その日は朝から最悪だった。
「響にぃ、アタシの靴下知らねー?」
「それなら外に干してあんじゃね?」
庭に出てみれば地面に落ちていた靴下を見つけるところから始まる。
それから昼休みに牛乳をスカートの上にこぼし、放課後は…。
「今日は顧問がいないから部活は中止真っ直ぐ帰る様に。」
なんと部活がかくなってしまったのだ。
友人であるミチルは「ごめん!母さんから夕飯の買い出し頼まれたから。」と先帰ってしまい。
もう一人の友人である明日美は「…塾があるから。」とそそくさ帰っていった。
タカの方は部活があるし、知り合いのパーちんとペーやんは仲良く補習だ。
仕方がない一人で帰るしかねーか。
とぼとぼ一人で歩く。
兄二人とタカからは一人で帰るなと口を酸っぱく言われているがこうも知り合いがいないんじゃ無理だ。
「たまには一人で帰るのもいいかもな。」
鼻歌まじりに一人で歩いていると肩が当たってしまう。
「ごめんなさい!」
素直に謝ると胸ぐらいきなり掴まれた。
「あぁ?どこ見てんだねーちゃん!」
「いや、その、悪かったって!
このとーり!」
どうやらアタシがぶつかったやつは幼馴染と同じ不良という人たちらしい。
「肩がいってーなぁ…。
お、ねーちゃんいいもん持ってんじゃん見せてよ。」
やめてと抵抗するがそれも虚しく背負ってたムスタングを取られてケースを開けられる。
「へぇ、女が一丁前にギターか。
しかもこれビンテージのレア物とかムカつくなぁ。
おい、抑えとけよ。」
男は他の仲間に指示を出し、ギターを取り出して徐に振り上げる。
「や、やめろ!」
アタシの叫びも虚しくギターは地面に叩きつけられ足で踏み壊された。
ネック部分は破損し、弦は弾け飛び、留め具は歪んでバラバラになった。
「ひ、酷い。」
「よくみりゃその赤毛、初代黒龍の二番隊の妹だろ?
にーちゃんから聞いてたんだ。
二番隊のガクとビッキーにチーム潰されたってなぁ!」
顎を掴まれ無理矢理投げ飛ばされた。
痛みよりギターを壊される事が一番ショックだった。
「うっ…。」
「お陰で俺の兄貴はすっかり腑抜けちまって今じゃ引きこもりだ。」
立ちあがろうにも男に背中を踏みつけられる。
「だ、だからってアタシはなんも関係ないだろ。」
「いーや関係あるね。
俺の兄弟の痛みは妹であるお前が償え!!」
「がっは…ぐっ…。」
踏みつけられ、頭を抱える様に縮こまる。
やめてくれと呟きながら痛みに耐えていると。
「やめろ!何やってるんだ!」
誰かの声で一瞬、蹴られる衝撃が止む。
その隙にリンチの輪から抜け出す。
見上げると見知った顔だった。
あっという間にソイツは私をリンチしてた奴らをのした。
「大丈夫か?三ツ谷はどうした。」
アタシを助けてくれたのは背の高い辮髪な不良こと、ドラケン。
「だ、大丈夫。
タカ達には言わないで。」
壊れたギターを抱いて後ずさる。
この事を大ごとにしたくなかった。
アタシの懇願も虚しく彼はどこかに連絡する。
「おう、俺だ。
部活抜け出せそうか?
ああ、ちと和紗の事で話がある。
コラ逃げんな。」
首根っこを掴まれ逃げられなくなる。
しばらくするとインパルスの音が近づいてきてあからさまに怒っている幼馴染が来た。
「どういう事だドラケン。」
「見ての通り、和紗が危ない目に遭ってた。」
どうやら不良の間では兄貴達はかなり有名人らしい。
二人からもタカはアタシを気にかけてくれと頭を下げられていた事を聞いた。
「ひでぇな。
どいつにやられた?」
投げ飛ばされた時にできた腕の傷を見ながらタカは顔をしかめる。
足元のやつを指さすと伸びてるソイツの頭を思いっきり踏みつけた。
「や、やめなよ。」
止めに入るが聞く耳を持たない。
「俺はな、別にガクさんに頭下げられんでもお前が傷つくなら守ってやるって決めてた。
なのに俺は…俺の不甲斐なさが許せねぇ。」
「やめろ三ツ谷。
それ以上やったら死んじまう。
取り敢えず、和紗の手当てが先だ。」

 その後、ドラケンの親父さんの店まで行き手当をしてもらった。
「もー女の子が生傷作っちゃダメよ。」
「すみません、シャワーや洗濯機、それに服まで借りちゃって。」
「いーって、乾くまでいていいからね。
ケン坊、店の奥からお菓子とってきな。
タカ坊も彼女ちゃん大事にしなよ。
じゃ、私いってくるから。」
ごゆっくりーと手当てをしてくれたお姉さんは去っていく。
「で、これからどうする?
そのギター直せそうか?」
ドラケンが心配そうに見てくる。
だが、素人目でも見てわかるくらい破損が激しい。
ギターは壊れた部分を取り替えた査定額と職人の手間賃で大体の修理代が変わってくる。
会社によっても取り扱ってる部品が変わってくるために余程の理由がない限りは買い換えたほうが早いし安くつく。
「…多分、無理だと思う。」
破損箇所はネック、弦、弦を押さえる金具、それに加えてアンプに繋ぐ端子の部分にも砂が詰まっていた。
合計ざっと見ても百万はくだらないだろう。
「やっぱりあいつら絞めて金出させるか。」
頭に血が登ってるタカの腕を掴む。
「それだけはぜってーやめて。」
「でも、壊したのはあいつらだろ。」
こればっかりはドラケンも賛成だと頷く。
不良二人だけじゃ話にならないとアタシは渋々兄を呼ぶのであった。
【To be continued】
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