馬車で拉致された二人。
別々の部屋に閉じ込められ乱暴される。
「うぐっ…。」
「オラ起きろ。
お前はモリアーティの為の人質だ。
抵抗するんじゃねぇぞ。」
ヒタヒタとナイフをチラつかせ脅されるキリカ。
「…。」
黙ってついていくと黒髪の偉そうな男がいた。
「天才数学教授様にもこんな女がいたとはなぁ。」
クツクツと喉を鳴らして下品な笑みを浮かべる男。
「キョウジュのオンナじゃない。」
キッと睨むと男は顎を掴んでキリカに顔を寄せる。
「あんまり怖い顔をすんなよお嬢ちゃん。
いくらで買われた?」
「買われてない。キョウジュはそんな事しない!」
手に噛み付けば乱暴に殴打され、さらに横腹を蹴られる。
「…かはっ。」
「躾が必要な様だなぁ。」
胸ぐらを掴んだ瞬間、扉を叩く音が聞こえて振り返る。
「ボス。」
「入れ。」
後ろ手に縛られたウィリアムが男に連れられ入ってくる。
「キョウジュ!」
「お前は黙ってろ!」
下っ端に口を布で締められて口を塞がれる。
「ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ…ようこそ我が城へ。」
アヘンの交渉が始まり、乱暴に事を荒げる。
痺れを切らしたウィリアムが不敵な笑みを浮かべ、足を振り上げ言う。
「これは全て僕が企てた事なんだ。
クライムコンサルタントのこのウィリアム・ジェームズ・モリアーティがね。
君たちは最初から僕の手の平の上で踊る駒にすぎない。
…もう一つ教えてあげよう。
さっきの数式の答えは…ゼロだ!」
強めに踏み鳴らし、それと同時に屋敷が爆発で大きく揺れる。
動揺する敵に乗じて軍隊が乗り込んでくる。
動揺する敵のボスに一から丁寧に彼は説明する。
外を既に仲間たちが囲っていると。
「キョウジュ!」
拘束を解いたキリカが駆け寄る。
「ああ、可哀想に。
これは高くつきますね。」
キリカの頬を撫で、彼女を背に隠す。
暖炉の火かき棒を手に取り、ウィリアムは立ち上がる。
「…さぁ、罰を下しましょうか!!」
火かき棒を振りかぶり攻撃し、肩に当たり相手の動きを止めた。
そしてウィリアムは自分とキリカを誘拐した理由についてゆっくりと解説する。
「僕に手を出してしまったときにもうあなたたちの負けは決まっていたのですよ。」
悪あがきをする敵に容赦なくウィリアムはトドメを刺した。
「二人とも無事か!」
扉が開き、モランが入ってくるが顔を見合わせる二人。
「うわ…ガキに何見せてんだよ。」
「別に平気だヨ。」
ケロリとした顔でキリカが答える。
「だそうなので早くここから出よう。」
彼女を抱えて死体の山を避けて歩く。
「恐ろしいやつ。」
モランの呟きはどちらに向けたものなのか知るよしはない。
迎えの馬車に揺られ今晩泊まる宿を目指す道中。
「ご覧よ、モランとても可愛らしい寝顔だ。」
腕の中のキリカを愛おしげに見つめるウィリアム。
その姿はさながら父親のようだ。
さっきまで恐ろしい人殺しのを企て、実行した男とは別人だと思えるほどの豹変だ。
「ウィリアム、お前、こいつが危険に晒されるってわかってて巻き込んだのか?」
元軍人である以上、ガキや女が危ない目に遭うことは嫌と言うほど見てきた。
だが、理不尽な事で命が危機に晒されるのを彼は黙ってはいられなかった。
「…誤算だったよ。
本来なら僕一人で誘拐される手筈だった。
彼女は何も知らない。」
首を横に振るウィリアムにモランは額に皺を刻み黙り込む。
「…そうかよ。」
これ以上彼に何をいっても無駄だが、何もできなかった自分にも腹が立った。
【To be continued】
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