ファミレスに寄った後。
万次郎はいつもの適当に散歩がしたいと言い出し、バイクを家に止めて歩き出す。
「ケンチン、なんか面白いこと言って。」
「無茶言うなマイキー。」
腕を後ろ手で組んで前を歩く彼はケンに無茶振りを言いつつ、その顔はどこか楽しそうだ。
目的地も不明なこの散歩は彼の気の済むまで続く。
「あ、舞は今年の武蔵祭り巫女さんやるの?」
思い出したように聞かれるので私は素直に頷く。
「うん、今年が最後のお手伝いだから。」
毎年毎年、町内会のよしみで参加する巫女舞も今年が年齢的に最後だ。
練習も毎晩やっているので抜かりはない。
「ふーん、毎年律儀だな。」
ケンが呆れたように言う。
「まあ、町内会の催しは嫌いじゃないからね。」
舞自身、議員の娘という事を忘れられる時間でもあるから好きなのだ。
公園までやってくると何やら人集りができている。
処刑、処刑と物騒なコールの中、男の声が響いた。
「バットもってこい!!」
どうやら金髪君とパンチパーマの大柄の男が戦っているらしい。
それを見ている野次馬も全員ガラが悪い。
「オイ、キヨマサ。
客が引いてんぞー。」
ドラケンの言葉に野次馬が一斉に振り返り、頭を下げる。
『お疲れ様です!』
「無敵のマイキー。東卍のボスだ!」
赤髪の子がマイキーを見て驚く。
三番隊の特攻をしてるアピールをしようが素通りで金髪の子に歩み寄って行く。
「な、なあ、マイキーの隣にいた女子誰だ?」
黒髪の子が茶髪の眼鏡の子に問う。
「バッカお前、無敵のマイキーの女知らねぇの?!
そうじゃなくてもあの人は有名人だろ。
滝本舞って言ったらわかるだろ?」
「滝本ってあの議員の?」
キヨマサ君を制裁してるマイキーを横目に噂話をしている彼らに歩み寄る。
「ねぇ、君たち何してるの?」
「い、いえ、何も…。」
目を逸らす後輩達が少しいじらしい。
「ふーん。噂話も程々にね。「喧嘩賭博とかくだらねー。まーい。帰るよー。」わかったわ、じゃあね。」
後輩達に手を振り、どら焼きがないと駄々をこねる彼氏を宥めるのであった。
 
 数日後、佐野家にお邪魔していたが今晩は集会があるらしい。
「だからエマと一緒にいれば安全だから一緒に来てよ。」
「私がついて行っても行かなくても大して変わらないでしょ。」
夕飯を用意しながら返事を返す。
できればあの集団に「姐さん」と呼ばれたくないのだ。
「えー俺のモチベーションが下がるんだけど。
それにもし、強盗とかお礼参り目的のやつが入ってきたりしたらどうすんの?」
振り返ると膨れっ面で脅し文句を添えられる。
余程機嫌が悪いらしい。
できた煮物を皿に盛り付けながら私は言う。
「お爺さまもいらっしゃるし、私が弱くないって知ってるわよね?」
「でもさー、俺は心配なんだよ。
舞が目の前にいねーと。」
歯切れの悪い言葉に不安を感じ取り、私は折れる。
「仕方がないわね。
そろそろお爺さまを呼んできてくれない?
お夕飯ができましたよって。」
「へいへい。」
お腹をかきながら廊下に消えて行くマイキーを見送る。
その後、早めのお夕飯を済ませて彼のバブの後ろに乗る。
「飛ばすからしっかり捕まってろ。」
「安全運転でね?」
免許を取ってないところが心配だが不良にそういうことをいうだけ野暮である。

 神社周りに集まればかなりの人が来ていた。
「お疲れ様です!姐さん!」
「姐さん!今日もお綺麗っすね!」
「みんな、こんばんは。
姐さんっていうのはやめてね。」
ヒラの子達に挨拶をしていると。
「おーおー、ちゃんと時間通りにマイキー連れてきてんだな嫁さん。」
「ケン、その呼び方やめてって言ってるでしょ。
そういう貴方はエマちゃんとどうなのよ。」
彼の脇腹に軽く裏拳しながら反撃する。
「ぐっ、それはカンケーねーだろ。」
「ウチがなんだって?」
噂をすれば振り返ると本人がいた。
「エマちゃん、塾は終わった?」
「うん、今日の夕飯は何?」
「今日はお爺さまのリクエストでギンダラの煮付けと茄子の煮浸しと白あえよ。作り置きには鯵の南蛮漬けがあるからそっちは明日ね。
デザートには」
「やった。ウチ、舞ちゃんの煮浸し大好き!」
夕飯の話をしていると遠くでヒラ隊員ととたけみっち君が揉めてるのが見えた。「…止めに入ってこようかしら。」
「やめとけ、やめとけ。
ほら、三ツ谷が止めに入ったから。」
ケンが私の肩を掴み、止めてくる。
腕まくりをし、準備をしていたら三ツ谷君が確かに止めに入っていた。

「わりぃ、ちょっと行ってくるわ。」
ケンがたけみっち君と女の子のところまで行き何かを話してる。
どうやら表情を見る限り、悪いことではないらしい。
「オイ、エマ、舞!」
呼ばれたので二人して行くと。
「この、コタケミっちの彼女だからしっかり守っとけ。」
「りょーかい。」
「はーい。」
「あ、よっ、意気地なし君。」
とても良い笑顔でエマちゃんはたけみっち君に手を振ったのであった。

【To be continued】
トップページへ