全員の足の腱を切ると貴族は宣言した。
だがキリカの前まで来ると目の色を変えて顎を掴む。
「東洋人の子供とは珍しい。
ふむ、君は他の子供より小柄でノロマそうだ。
よし、こいつは足枷をして外に出そう。」
早朝、足枷を嵌められ走らされる。
「逃げろ逃げ惑え!
そして私を楽しませろ!」
下卑た笑い声と共に銃声が鳴り響く。
分が悪いことは明白。
だがここで足枷を外せば余計に狙われるかもしれない。
(キョウジュ、早く。)
祈りながら彼女は木陰に隠れる。
気配を消すことは慣れているが他の子供たちの悲鳴が気がかりだ。
がさりと草むらが揺れる。
身構えるが今はナイフくらいしか持っていない。
貴族たちは狩猟用の銃を持っていた。
絶体絶命、もうダメだと思った瞬間。
「キリカ!すまない遅くなってしまって。」
「キョウジュ!」
感動の再会を果たし、二人は抱き合う。
「ずっとこうしていたいんだが今はそういう事態じゃないんだ。
わかるね?キリカ。」
「はい、報告します。
今、三時方向に見える城が大元の拠点、です。
姉妹、囚われて、ます。」
気が動転しているのかいつもより声が震えている。
「…わかった。
それで?キリカはどうしたい?」
彼女の顔を覗き込むと神妙な顔つきで彼女は少しだけ考えて答えた。
「…助けたい。
殺して、欲しくない、です。」
ほんの少しだけキリカの人間らしさを垣間見た。
「わかった。
君の望みを叶えてあげよう。
痛かっただろう?」
教授も上機嫌で彼女を抱き上げ足枷を解く。
そして片手で抱えたまま、根城へと足を進める。
そして彼女らはその城の地下にて、驚愕の真実を目の当たりにする。
「…ひ、酷い。」
「惨たらしいがこれが現実だよキリカ。目を逸らさないで。」
できれば彼女には綺麗な世界で生きてほしい。
だが、無知であることは罪だと教授は痛感しているので惨状を見せる。
「大丈夫。」
彼女の瞳は涙の膜を貼りながらも真っ直ぐに現実を捉えている。
一方その頃、城内はというと。
震えながら姉が妹を庇いながら貴族と対峙する。
「とてもよかったですよ!
貴方たちの姉妹愛!
先月の兄妹には及びませんが実に見応えがありました。
現世に残す価値を持った作品に仕上がりましたね!」
嬉々として仮面をつけた貴族が叫ぶ。
その狂気に満ちた言葉に姉妹は肩を抱き合う。
「…お前なんて地獄に堕ちろ!!」
「はは…なにを馬鹿な!
美しいものばかりに囲まれている私に対して…これらは神への供物なのですよ?
ヒトというものは極限の状況でこそ真にその美しき人間性を示すのですよ!
この今という時代においてそれがどれほどに尊く今日なものか!
神がこの収集物を見たらどう思われるでしょうね!
そして最期の審ーぱ…んーが…」
演説もそこそこに彼の喉と背中に刃物が突き立てられる。
それらは教授とキリカによるもの。
貴族は最後の力を振り絞り振り返る。
「…うぐ、あ…あく…ま…!
悪魔が来てしまった…っ。
な…何故…神を神を呼ぶためのコレクションなのに!!」
貴族が絶望の最中、教授は冷たく見下ろし、仕込み刀を振り上げる!
「…僕が悪魔だって?
全てを一掃できるなら…それも悪くない。」
彼が貴族の首を刎ねた瞬間、キリカは飛びのいて姉妹の拘束具を外す。
「あ、あんた一緒に捕まってた奴…。
助けを呼んでくれたのか?」
姉が驚くと彼女は人差し指を口元に持って得意げに答えた。
「ヒミツ。
これで、お別れ。」
その後、城から抜け出し、ルイス達と合流。
スラムの子供達を街まで送り、事件は幕を閉じた。
「…キョウジュ。」
屋敷に戻ったキリカは身支度を済ませて彼の寝室へと枕を抱えてやってきた。
「どうしたんだい?」
優しく頬を撫でながら彼は慈愛の笑みを浮かべる。
「…怖かった、一緒に寝ていい?」
彼女の素直なお願いに気を良くして上布団を上げて招き入れる。
「いいとも、今日はよくがんばったね。」
優しく背を撫でて労いの言葉をかけるウィリアム。
「…うん、キョウジュ、かっこよかった。」
うとうとと船を漕ぎ、彼女は眠りの世界へと旅立ったのであった。
【To be continued】
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