玉狛第二の次の試合を観戦する桐生隊の面々。
「憎らしいほど順調っすね。かっー空閑に掻っ攫われて悔し〜!」
宵待がブツクサと文句を言う。
「まあまあ、ウチらはのんびり無理せずがモットーなんだからそう悔しがるなよ。」
「あはは、でも私も悔しいです!
だから今日は目一杯観察して次に繋げましょうね宵待先輩。」
珍しくやる気をみせる後輩二人に気を良くした桐生。
(この調子で立ち直ってくれたらいいけど。)
試合開始の合図が響き渡る。
 

 
「で、なんで俺の彼女は大人しくしてくれないのかな?」
珍しく腕組みをして怒っている迅。
「大人しくって、今日の防衛任務のシフト入ってますし換装したら平気ですよ。」
トリガーを持って松葉杖を置こうとした瞬間、腕を掴まれる。
彼の険しい顔つきに少しだけ龍樹は戸惑いをみせる。
「わかってるけど…その、偶には頼って欲しいというか…。
それに換装したら捻挫の治りが悪いかもしれないし。」
頬を赤らめ、バツが悪そうに目を逸らす。
素直じゃないのはどうやらお互い様の様だ。
「はぁ、何を言い出すかと思えばそんなことですか。
危なくなったら千聖さんに呼び出ししてもらう様頼んで有りますから。
ほら、今日は後輩の晴れ舞台で太刀川さんと解説でしょう?」
ぐずる彼を慰めているとひょっこり空気の読めない太刀川が覗く。
「おっと、イチャイチャの邪魔だったか迅。」
「…別に見えてたけど。
終わったら試合中でも即連絡する、約束して。」
「はいはい。それじゃあ、お願いしますね太刀川さん。」
「おう、またな雛菱。」
半ば、引きずられる様に迅達は去っていく。
「なあ、雛菱のことがそんなに心配か?」
引きずられている途中、太刀川に聞かれて眉をピクリと動かす。
それは核心をついているかの様な物言いだ。
「心配というか…その、なんかもう龍樹が泣いてるところ見たくないんだ。
可能性の芽すら摘んで俺のそばじゃなくても笑っててほしい。」
「重すぎ。
気持ち悪りぃな迅。」
「悪かったな。だってこんな気持ちになったのは龍樹が初めてだから俺だってどうしたらいいかわかんないんだ。
目を離したらどっかいっちゃいそうで…。」
前途多難な恋路に太刀川は笑う。
「ははは、んなもん素直に言えばいーじゃねーか、寂しいって。」
「寂しい?俺が?」
「寂しいって顔に書いてあんぞ。」
図星を突かれて間抜けな顔になる迅。
だが、太刀川の言葉をすんなり受け入れる。
「そっか…俺、寂しかったんだ。
ありがとう、太刀川さん。」
「何かいったか?」
「ううん、急ごう。」
スッキリとした顔で迅は先を走る。
(太刀川さんってたまにいいこと言うから侮れないな。)
 
一方で三毛島隊はというと。
「よっと、これで最後っと。」
排水溝や雑木林の裏に潜んでいたラッドをひたすら処理していた。
「にゃー五十三体とかどれだけあいつら暇なんだにゃー。」
三毛島もブツクサと文句を言いながら処理していく。
『今潰したので最後です。
お疲れ様でした。』
「お疲れだにゃー。つーか、龍樹ちゃん最近綺麗になった?」
任務を終えて換装を解こうとすると三毛島に呼び止められる。
「えっと、それはどう言う意味ですか?」
『そうそう、何か表情が柔らかくなったと言うかほら、笑っている顔が多くなりましたよね龍樹さん。』
千聖まで興味津々の様だ。
「別に。」
「クールに振る舞っても無駄にゃ。
ネタは上がってるにゃ吐け!吐くのにゃー!」
寄りかかる上司に若干苛つきながらも龍樹はため息を吐く。
(こうなった三毛島先輩や千聖さんは相当厄介だし素直に話すか。)
「ええ、実はお察しの通り、彼氏ができました。」
『知ってます。迅さんですよね。
ボーダーの中でその噂で持ちきりですから。』
「やっとくっついたかーってみんな思ってるにゃ。」
ビシッと親指を立てる三毛島。
正直、嫌な予感しかない。
「う、噂?!
嘘でしょ…。」
『嘘じゃありませーん。
てか、気がつかないのは龍樹先輩くらいですよー。』
ケラケラと後輩に馬鹿にされて少しだけショックにへたり込む。
(告白は誰も聞いてないところでしたはずなのに。
悠一さんも誰かに公言するような人ではないはずだ。)
悶々と考える龍樹に対して優しく肩を叩く三毛島。
「ドンマイ、龍樹ちん。」
『ドンマイです。』
生暖かい視線に顔を真っ赤にして叫ぶ龍樹。
暫くはからかわれることが確定したのであった。

【To be continued】
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