現場を少し物色し、ウィリアムは足早に立ち去る。
「何かわかりましたか?」
ルイスの問いかけに対し、満足そうに彼は微笑んだ。
「ああ…ホームズは酒を勧めることができた人物や残された靴跡などの細かい状況証拠から犯人を絞っていくだろう。
せっかくだから僕は違うやり方。
犯罪者心理からプロファイリングしてみようかな。」
そう言ってキリカを連れて彼らは食堂へと戻っていく。
乗務員に紅茶を頼んで嗜む。
キリカは少しだけ退屈そうに窓をながんでいる。
「犯人自身、予定外の殺人に大いに困惑していた。
それは現場の状況からも明白だ。
それでも部屋に鍵をかけてでたのは発覚を少しでもあったからだ。」
それから教授は犯人の行動を事細かにルイスとキリカに話していく。
ホームズが乗務員全員を集めて推理ショーを開く。
「犯人は乗務員の中にいる。
調べはついているぜ。
靴のサイズが八インチの二人!
前へでろ。」
ホームズの指示に乗務員一同は動揺を隠せない。
「さぁ、一人ずつ手袋を改めさせてもらおうか!」
二人の手をヤードが確認すると…。
「む…袖が濡れているな。
手を開いてくれるか?」
明らかに動揺し、手を堅く握る乗務員。
「手を開け!!」
痺れを切らしたヤードの怒鳴り声に狼狽しながら乗務員は手を開いた。
その手には真っ赤な血の痕が…。
「客室乗務員、エディ・ホウソーン。
お前が犯人だ!」
ホームズの推理に同僚乗務員達はエディを責め立てる。
すると彼は手を怪我したのだと言い訳を始めた。
その言い訳を静かに教授はブラフで撃退する。
「ならどうしてメガネのツルにまで血が飛んでいるのです?」
ジッとキリカもエディを責める様な目で見る。
二人の言葉と視線にエディは項垂れて罪を認めるのであった。
その後、夜中ということもあり、ホームズ達はバーへ。
教授達は寝室へと帰っていく。
「…何であの人、殺しをしたの?」
キリカは不思議そうに教授に尋ねる。
「大人になるとね、ストレスという目に見えない敵が現れるんだ。」
「どうして?」
「どうしてって…。」
ルイスが困っていると教授が振り返って人差し指を口元に立てて微笑する。
「それはね、この世界が間違っているからなんだ。
間違いを正すためには不必要な悪い貴族を殺さないといけない。
前に読んだオオカミと羊の絵本は覚えてるかな?」
「うん、羊さんを守る為に犬さんがオオカミさんを追っ払う話。」
キリカがお気に入りの本で内容は貴族をオオカミに見立て羊を虐げると言うこの世界の縮図を指し示したものだ。
「そう、悪いオオカミさんを殺した犬さんがたまたま今回は運が悪いことに狐さんに見つかってしまったんだ。」
例え話にキリカは首を傾げる。
「何で狐さんに見つかったらいけないの?」
「狐さん達は裏切り者で本当は羊さんの見方をしないといけないのにお金でオオカミさん達と仲良くしているんだ。」
段々と目が鋭くなる教授にルイスが止めに入ろうとする。
「兄さん…キリカにこれ以上、僕たちの話は聴かせない方が…。」
「大丈夫だよルイス。
いずれにしても彼女には説明する時が来るけど何となくは解らせないといけないんだこういう事は。」
その言葉にルイスは何も言えなくなってしまう。
確かに教授の言う通り、自分たちのそばにいる以上巻き込まないと言うことはできない。
だからといって幼い彼女に理解できるものなのだろうか?
「そんな…酷い。
オオカミさんが意地悪して羊さんは酷い目に遭っているのに!」
「だから僕らは犬さん達に力を貸す仕事をしているんだ。」
「本当?」
「嗚呼、本当さ。
詳しくはもっとキリカが大きくなったら話すからね。
今日はゆっくり休もうね。」
寝台にまでつくと寝る支度をするのであった。
【To be continued】
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