人間も妖精も魚人でさえも逆らえない。
それはなーんだ?
生きていればそこに存在していれば、皆逆らえないのさ。
運命という輪っかにはね。
入学式前日、珊瑚の海。
小生が親しくしている年上の幼馴染から連絡が来た。
「もしもし。」
「もしもし、ルイーザですか?
お久しぶりです、アズールです。」
電話の主はアズールだ。
彼は昔、小生を助けてくれたミドルスクールの先輩であり、密かに想いを寄せている。
後ろが煩いのは双子だろうか。
何にせよ皆が元気ならそれでいい。
雑談を交えているとアズールが不安そうに切り出した。
「貴方なら問題ないと思いますが是非、オクタヴィネル寮生になれたら…そうでなくとも僕の部屋にいらしてください。」
彼は年上の癖に妙に甘えたなところがあるなぁとルイーザはクスクスと笑う。
「心配ないよアズ君。
どんな学園生活になっても君が居れば楽しいと思うから。
じゃあ、おやすみ。」
「なっ、ちょっと!」
わあわあと焦るアズールを他所に電話を切り、眠りについたのであった。
*
入学式当日。
寮分けの途中、クロウリー学園長は1人足りないと呟き、出て行ってしまった。
騒つく新入生。
それを見兼ねたリドル・ローズハートが咎め、場を収める。
「新入生静かに、鏡の前へ立って組み分けを受けるように。」
リドルの指示で順番に寮分けされる新入生たち。
いよいよルイーザの番がやってくる。
『汝の名を告げよ。』
「ルイーザ・ドーリス。」
『汝の魂の形は…。』
心なしか当人よりも目を輝かせてるアズール。
『オクタヴィネル。』
「ありがとうございます。」
頭を下げて颯爽とオクタヴィネル量の列に加わる。
寮分けが終わりを告げようとしたその時、学園長が1人足りないと飛び出していく。
「全く、そそっかしい学園長だ。」
アズールの呟きに皆は動揺を隠せないように再びざわめきを取り戻す。
リドルが静粛に!と声を荒げるが治らない。
式典は奇妙な青い炎を撒き散らす獣によって台無しとなった。
オクタヴィネル寮、アズールの部屋。
ルイーザだけは部屋の主人に呼び出されていた。
部屋に入った瞬間、抱きしめられる。
少し驚いたが彼は相当ストレスを溜めている様子。
無理もない、グリムと呼ばれたあの獣を制圧できなかったからだ。
「アズ君?」
背中をさすりながら名前を呼ぶとルイーザの肩に頭を押し付ける彼。
「黙ってちゃ何にもわからないよ。」
彼を試すように言えば、黙っててくださいと言われる。
守銭奴と呼ばれ、努力家な彼が本当は寂しがり屋なのは一部の幼馴染みにしか知らない事実。
心の拠り所になればルイーザはそれでいいと目を閉じ、あやし続けた。
その日はもう2人の幼馴染みが夕食だと呼びに来るまで続いた。
*
次の日、グレートセブン像の前で魔物と新入生がなにやら揉めているところに遭遇した。
「君たち、何やってるの?」
「こいつらグレートセブン知らねーんだって。な、笑えるだろ。」
赤髪の少年が小馬鹿にしたようにいう。
「…そっか。
これから知っていけばいいよ。
小生はルイーザ・ドーリス。
学年は一年生だよ、よろしく。」
自己紹介を始めると猫と黒髪の少年は顔を見合わせ自己紹介する。
「俺様は偉大な魔法士になるグリム様なんだゾ!
こっちは子分のアリシャ。」
「だから子分じゃないってば…学園長から雑用を頼まれたアリシャ・クライド、よろしく。」
「ちょーっとなにいい感じに自己紹介してるんだよ。
俺のこと忘れてない?
俺も一年生。エース・トラッポラ、よろしくな。」
自己紹介もそこそこにエースによってグレートセブンの説明されるが彼の余計な一言によってグリムが怒って火を放ってしまった。
「ちょ、ちょっと!グリム落ち着いて!」
アリシャが止めに入るがグリムはエースに怒りの矛先を向けている。
「うーん得意じゃないけど…これはまずいよね。
水よ出よ!」
ルイーザもマジカルペンを出して水を出すが青い炎は消えない。
周りはいいぞやっちまえーなどと煽り、止めにも入らない。
ルイーザとアリシャが狼狽していると…。
「コラー!なんの騒ぎです!」
学園長が現れ、喧嘩は止まるがその場にいたエースとグリムは愛の鞭で縛られる。
そして当事者四人は窓拭き百枚の刑を命じられることとなった。
*
「なんで小生まで…。」
その場にいた連帯責任です!と学園長に言い渡されて午後から食堂の窓拭きをしている。
アリシャ、グリム、ルイーザは大人しく窓拭きをしているのにエースだけが来ない。
「…いくらなんでも遅すぎるんだゾ!
お前は何か知らないのか?」
「小生は授業後、すぐここへ来たけど…。
一応、トラッポラ君には声をかけたけどトイレだって…。」
「それ嘘なんじゃない?」
「嘘に決まってるんだゾ!」
キレたグリムが教室へと乗り込むと言い出したのでルイーザは一人残って窓拭きをすることになった。
「はぁ、またこんな役回り…。」
教室の喋る肖像画に驚くアリシャとグリム。
構わず、エースの居場所について質問すると寮へ扉は東校舎だと答えた。
逃げたことを確信し、追いかけることに。
鏡の間でエースを見つけ、二人と一匹で彼を追い詰めるが逃げ足早く捕まらない。
「待てと言われて誰が待つかっての!」
暫く追いかけていると青髪の少年がいることに気がつくアリシャ。
「そこの人!彼を捕まえて!」
アリシャの大声に彼は驚きつつも協力してくれた。
なんとかしてエースを捕まえたが今度はグリムが逃げ出す。
「へへーんあとはお前らに任せるんだゾ。」
「そこのジュースだっけか?
お前もあの毛玉を捕まえるの手伝え!」
「なっ、僕はジュースじゃなくてデュースだ!」
言い合いを始めながらもグリムを追いかけてくれるあたり悪い人ではないとアリシャはなんとなく察する。
食堂まで戻ってきた一行。
「ルイーザ!そいつ捕まえろ!」
椅子を使って上の方を吹いていたルイーザが振り返るとグリムが笑いながらかけてくる。
「え、えっとえい!」
「そんなもん、当たんねーんだゾ!」
パニックになったルイーザは雑巾を投げるが軽々と避けられる。
「俺に考えがある!」
デュースはマジカルペンを構えて魔法でエースを浮かす。
「ちょ、俺でなにする気だ!」
「しっかり捕まえろよ!」
エースが発射されその進路の途中のルイーザを巻き込み、あろうことかシャンデリアを引っ掛けグリムを捕まえる。
派手な音を立てて二人と一匹は地面に叩きつけられた。
「だ、大丈夫?」
アリシャが駆け寄ると苦笑いでルイーザは返事をする。
「なんとかね…それでエース君とグリム君はなにをやらかしたんだ?」
「こいつがサボったのがいけないんだゾ。」
「いーや!元はと言えばお前がグレートセブンの石像に火をつけたのが悪いだろ!」
言い合いをしていると騒音に駆けつけた学園長に見つかる羽目に。
全員退学を言い渡されるがデュースの懇願により、シャンデリアに付いている魔法石をとることができたら免除を約束された。
三人と一匹の大冒険が始まる。
【To be continued】
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