三雲が松葉杖をつきながら壇上へ上がる。
街は彼によって救われた。
だが、大人達はそれを許さない。
『三雲修です。
今の話に出てきた先月学校でトリガーを使った訓練生は僕です。
質問があれば僕が直接答えます。』
毅然とした態度で彼はそう言い切った。
マスコミ達は動揺を隠せずに騒めく。
忍田本部長がフォローに入るが一人の記者が立ち上がった。
「当人が話すと言っているんだ!
話をさせるのが妥当では?」
そうだそうだと他の記者達も口々にいう。
口々に三雲を糾弾する厳しい言葉が投げかける。
それでも彼は屈しなかった。
唯、すべてを聞いて導き出した答えは
『運命の分かれ目はこちらの都合とは関係なくやってきます。
準備が整うまで待っていたら、僕はきっと一生何もできません。
僕はヒーローじゃない。
誰もが納得するような結果は出せない。
ただ、その時やるべきことを後悔しないようにやるだけです。』
彼の決意に大人達はより、責任を追及する。
彼の言うことは確かに詭弁と取られても仕方がない。
だが今回で彼の無力さで救えなかった友人もいる。
後には引けないし、引く気もなかった。
城戸司令のフォローが入り、三雲の会見は無事、終了した。
「ふー。」
「お帰り修君。」
「いい演説だったよ。」
千佳と唐沢さんが暖かく迎えてくれる。
だが、そこに雛菱は居なかった。
屋上の一件以来、彼女の顔を見ていない。
寂しさを感じつつも彼女への気持ちに整理をつけずにいる。
モヤモヤとした気持ちを抱えていると母さんが近づいてきて一言。
「一度死にかけたのにまだ続けるつもりなのね。」
「母さん…。」
反対されると身構える。
だがそれは違った。
母なりの心配と不安、僕への激励を込めた温かい言葉だった。
「ボーダーに入ってからのあなたは自分のやることを見つけたって顔してる。
…好きにやりなさい。
あなたの人生だもの。
…でも、本当に嫌になったときは私に言いなさい。
首に縄かけてでも引き戻してあげるわ。」
「ありがとう母さん。」
親子の絆と仲間との決意を新たに僕は前へと進む。
一方その頃、露乃はというと。
本部のラウンジにてスマホで三雲の会見を見ていた。
「…かっこいいなぁ。」
自分にはない決意や自信に憧れを持ちつつ自己嫌悪に陥る。
(私は彼が大変というのに何も出来てないじゃない。)
ライブ中継を閉じてラウンジの天井を仰ぐ。
「お、いたいた。
ねぇ、君、雛菱さんところの妹さんでしょ。」
声をかけられて顔を戻すと明るい髪色の女性が立っている。
「は、はい。何か?」
戸惑いを隠せず返事をすると彼女は笑顔で自己紹介をする。
「アタシは桐生飛彩(きりゅう ひいろ)。
あなたの話を雛菱…じゃなかった龍樹さんか聞いて頼みたいことがあるんだ。」
「何ですか…。」
怪しみつつも話を聞いてみることに。
「アンタのその努力する姿勢を見込んでアタシの部隊に入隊してほしい。
どうかな?」
「見込みって…私まだC級ですよ。」
申し訳なさそうに断りを入れると心配ないと彼女は言い切った。
「龍樹さんが自身の戦功をあなたに回してB級に昇格することを認めたって聞いてない?」
そんなこと初耳だと伝えるとやっぱりかーとバツが悪そうに桐生さんは頭を抱える。
「ま、まあ、兎に角、返事は早く欲しいな。
もうすぐランク戦だし。
アタシたちも二人でやってるんだけどさ…上を目指したいのは本当のことだし。
とりあえず!これ、連絡先!渡しておくから返事はこっちで!
それじゃ!」
考えておいてよとルーズリーフの切れ端を渡され去っていく。
実力もトリオン量もない。
修君のためにここまでやってきた。
だが、もう彼は誰かに守ってもらうほど弱くない。
(私も変わらなきゃな。)
露乃も決意を新たに連絡先に電話をしてみるのであった。
【To be continued】
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