「釘崎野薔薇よ。
喜べ男子、一紅…なんで女子がいるの!」
聞いてない!と釘崎が五条に詰め寄る。
「あはは、言ってないからね。」
「悟、言ってないダメ。」
女子二人に挟まれ、両手をあげる五条。
言い合いの最中、五条の東京観光という言葉に目を輝かせる虎杖と釘崎。
「単純なやつ…。」
ボソリとため息混じりに伏黒が言えば志保は眉を潜める。
「また、嘘。」
「黙ってろ。」
六本木という言葉に踊らされてあれよあれよと廃ビルへと連れて行かれる一年生。

「いますね呪い。」
「わー巣だ。」
経験者二人が呑気にいう中、地方民の二人は嘘つきと絶叫する。
「地方民を弄びやがって!!」
「だいじょぶ?」
「大丈夫なわけないでしょ!」
ドンマイと釘崎を慰めてる間に虎杖は切り替えて呪霊の条件を聞く。
土地に湧くのでは無く人間小心の有り様だと伏黒が説明する。

 五条の課題として廃ビルにて釘崎と虎杖二人で呪霊を祓うこととなった。
伏黒と志保はその場で待機している。
「やっぱ俺も行きますよ。」
虎杖が心配なのか伏黒が立ち上がる。
「無理しないの。
病み上がりなんなんだから。
あ、こら、志保も黙って行こうとしない。」
黙って立ち上がる志保の手を使み、静止する五条。
振り返った彼女の顔は不安の色が浮かぶ。
「二人なら大丈夫。
今回試されてるのは野薔薇の方だよ。」
雑談を交えつつ五条は二人に少しだけ教示する。
「悠仁はさ、ココがイカレてんだよね。」
コンコンと指でこめかみ辺りを軽く叩く。
「ゆーじ、優しい奴。
イカレてる違う。」
ムッとした志保が言い返すと五条は笑って話を戻す。
「違う違う、性格じゃなくて本質の問題。
異形とはいえ、生き物の形をした呪いを。
自分を殺そうとしてくる呪いを。
一切の躊躇なく殺りに行く。
恵や志保みたいに昔から呪いに触れてきたわけじゃない。
普通の高校生活を送ってきた男の子がだ。
才能があってもこの嫌悪と恐怖に打ち勝てず、挫折した呪術師を見たことあるでしょ?」
二人はその言葉に顔を見合わせ押し黙る。
沈黙を恵が五条を見据えて破った。
「…でも、釘崎は経験者ですよね。
今更なんじゃないですか?」
「呪いは人の心から生まれる。
人口に比例して呪いも強くなるでしょ。」
二人の会話に志保はなにかを確信して呟く。
「悟の意地悪。」
「なっ、僕は生徒の成長を願ってワザと谷底に突き落とすようなこともすんの。
別に意地悪じゃないよ。」
ポンポンと頭を撫でられて不服そうに口を尖らせる。
「それに、レベルと言っても単純な呪力の総量の話だけじゃない。
狡猾さ、知恵をつけた獣は時に残酷な天秤を突きつけてくる。
命の重さをかけた天秤を、ね。」
「だから意地悪だって。」
「呪霊の情報を全て寄越さなかったから?
嗚呼、大丈夫だよ、ほら。」
空を見上げると、廃ビルから呪霊が飛び出してくる。
「祓います!」
二人が取り逃したと思い、恵が立ち上がろうとすると五条が待ったをかけた。
「いいね、ちゃんとイカレてた。」

 *
 
 無事、任務も終了し、お腹の減った二人が帰ってくる。
「子供は送り届けたよー。
今度こそ飯行こうか。」
「ビフテキ!」
「シースー!」
「ちゅーかー!」
「こらこら、志保は関係ないっしょ。」
考える仕草を取りつつ五条はあっと声を上げた。
「あ、僕もう直ぐ任務だった。
恵、これ渡しておくから好きなのみんなで食べに行きなよ。」
ポケットから何かを取り出し恵に投げる。
「…ブラックカード。」
意見がまとまらない一年生一行は結局のところ、ビッフェに行くこととなった。
 
「伏黒!伏黒!ケバブが焼かれてる!」
「…良かったな。」
「恵!恵!インドカレー!」
「転ぶなよ。」
はしゃぐ虎杖と志保に対しため息を吐く恵。
「まるで保護者ね。
嫌なら離れればいいのに。」
パスタをとってきた野薔薇が疲れた顔の彼を見ながらいう。
「…それができたら苦労はしねーよ。」
「あっそ、虎杖はともかく、あの志保って子に肩入れする必要性がないでしょ?
まさか好きなの?」
 
 パスタをフォークに巻き付けながら釘崎が問う。
ぼんやりと虎杖と志保が肉料理のブースで何かを話しているのを見る。
嫉妬は湧かない。
ほんの少し、彼らが羨ましいと思うだけだ。
虎杖に対しての感情は幸せになって欲しいという単なる友人だ。
だが、彼女に対しては?
数年一緒にいた異性。
津美紀が可愛がってた妹分。
ついつい目で追ってしまう奴。
どれにでも当てはまるがこの感情をどれに分類しても後悔するのだろうと躊躇する。
「…わからねぇ。」
答えは出ないままそう返すと鼻で笑われる。
「意外と女々しい奴。
そんなに燻ってるならさっさとケリつけるなり、告白するなりすればいいのにバカじゃないの?」
釘崎の言う通り、バカなのかもしれない。
津美紀の呪いをなんとかすると決めたあの日。
薙原は俺の手を握って協力すると言った。
『つーちゃん、元気になったら、一緒に行きたいところある。
その時は、恵も、一緒。』
病室で祈るように津美紀の手を握りそう言った。
その日から俺たちは恐らく名前のない関係に固執するようになったんだ。
グルグル考えていると額に軽い衝撃。
「なーに、ぼーっとして。」
顔をあげれば薙原が向かいに座っている。
「今、あんたの話してたんだけど急にこいつ黙っちゃって。」
釘崎が呆れたように言えば薙原は納得した顔でこちらを向く。
「恵、何か思うなら言って。」
「…なんでもねぇよ。」
顔を背けて言うのは好意ゆえか。
【To be continued】
 
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