ロンドンの別邸に着いたところでキリカは疲れたのか目を擦っている。
「ダメだよキリカ。
眠たいのならせめて着替えてからじゃないと。」
ルイスが着替えをトランクから出すがうつらうつらしている彼女には届いてない様子。
「嗚呼、それなら僕が着替えさせるから大丈夫だよルイス。」
「そんな、兄さんも長旅で疲れてるでしょう。」
ルイスは気遣いで言っているのだが教授はにこりと微笑んでやんわりと断る。
「それより荷解きを頼むよ。
キリカを寝かしつけてから話があるから広間で待っていてほしい。」
「…兄さんがそこまでいうなら。」
キリカと着替えを抱えて彼は寝室へ向かう。
着替えさせ、ベッドの上に横たわらせる。
穏やかな寝顔を見て彼は笑みをこぼす。
その姿は父親のような穏やかな表情だ。
「早く君が心から笑って過ごせる未来が来てほしい。」
その未来に彼はいないかもしれないがせめてこの時だけはキリカの味方であることを誓った。
彼女が眠りについた後、彼らは屋敷を出て行く。
廃墟の礼拝堂へとある人物と交渉をする為に。
「やはり来たか取引は無事成功したよ。
お前に授かった策のおかげだウィル。
お姫様は夢の中かな?」
「良かったです兄さん。
ええ、今宵もぐっすり寝てくれましたよ。」
「…私の命はあなたのもの。」
アイリーンはウィリアムがこの計画の要だと察し、深々と頭を下げる。
「…その忠誠心の代わりにあなたの望むものを与えましょう。
…さぁ、顔を上げてアイリーン。
共に最後の交渉へと向かいましょう。」
そうして誘われるまま、彼女たちは大英図書館へと向かうのであった。
交渉は難なく進み、アイリーンアドラーとして最後の仕事に取り掛かろうとした矢先。
ネグリジェ姿の少女が起きてきた。
「…きょーじゅ。」
眠気まなこを擦り、一言。
その様子に気がついたウィリアムが少女を抱き上げ額にキスを落とす。
「ああ、おはよう。
そばにいられなくてごめんね。」
「ううん、それよりお客さん?」
ヘーゼル色の瞳がアイリーンを捉える。
その瞳は少女ながらも警戒の色がうかがえる。
「ああ、彼女は僕たちの仲間で…。」
「僕の名前はボンド、ジェームズ・ボンド。」
そう言って彼女いや、彼は短く髪を切るのであった。
「よろしくボンド。
わたし、キリカ。」
小さく差し出された手を彼は握り握手を交わしたのちに手の甲にキスをする。
「よろしく、可愛らしいレディー。」
その様子に黙っていない男が二名。
「なっ、離れろ!」
「おやおや、これまた随分と人タラシな才能がおありで。」
モランは威嚇し、ウィリアムは笑顔だが目が笑っていない。
他の面々も呆れてため息を漏らす。
そんなこんながあってアイリーン改め、ジェームズ・ボンドが仲間になったのである。
数日後、ロンドンで切り裂きジャックの話題が新聞に上がる。
「…切り裂きジャック。」
「物騒。」
朝のティータイムを堪能していたキリカが呟く。
「大丈夫、僕が守ってあげるから何にも心配いらないよ。」
優しく頬を撫で言い聞かせるがキリカは首を横に振る。
「違う。街の人たち…悪くないのに。」
義憤に目覚めつつある彼女の心に少しだけほくそ笑むウィリアム。
「嗚呼、なんとしても解決しないとね。」
ある人にとってはとても不名誉な事件なのだから。
一方でボンドとルイスは屋敷の案内をしていたが。
「なっ…なんだよあいつ!こえーよ!!意味がわかんねぇ!試すって何?!」
モランの大声を聞いてキリカを抱き上げて移動するウィリアム。
二人が部屋に入ると半裸のフレッドと全裸のモランと何やら揉めてるボンドの姿があった。
【To be continued】
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