ランク戦当日。
「あ、あの桐生隊長、本当にぶっつけ本番でやるんですか?」
ミーティング途中で無茶な作戦を話されてびっくりする。
「鳴ちゃん、新人ちゃんに全て位置情報渡すことなんてできる?」
オペレーターの相澤さんに聞けば彼女はキョトンとした顔で言った。
「できますよ。」
「ほらね。宵待より機動力ありそうだし露乃ちゃんならいけるって。」
バシバシと背中を叩かれる。
正直、作戦を聞いただけで相澤さんの指示だけで動けるだろうか?
「雛菱〜考えたってうちの隊長はノーって言ったところで強行突破が基本だから諦めろ。」
半笑いで宵待先輩が頭を撫でてくる。
余程、酷い目にあったのだろう。
彼の目が諦めろと如実に訴えている。
「…わかりました。
自信ないですが頑張ります!」
「よっしゃその粋だ!」
肩を引かれ、隊室を出る。
丁度、ばったり、荒船隊と出会して足を止める。
「よー、桐生、そいつが新人?」
「へへん、哲人に負けない人材だから覚悟しとけ。」
「ハッ、新人でも余程秘蔵っ子らしい。
そりゃ楽しみだな。」
煽る飛彩に笑う荒船。
二つの部隊は会話もそこそこに同じ道を黙って歩く。
ひりつく空気に露乃は肩を震わせていた。
*
ランク戦が始まり、転送される。
運悪く荒船隊に囲まれている露乃。
力の限り、狙撃から逃げている途中。
前方からトリオンの弾が降る。
諏訪の狙いは露乃ではなく上の荒船へだった。
「と、取り敢えず助かった?」
物陰に隠れ、様子を見る露乃だが荒船が諏訪へ一射。
『雛菱さん聞こえる?』
「ひゃい!」
鳴子の声に驚き、肩を震わせる。
『驚いてる所、ごめんなんだけどそこから動いて他の部隊の奇襲を行えないかな?
特に玉狛の二人が迫ってきてるから荒船隊を狙ってほしい。
勿論、桐生さんもそちらに向かってるからなるべく、気を見て反撃して。』
いきなりぶっつけ本番にも近い露乃に言い渡されたことは一つ。
狙撃手の足止め。
(やるしかない。)
覚悟を決め、坂道を駆け上がる。
すれ違い様に荒船に見つかってしまう。
孤月が振り下ろされる瞬間、銃口を向けた。
「ほう、見込みのあるやつだな。
だが、遅い!」
一線、スローモーションのように思えたが気がつけばマットレスの上だった。
「…ダメ、だったんだ。」
悔しがっているとドア越しに呼びかけられる。
「お疲れ様です、雛菱さん。
後学のためにもこちらにきてもらえますか?」
鳴子に呼びかけられ、ハッとする。
こんな所でクヨクヨしている場合じゃないと。
ブースから出て、モニターを確認する。
桐生さん達はまだ生き残ってる。
彼女らの勇姿を見て何か一つでも学ばないと。
「いい顔になりましたね。」
鳴子は笑う。
入りたての自分と重ねて懐かしい気持ちになる。
菊池原の背に隠れ、怯えてた自分が今やチームを支えるオペレーター。
そして後輩もできた。
「…相澤さん、解説頼めますか?」
「勿論、うちは弱小ですけどそれでもみんな諦めないことが売りですから。」
二人の学習会が始まった。
露乃がやられた桐生隊はというと?
「ちぃ!やっぱり新人ちゃんには荷が重かったか…。」
『ハハッ、こちらもピンチっす。』
宵待も運悪く、空閑と堤に挟まれた。
「宵待ィ!
ベイルアウト覚悟で爪痕の残せぇ!」
『宵待了解!』
力の限りの桐生のオーダーに宵待が返事をし、乱射する。
一秒後の生存と相手の目眩しを兼ねて。
運良く、堤の左腕を吹っ飛ばすが…。
「甘いね、オニーサン。」
白い悪魔が微笑み、宵待の胴体は真っ二つに割れた。
『活動限界、ベイルアウト。』
無機質な音声と共にマットレスの上に落とされる宵待であった。
【To be continued】
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