
「…寝ろ。」
耳元でそう言われて背を撫でられたら急に眠気が襲ってくる。
素直にその心地いい眠りに身を任せた。
 

 
 翌朝、身支度を済ませ宮参りの見学にと寺へ足を運ぶ。
寺へ着くと朝早く庭掃除をしているお爺さんがいる。
「おはようございます。」 
「おお、おはようございます。
宮参り見学のご夫婦だったかな?」
「…話が早くて助かる。」
ついてきてくださいと背を向けて和尚様は境内へと足へ進める。
境内に上がると親族の方々がいらっしゃった。
「今回、ご見学されるご夫婦がいらっしゃるのですがよろしいですかな?」
「ええ、構いませんよ。」
「キメン様もきっと御喜びになられますわ。」
キメン様というのは何なのか尋ねると和尚様は穏やかな顔で口を開いた。
「この村に伝わる神様なのですよ。
子宝や安産、子の成長、無病息災を約束してくれます。
ほらあそこに像が三体有るでしょう?
アレら全てがキメン様なのです。」
恍惚とした顔で説明する彼に違和感を覚え私たちは表面上取り繕うしかできなかった。
「ありがとうございます。
そんなに素晴らしい神様なのですね。」
「ええ、そうですとも!
お若いのにわかってくれますか!」
興奮気味に手を取られ力説が続く。
「妻が驚いている。
それに宮参りの時間は大丈夫なのか?」
間に冨岡さんが入ってくれなければどうなっていたかと胸を撫で下ろす。
「おお、そうでした。
では皆様、参りましょうか。」
境内で儀式は行わないようだ。
親族の最後尾についていくと鬱蒼とした森に入った。
日光も届かず、夜のように暗い。
不気味な獣の鳴き声がする。
「あの、本当にこの森の奥にあるのですか?」
私が疑問を投げかけると赤子を抱いているお婆さんが答えた。
「ええ、この村の奥はキメン様の聖域なのです。」
様子がおかしい。
刀に手をかけようとすると富岡さんが小声で制す。
「待て、まだ抜くな。」
何か考えがあるのだろうと黙って従う。
森の奥へ奥へと進むとより気配が濃くなっていく。
右に一体、地面に一体、奥の御堂に一体。
赤子を抱えているお婆さんが坂道を上がり終えた瞬間彼女の足を捉えようと手が生える。
彼女の肩をグッと引き、刀を抜き、地面に突き刺した。
「皆さん、伏せて!
御堂には入らないでください!」
そう言った瞬間、富岡さんが弾かれたように右の方の鬼へと向かう。
『ゲヘヘよくわかったな。』
土に化けていた鬼が笑う。
「くっ、この!」
森の道を左に刀ごと転がる。
一般人を巻き込むわけにはいかない。
「くっ、何故だ!何故わかった!」
穏やかだった和尚の顔が邪悪に歪み、悔しそうに地団駄を踏んでいる。
この人、人間の癖に鬼の見方をするのかと怒りに打ち震える。
『よそ見してていいのかぁ?』
「余計なお世話です!」
【弐ノ型 錦冠(にしきかむろ)!】
断末魔を上げ解けていく。
おかしい、一撃で仕留めることというより、手応えがまるでないのだ。
違和感を感じて顔を上げると。
「おっと、鬼狩りめ。
この子がどうなってもいいのか!」
和尚がお婆さんごと人質にとる。
ご親族はバケモノ!と罵り腰を抜かしている。
考えるよりも先に殴ろうと拳を振りかぶって飛びかかった瞬間、何かに遮られる。
それは鬼を倒し終えた冨岡さんだった。
「落ち着け、鶴岡。」
「ですが、この人は鬼のいるところに誘導していたのですよ!」
「怒りに我を忘れるな。」
私はその言葉にハッとなる。
そうだ、ここでこの和尚を殴り倒すのが目的ではない。
子供をさらう鬼を退治しなければ。
冨岡さんは手際良く和尚を懐から出した縄で縛る。
眼前の御堂から触手のようなものが伸びる!
咄嗟に私は刀を抜いて庇うが触手は通り過ぎ私の後ろを通過する。
瞬間、その触手に赤ちゃんが巻き取られてしまう!
「待て!」
手を伸ばし、触手にしがみつき、一緒に巻き取られるが赤ちゃんを庇うように胸に抱き込む。
お母さんらしい女性の悲鳴と冨岡さんの私の名を呼ぶ声が最後に聞こえた気がした。

【つづく!】



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