「いい、キリカ。
くれぐれもそばにいて。
ナイフの使い方は教えた通りに。」
黒い外套を着せられて廃墟に一緒に踏み込む。
「何者だ!お前達は!!」
「ジェームズ・モリアーティ…或いは、犯罪教と名乗った方がわかりやすいかな?」
連続娼婦殺しの犯人達に最後通牒を渡しに来たモリアーティ一行。
だが、一味は大義名分を掲げて己を正当化するばかり。
「革命…!!
そうではないかね?!今回我々が計画したこの事件は見事にこの国を大混乱に陥れている…!
たった二人の社会のゴミを掃除しただけでだ!!」
酔った狂言に顔を顰める教授とキリカ。
そして最後には。
「殺せ!!」
一味のカシラの合図を皮切りに男達が立ち上がる。
「…八人…いいね、ルイス、キリカ。」
「はい、兄さん。
皆殺しですね。」
「りょーかい。」
二人も臨戦体制になり、男達が飛びかかってくる!!
「みろ!子供だ!アジア人なら高く売れるぞ!!」
下品な笑みを浮かべ、キリカを捕まえようとするが。
「ゲスめ。」
その手をひらりと交わし、喉をナイフで切り裂く。
声もなく大男が倒れる。
「この!よくも!」
椅子を武器に振り上げる男を掻い潜りドロップキックを見舞う!!
「ぐっ、何…ぐぁ!」
「油断は禁物だよキリカ。」
先に倒し終えた教授が武器を片手に手助けをする。
「ごめん、なさい。」
「謝って欲しいのではないんだけどなぁ。
」
ネズミがわらわらと逃げ出すのを横目に教授は余裕の笑みを浮かべる。
「…は、ははは、ざ、残念だったな。
俺たちを皆殺しにできなくて…。」
瀕死の状態の男が悪あがきと言わんばかりに捨て台詞を言う。
「…フフ、君達が全員揃うまで待ち構えている時間は十分合った…。
当然、こんな工作を行えるほどにね。」
キリカに導火線に火をつけるよう合図する。
「ま、まて、待ってくれお嬢ちゃん。」
「構わずやりなさい。
彼らの逃げ足とこの導火線…どちらが早いかな?」
ジジ…と火花が逃亡者を追いかける。
「さあ、僕たちも撤退しよう。
よく頑張ったねキリカ。」
彼女を抱き上げて闇世に紛れる。
その様子を監視している者がいると知らずに。
三人の活躍によって連続娼婦殺しの幕は降りるので合った。
*
数日後、ダラム大学にて。
「キリカ、今日はここでいい子にできるよね?」
研究室で絵本を手渡される。
「できる。」
時計を見ながら彼は大学の仕事をこなしていく。
「そろそろか…。」
時計を気にし、書類をまとめて立ち上がる。
「じゃあ、答案用紙を受け取りに行くけどくれぐれも誰かが訪ねてきてもウィリアム教授はいませんって答えるんだよ。
トイレはここの突き当たりだから。
手はちゃんと洗うんだよわかったね?」
「はい。」
「いい返事だ。」
そう言って彼は部屋を後にする。
ここにはキリカが読めそうな本はない。
窓の外には小鳥がさえずっている。
自由な鳥とは対照的に自分は囚われた小鳥の様。
教授の強大な愛という鳥籠で飼われてさえずっている。
(…それでもいい。)
窓からそっと手を伸ばすが飛び立ってしまう。
暇だなと窓を眺めているとドアが開く。
「キリカ、お茶でも飲もうか。」
「よお、久しぶりだな嬢ちゃん。
ワトソンが疑われた事件以来か。」
振り向くとホームズがひらひらと手を振っている。
「…なぜ、いる?」
すぐさま教授の足にしがみついて隠れるキリカ。
「キリカ、挨拶できるかい?」
にこやかな笑みの教授に促され、渋々前へ出る。
「…こんにちは。」
「はは、こりゃ相当嫌われてるな。
そうだこれをやろう。」
そう言ってホームズはキリカにキャンディを渡す。
「あり、がとう。」
意外な一面に面食らう。
三人は食堂にてお茶を入れながら答案用紙の採点に興じる。
「ところでホームズさん。
ロンドン一の探偵であるあなたがお忙しい中わざわざ、ダラムにいらっしゃってまで私に話したい要件とは一体なんでしょう?」
「決まっているだろ。
犯罪卿について…だ。」
キリカが飲んでいる紅茶の手を止める。
「何か進展でもありました?」
涼しい顔で教授は話を続ける。
これは腹の探りだとキリカも肌でわかる。
彼の見解は巷で噂の犯罪卿は義賊だというらしかった。
だが、ホームズは変わらず犯罪卿を捕まえる事に熱を上げているようだった。
「ええ、その覚悟があればきっと敵いますよ。」
ホームズの熱弁を肯定する教授。
(本当はそう思ってない癖に。)
キリカの呆れも彼には届かない。
カランカランと予鈴が鳴る。
採点を終えようとした矢先。
「…こんなアプローチもあったのか。」
「どうしたリアム。
急に固まっちまいやがって。」
「あり得ない事が起きた…と言うべきか…。」
驚きを隠せない彼にホームズは怪訝に聞き返す。
「お前がそんな風に言うなんて珍しいな。一体、何だ?」
「私の試験で満点の回答者が現れた…。」
こんな事初めてだと言う態度で彼は固まってしまった。
【To be continued】
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