※注意事項
 オリジナルの姉妹校との交流を描いた中編ラブコメになります。
 アプリの話の一年前から始まります。
監督生はあまり出てきません。
女子夢主中心です。


 
 女の子は何でできている? 
お砂糖、スパイス。
それと、素敵な何か。
 
 男の子は何でできている?
カエルにカタツムリ。
それと子犬の尻尾。
(マザーグースより引用)
 
 彼と出会ったのはいつ頃だっただろうか。
確か7歳の誕生日を迎えた日に母に連れられた病院の院長室で出会ったのだった。
薔薇のような鮮やかな赤い色の髪。
少女よりも少女らしい華奢な少年だった。
見た目は身綺麗。
だけど中身はてんで何もない彼が苦手だった。
口を開けばお母様、お母様と言うだけでまるで自分の意思のない人形のよう。
だからミドルスクール卒業の日にはっきり言ってしまった。
「貴方のような中身のない人間とは今後一切のご縁を切らせてもらいます。」
その言葉に彼は憤慨し、顔を真っ赤にして言い返してきた。
「ああそうかい!
君のような不躾な友達なんてこちらから願い下げだよ!」
 そのまま喧嘩別れしたが後から両親による婚姻交渉が結ばれていたことを知ったなんて。
何とも苦い思い出である。
 
 *
 
 それから数年が経った彼女と彼はというと。
僕、リドル・ローズハートはナイトレイヴンカレッジに入学した。
幼馴染みであるチェーニャとは別れたがトレイが入学しているなら問題はない。
 一年の頃の寮長はいい加減な人で呆れてしまった。
赤の女王を尊敬しておらず、この寮は堕落しきっている。
「そう思うなら決闘で寮長になり、改革をすれば良いでしょう。」
 学園長の助言通りに寮長に果し状を渡した。
「リドル!本気でやるのか?」
困った顔のトレイが僕を止めようとするが聞いてやるものか。
この寮の秩序は僕が守る。
そう意気込んで決闘にも勝利した。
 誰もが祝福し誰もが僕を寮長と認めた。
順風満帆、とまではいかないがこれでやっと安心できる。
そう思っていた一年の六月までは。
「姉妹校とのダンスパーティー?」
「あれ?リドル君、聞いてなかった?」
いつものように僕、トレイ、新たに仲良くなったケイトと食堂で昼食をとっていた時のこと。
「リドルは一年生だから知らないのも無理もないだろケイト。」
トレイが隣に座りながら諭す。
「そういうのはトレイ君から伝えないと。
えっとねー、学園長主催の伝統行事で毎年、七月と九月にあるお楽しみ行事なんだよ。 
姉妹校の女の子ちゃんたちをダンスに誘ってそこで抜け駆けするまでが醍醐味なんだよ!」
「こら、嘘を教えるなケイト。
唯のダンスパーティーだから参加は自由だし無理に参加しなくても良いんだぞ。」
 ダンスパーティーと聞いて、一瞬彼女の顔が浮かんだが振り払う。
大体喧嘩別れした親の決めた許嫁に構うものか。
「それで、その姉妹校ってどんなところなんだい?」
僕が聞くと待ってましたと言わんばかりにケイトがマジカメのあるアカウントを表示させて見せた。
「…プリンシパル女学院?」
「そーだよ。
そこのお嬢様たちとワルツ踊るのが伝統なんだって。」
ケイトのスマホを借りて写真を見る。
すると見知った金髪の少女が証書を片手に微笑んでいる画像をタップする。
「へー何々?リドル君ってそういう子が好み?」
「好みというかなぁ…。」
ケイトの問いにトレイが苦笑いでこっちに視線を遣す。
「…単なる知り合いだ。
馬鹿なことを言ってないで授業に行くよ。」
誤魔化す様に食堂から出る。
後ろからトレイの苦笑いとケイトのつまらなそうな声が聞こえた。
何となく、今はこの気持ちに蓋をしたい気分。
『貴方のような中身のない人間』
彼女が悲しげに言った言葉が頭の中で反響する。
僕を否定することはお母様をハートの女王を否定することとなのだ。
彼女が悪い。
そう言い聞かせて、僕は思い出に蓋をする。
 
 *
 
 所変わって、プリンシパル女学院、レッドマーズ寮の談話室。
「寮長、キャロル寮長。」
 寮生が私に話しかける。
どうやらうたた寝をしてしまった様だ。
「何か報告ですか?」
「はい、七月に行われるダンスパーティーについて学園長から一度各寮長との打ち合わせをしたいとのことです。」
報告書を受け取り目を通す。
例年通り、ナイレトイヴンカレッジとのパーティー。
婚約者が居ても二年生の寮長である私が出ないわけには行かない。
 正直、他の女子の様に色恋沙汰を期待して粧仕込む趣味も無ければ殿方に気に入られようという下心もない。
ダンスが嫌いなわけではないが婚約者がいる以上、目立った事はやってはならないと母様から言いつけられたのだ。
(リドルは元気かしら。)
金輪際、関わらないと宣言したが両親が決めたことには逆えない。
私も歳をとって少しだけ彼のワガママを許せる気がしている。
まあ、彼がナイトレイヴンカレッジに入学していればの話だが。
 気が重いまま、寮から出て学園長室まで歩いて行く。
学園長の間はこの古びた鏡の先だ。
マジカルペンを構えて鏡に触れる。
鏡の妖精が問いかけが始まる。
『誰がコマドリを殺したの?』
「それは私だとスズメが言った。」
 よろしいお入りなさいと学園長の声が響く。
スカートを押さえて鏡の中へと入る。
「学園長、レッドマーズ寮長、アリス・キャロルでございます。」
「座りなさい。」
学園長は気品のある修道服を着こなして顔はベールで隠れている。
不気味な雰囲気を纏いつつ、気品のある学園長に苦手意識を覚えるものも少なくはない。
スカートの端を持ち上げて挨拶する。
辺りを見回すと私以外の寮長が円卓席に揃い組だ。
「遅かったですね。」
嫌味ったらしく隣のブルーマーキュリーの寮長が米神を抑えてため息をつく。
四年生の癖によく寮長をやるものだ。
「お喋りはその辺で。
さて、今回皆さんに集まってもらったのは七月と九月に行われるダンスパーティーについてです。」
議題に皆、浮かれた様にきゃあきゃあと色めき立つ。
「静かに。
各寮のダンスの技量を期末テスト後に実施します。
私直々にテストを行うので及第点に及ばない寮生は参加不可となるので皆さんがんばるように。
くれぐれも我が校の看板に泥を塗る様なことはあってはなりません。」
 イエス、マザーと皆、首を垂れてその場は解散となる。
ワルツの授業は何度かあったし、寮生にも指導を入れたり、自主練習もした。
私の寮に抜かりはない。
決意と憂を胸に私は寮へと戻っていく。
【To be continued】

 学園長の間の呪文はマザーグースのクックロビンを引用いたしました。

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