佐城さんこと恋人となった理沙さん。
彼女の笑顔と優しさに何度助けられたことやら。
その感謝の意を込めて今度こそ何度目かのデートに誘うぞと意気込んで日にちを確認する。
そうだ、今日から夏休みだ。
彼女の浴衣姿や水着姿に鼻を伸ばす。
「気持ち悪い顔をなんとかしてください佐鳥先輩。」
貴虎の注意も何のその。
だってせっかくの夏休みなんだもの!
 夏には恋人らしいことをしようと蓮辺の夏祭りに行こうとしたら嵐山さんから一言。
「賢、すまないが明日から雑誌の密着取材があるんだ予定を開けておいてくれないか?」
嵐山さんに頼まれたのなら仕方がない。
二つ返事で了承する。
 任務後、隊室で企画を練る。
夏祭りがいけなくとも映画や海、プールなどまだまだイベントはいくらでもやっている。
だがそのポジティブシンキングはあっさりと崩れ去った。
 任務後のライン確認にて。
補修の呼び出しという見出しを見て嫌な予感がする。
恐る恐る開いてみれば恐ろしい通告が。
「期末考査の結果で以下の者は夏休みに講習を行う…。」
書かれていることに冷や汗を垂らしながら画面をスクロールする。
自分の名前が最後に描かれていて愕然とした。
同じ学年のとりまるや他のボーダー隊員の名がない。
「終わった…理沙さんとの夏休み…。」
膝からがっくりと崩れ落ちるオレ。
「賢、どうしたんだ?」
顔をあげれば嵐山さんの爽やかな顔。
ああ、良いよなこの人は勉強もスポーツも人望も何をとっても良いところばかり。
「嵐山さーん、佐鳥はこの夏ダメかもしれないです。」
感情が昂り、泣きながら訳を話す。
「うーん難しい問題だな。
なんとか佐城さんに会えないか補修の後に約束を取り付けるとかはできそうか?」
その意見はごもっともだが彼女の家の門限は午後18時。
普通の高校生にしては夏の門限として早めなのである!
「うっうっうっ、そんな約束ができたら苦労はしてないですよ!」
オレの叫びが隊室にこだましたその時。
 
 プシューっとドアが開いて顔を上げれば愛しい理沙さんと貴虎が立っている。
「廊下まで響いてましたよ佐鳥先輩。
理沙先輩呼んで来ました。」
「お邪魔します。」
はにかみを見せる彼女。
ああなんて可愛らしい。
天使か女神かそれ以上の可愛らしさを備えたオレの彼女。
可愛さに悶えてるとツカツカと歩み寄ってきた理沙さん。
「賢君、お話は聞かせてもらいました。
早速ですが今夜から私の家で合宿をしましょう!
もちろん付きっきりでお勉強を私がみます!」
「はい…?」
彼女は今、なんと言った?
オレの勉強を見る?
しかも、付きっきりで?
え?それよりもっと前になんと言った?
彼女の家で合宿?
24時間、夏休み中、理沙さんと合法的に2人きり?
「や、やったー!こ、これ夢とかじゃないよね?
ドッキリとかでもないよね?」
ドッキリを疑うと彼女は首を傾げて一言。
「はい、ドッキリとかではないです。
みっちり一緒にお勉強頑張りましょうね。」
なんてオレは幸せものなんだ。
後光がさして天にも登る気持ちだ。
優しい彼女に勉強を見てもらってしかも時間を気にせず一緒にいられるなんて!
こうしちゃいられないすぐにでも荷物をまとめないと!
オレは嵐山さんに頭を下げて隊室を出ていく。



 行っちゃいましたねと藍さんが言う。
やる気を出してもらうために私から申し出たは良いが果たして大丈夫なのだろうか。
「佐城さん、賢にやる気を出させてくれてありがとう。」
爽やかな笑みを浮かべて私の両手を握ってくる嵐山さん。
だけれどもまだ始まってもいないのにいいのだろうか。
「い、いえ、賢君がやる気になってくれれば…。」
「甘いですよ理沙さん。
佐鳥先輩はすぐに怠けますから厳しく行かないと。」
藍ちゃんは怖い顔をして言う。
よほど普段の行いが悪いようだ。
 まあ、このお泊まり合宿にも裏がある。
私の叔父である城戸司令直々に依頼されたのである。
「お前の彼氏となった佐鳥隊員の面倒をこの一週間見るように。
なんとしてでも奴を逃すな。
わかっているだろうな?」
鬼の形相でいう叔父に逆らう事はできない。
私も賢君のことを厳しくできないのも事実。
何を隠そう私はロシアと日本人のクウォーターで銀髪、碧眼なのだ。
だが、生まれも育ちも日本なので英語はからっきし。
今回も奇跡的に赤点を免れただけ。
先が思いやられるとため息を吐けば嵐山さん達に首を傾げられるのであった。

【続く】
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