飛び出した先に羽純と居合わせる志保。
林の向こうでは悠仁と東堂が戦っているのを横目に間合いを取る。
「好奇、矢張り今日は運がいいようですっね!」
クナイを投げて羽純は間合いを詰める。
志保は軽々と避けるが…。
「それ、避けた方が痛いですよ。」
瞬間、バチっと鈍い痛みが志保の足首を襲う!
どうやらクナイは呪具らしい。
バランスを崩した瞬間を羽純は見逃さなかった。
『私は地を断絶する。』
瞬間、地鳴りがし、志保の立っていた地面がぱっくりと割れる。
「いった…。もう怒った!」
珍しく志保が怒りを露わにし、髪を呪力で伸ばし始める。
それは太く、蛇の様に地を這い、羽純に襲いかかる!
『断絶!』
省略詠唱の為に数本切れただけで毛束の勢いは止まらない。
蛇の様に数本に分けられ巻き上げられる。
「ぐっ、こんな締め付け…。」
もがこうとした羽純を見兼ねた加茂が伏黒と戦いつつ止める。
「よせ、新戸部。
緊縛系の術式は足掻けば足掻くほど逆効果だと教えただろ!」
「煩い、加茂先輩。
黙っててくださいよ!」
その間にも締め上げる力は強まっていく。
(呪具のクナイは使い果たして残るは家系の術式のみ。)

 生憎、五条悟の様な立派な六眼ではないが新戸部家にも代々伝わる術式がある。
それがこの『死認(しにん)』
元はロシアの家系の術式らしいが詳しいことは知らない。
ただ、この術式を絶やしてはならないという掟だけが家に残った。
そんな古臭いしきたりなんて捨てればいいのに今だに後生大事に守ってる兄や両親の気がしれない。
全くもって難儀な家に生まれたものだ。
(だからこそ力を示さなければ。一か八かだ!)
有りったけの呪力で詠唱を叫ぶ。
頭の中でブチブチと嫌な音が響くがかまやしない。
そうして薄れゆく意識の中で薙原志保の髪がバッサリ切られていくのを見届けて羽純は意識を失った。
「一人目。」
自滅した羽純を木に寄りかからせて志保は歩みを進める。
遠くの方で西宮と野薔薇と夏稲の三つ巴が戦ってる様だ。
(…あの輪に入るのはめんどくさい。)
バッサリとベリーショート並みに切られた髪を弄りながら彼女は考える。
呪力は先程の戦闘でほぼ使ってしまったし、何より武器である髪が伸ばせないのが厄介だ。
恐らく羽純の術式のせいだろう。
術者が戦闘不能になっているのに解呪されない術式にため息を漏らす。
「…恵!」
先ほどまで加茂と戦っていたが場所を移動したのか彼の姿が見えない。

 一方で夏稲と野薔薇というと西宮をピコピコハンマーでボコボコにしている途中だ。
「野薔薇ちゃん!」
銃声に気がつき咄嗟に野薔薇を庇って頭にゴム弾を受ける夏稲。
「予定外だけど当たってよかった。」
禪院真依が木の上でニヤリと笑う。
「テメェ、よくも夏稲先輩を!」
「釘崎、夏稲連れて下がってろ。」
「真希さん!」
間一髪、真希が追いついて真依と対峙する。
その瞬間、一斉に広範囲の帳が降りる。

 志保は恵の残穢を辿って進んでいると見たこともない呪霊が現れる。
『愚かな人間よ。』
「何、邪魔!」
志保が術式を展開するまでもなく、呪霊の攻撃に吹っ飛ばされる!
「なっ、薙原!」
吹っ飛ばされた先に狗巻都鉢合わせし、彼が受け止めてくれる。
『逃げろ!』
彼の呪言で四人は呪霊の攻撃から距離を取る。
「何故高専に呪霊がいる。
帳も誰のものだ?」
「多分、その呪霊と組んでいる呪詛師です。
薙原、大丈夫か?」
加茂の疑問に恵が答え、志保の制服の汚れを払ってやる。
「ん、問題ない。
棘、ありがとう。」
「こら、狗巻先輩だろ。」
「ゲホ…しゃけ。」
狗巻にお礼を言って志保は無駄に肩回しをして元気だというアピールをする。
「以前、五条先生を襲った特級呪霊だと思います。…風姿も報告と近い。」
「ツナマヨ。」
狗巻が電話をする様に指で形作る。
「スマホあるよー。」
呑気に志保がポケットからスマホを取り出そうとし、恵達は雑談をしていると。
「後退ー。」
「やっ、」
連絡を取ろうとしたスマホに木の芽が生える。
『動くな!』
咄嗟に狗巻が呪言で拘束し、加茂と恵が攻撃するが効いていないようだ。
『辞めなさい。愚かな児等よ。』
「なにこれ。」
「気持ち…悪りぃな…!!」
頭に直接、言葉が届く感覚に四人は戸惑う。
『私はただ、この星を守りたいだけだ。』
呪霊の言葉にはハッキリとした意思があった。
だが、そんな甘言に耳を貸すほど彼らは余裕はない。
退却しつつ、攻撃を防ぐ。
「来るぞ!!」
加茂の声に志保が呪霊の球体を髪で止めるがそこから鋭い棘が生えてくる!
『止まれ!』
加茂も加勢するがキリがない。
攻撃は当たりはするが呪霊が硬いせいか傷付けても再生するので意味がない。
屋根伝いに逃げ延び、恵が鵺を召喚する。
「狗巻先輩と薙原が止めてくれる。
ビビらずいけ。」
だが、その攻撃も虚しく、鵺は一撃で沈められ、狗巻も膝をつく。
「棘!」
崩れる狗巻を支えようとするが髪をぶちぶちと嫌な音を立てて千切れる。
「ぎゃああああ!」
頭を押さえてのたうち回る薙原。
絶体絶命の彼らの運命やいかに。
 
【To be continued】
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