少年院に取り憑いた呪霊を伊知地から受ける。
面会に来ていた母親が泣き崩れ息子の名を呟いている。
その様子を虎杖達は気の毒に思い、決意を新たにする。
「伏黒、釘崎、薙原、助けるぞ。」
「当然。」
「うん。」
「…。」
三者三様の反応をし、宿舎の扉の前へと立つ。
「帳を下ろします。
お気をつけて。」
呪文を唱え、強制的に空が暗くなる。
伏黒は玉犬を出し、皆、宿舎の中へと入る。
入った瞬間、唖然とする三人。
志保は顔をしかめて背負っていたリュックから人形を取り出した。
「マリ、空間把握。」
「何やってるんだ薙原?」
虎杖が尋ねると志保は人形を立たせて言う。
「この中、危ない。
だから空間を視ておく。」
志保だけの説明じゃ足りないと思ったのか伏黒が振り向いて捕捉する。
「薙原の呪骸は空間把握や偵察に長けてる…って扉は!」
管のような物に塞がれなくなってしまっている。
あたふたする虎杖と釘崎に対し、志保と伏黒は冷静に対処する。
「大丈夫だ。
コイツが出入り口の匂いを覚えているし…。」
志保を横目で見ると肯いて人形を抱き上げ答えた。
「解析完了。だけど…。」
目を伏せて芳しくない返答に伏黒が察する。
そんなことを気にせず虎杖と釘崎は玉犬と戯れていた。
四人が先へと進むと三体の死体が転がっていた。
志保はこれを感知していたのだった。
「惨い…。」
釘崎の呟きがこだまする。
虎杖は岡崎正という名札のついた遺体に近づく。
「この遺体持って帰る。」
「えっ。」
「あの人の子供だ。」
連れて帰ると聞かない虎杖と置いていけという伏黒で揉み合いになる。
その様子を釘崎と志保は黙って見ていた。
「ねぇ、あんたはどうなの?」
釘崎の問いに志保は瞬きをする。
「どう?」
「どっちが正しいかって聴いてんの。」
人道的な虎杖と利己主義な伏黒。
そのどちらも正しい。
少し考えた後に志保は口を開いた。
「どっちも正しい。
なんとも言えない」
「へー意外、あんたのことだから置いていくってすっぱりいうんだと思った。」
男子二人を横目にそろそろ頃合いかと釘崎が深いため息をつく。
「いい加減にしろ!!
時と場所をわきま…。」
声を荒げて注意する釘崎が突然、穴が空いたように下へと落ちていく。
「野薔薇!」
咄嗟に隣に居た志保が手を繋ぎ、一緒に落ちていった。
「釘…崎?薙原…?」
混乱する虎杖に焦り、玉犬を呼び戻そうとした伏黒。
無残にも首だけとなった玉犬がそこにあった。
一方、別領域に引き摺り込まれた二人はというと。
「野薔薇、下がって!」
「そっちこそ下がりなさいよ!」
仮面の呪霊に対して臆することなく立ち向かう。
反発し合い、互いの足を引っ張るように我先にと攻撃をする。
一見噛み合ってないように見えて自然とお互いの隙を縫うように攻撃が当たる。
「やるじゃない。」
「…そっちこそ。」
一通り、倒し終わりほっとしたのも束の間、釘崎の背後を突いて呪霊が襲う!
「野薔薇!」
志保が構えるが呪霊は釘崎を宙吊りに。
人質だと言わんばかりに挑発してくる。
「構うな!
絶対呪ってやる。」
硬直状態が続いた直後、大蛇が現れ呪霊を食う。
「恵!」
「一旦、出るぞ。」
「悠仁は?」
釘崎を保護し、来た道を辿る。
虎杖がいないことに志保が疑問をぶつけると苦々しい顔をして口を開く。
「虎杖は無事だ。
お前は歩けるな?」
互いに無傷とは言えない三人。
このまま、悪戯に呪力を消耗するよりは態勢を整えた方がいいと判断した。
納得のいかない志保は珍しく抗議する。
「悠仁一人を置いていけない。」
「お前も虎杖に毒されたのか?
それにお前もみただろ…あいつは…。」
目をそらしながら言う伏黒の顔を包み込み、視線を戻す。
「じゃ、約束。
野薔薇を外に出したら悠仁を救いにいく。」
「…約束はできないぞ。」
顔が近いと思いつつ、首を捻って志保の手から逃れる。
「チッ、こんなところでいちゃつくなよ。」
釘崎の一声に二人は、平然と返す。
「別にいちゃついてない。」
「…そんなことより行くぞ。」
「無自覚かよ…。」
若干、焦るように言う伏黒に不信感を覚えつつ、釘崎はため息を漏らすのであった。
【つづく】
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