※注意※
この物語は原作の始まる約8年前の捏造物語です。
色々と原作を無視している設定、展開などが挙げられますが目をつぶってくださると助かります。(原作の展開によって予告なく修正・加筆、最悪消去まであります。ご了承ください。)
また、物語を追う事に暴力的・流血・死亡などの表現を含みます。
そう言った要素が苦手な方、又は18歳以下の閲覧はお控えください。
 
 
 この世は呪いが見えざる者と見える者に別れている。
その中でも呪力と呼ばれる力を己のうちに持ち、呪術という技量を持ってして「呪い」と戦う者を呪術師と呼ぶ。
 
 これは、神とされようとした少女が人の道に戻され如何に生き方を見つけるかの物語である。


 
 千葉県、某所に家を構える、薙原家は、そこそこ有名な呪術師であった。
だが、15代続いた薙原の家系は一人息子が呪術が受け継がれていないという数奇な運命で斜陽の危機に陥っていた。
その悲痛な現実に現当主である15代目は夏油という怪しい男に唆され、一族に代々伝わる因習により、息子を手にかけその恋人と冥婚させ、呪術により、子を産ませた。

 それが何を隠そう悲劇の始まりだったのでございます。 
その子の名は志保といい、親親戚一同は彼女を七つ巫女とし、死人との間に生まれた子を崇めた。
彼女が7歳になった頃、強力な呪霊を降ろす器として。
 何一つ不自由なく、何一つ知ることなく少女は薙原邸に軟禁され、陽の光を浴びることなく生かされてきました。

「じいじ、お友達って何?」
彼女が外界を知る方法は絵本のみ。
知らない言葉があれば党首や乳母になんでも聞いているのだ。
志保が祖父と呼ぶ醜い15代目は悪い笑みを浮かべ答える。

「お主には必要のない者じゃ。
まあ、強いて言えばその呪骸じゃろう。」
志保が大事に抱える人形を指差して男は言う。
志保には友人もおらず母親も3歳の頃に引き離され、顔も朧げにしか覚えていない。
身の回りの世話は乳母がし、寂しさを紛らわす相手は呪骸
のマリだけだ。
「…必要ない。」
寂しそうにそう呟く志保の肩を叩いて男はさらに追い討ちをかける。
「そうじゃ、お主は神様と成る身じゃ。
穢れてしまうぞ。」 
「穢れる…。」
薄暗い窓の外を虚ろな目で見る。
鳥や人々らの声は聞こえているが外の様子は磨りガラスになっており見えない。
埃っぽい空気が淀み、呪力に満ちたこの部屋で彼女は唯、外への想いを馳せるばかり。
鳥籠を破るだけの力はあれど、籠の中の小鳥は外の世界を知りませんでした。



その夜、15代目は書斎にて水晶を取り出し呪術を灯す。
水晶に呪力が廻りきったところである男の顔を写した。
『こんばんは、いかがお過ごしですかな?
薙原家15代当主様。』
声色はうやうやしいがその実、水晶に映った男の笑みは悪どい。
「はっ、白々しい、お前はそんな男ではないはずじゃ。」
水晶に写る男の名は夏油傑。
薙原家の当主の商談相手という事になって居る。
「はっはっは、いやはや、当主様に言われたくないよ。
悪いお人だ。実の孫を人として扱わず、呪具として扱うなんて。私には到底できないよ。」
どちらも悪い笑みを浮かべるがお互いに腹を探り合う状態であることには変わりない。
夏油も当主も同じ考えで相手に利用価値がなくなれば命を対価としていただくだけ。
「さて、冗談はここまでにしておこうか、夏油傑。」
「はて、今のがどんな冗談か私には皆目見当もつかないがねぇ。
それで、今度のご要望は?」
「いや何、嗅ぎ回るネズミの駆除と名前を教えて欲しいとな。大したことじゃない。」
ここ、数年間に薙原家の敷地を跨ぐ怪しい影を見たという使用人が後を絶えないのだ。
「ふむ、少しだけお時間いただくがよろしいかい?」
「嗚呼、いいとも。交渉成立だ。では前金はこれで。」
手を広げて目を細める夏油。
5000万という事だろう。
当主の顔から笑みが消え、ため息が漏れる。
「全く、お主もがめつい男よのぉ。
呪術師だけの世界になれば金は必要ないというのに。」
「もちろん、私の野望はそれだけじゃないよ。
まあ、御宅のお孫さんが神になられた暁にはこのお金もお借りしてる呪具もお返しするよ。」
「どうだか…。おっとそろそろ夜も明ける。
儂はこれにて失敬。」

 一方的に通信を切られて夏油は苛立ちを覚える。
「ちっ、これだから年寄りは嫌いだ。」
悪態をつきながら夜明けの空を眺める。
来たる今年の3月3日に新たなる呪霊の器が誕生する。
薙原志保、彼女が7歳になれば非常に強力な呪霊となるだろう。
何せ、彼女は死人との間に生まれたこの世とあの世を結ぶ門なのだから。
「ははは、愉快愉快。
両面宿儺がいない今、新たな武器を作るなら初めから作ればいいさ。そして本当にこの世の無能なサルどもを一掃し手中に収める。
そうすればもう、何も他にいらないのだから。」
独り言を言い終わり彼はじっくりと薙原家の侵入者について考えを巡らせる。
 さて、薙原家を嗅ぎ回るネズミは誰だろう?
上の連中は、まだこの計画に感づいてないはずだ。
だから、五条のような特級を差し向けるわけはない。
だが、勘のいいアイツのことだ薙原のことはどこかから嗅ぎつけているだろう。
となれば感のいい奴の差し金、自分たちの部下だろう。
候補としては一級呪術師。
なれば彼奴を使おう。
 夏油は悪巧みを覚え部下を呼びつける。
暗闇の中から顔色の悪い女が出てくる。
「はぁい、傑さぁま!」
女は気が触れたようにケタケタと笑いながら彼に跪く。
「やぁ、元気そうだね晃。」
「えぇ、それはもう、今週に入って6人も結魂してくれる人を見つけたんですぅ。もう楽しくて楽しくて。」
髪を掻き上げて、女は身悶え夏油に報告する。
「それは良かった。それと一つ、お使いを頼めるかい?」
お使いという言葉に彼女は身を硬くする。
「はぁい、それで、どちらまで?」
「薙原邸でネズミの偵察をね。」
そう冷ややかな目で告げると女は垂れ流していた呪力を止めて正気に戻る。
「はい、かしこまりました。
全ては夏油様の為に。」
こうべを垂れると晃は足早に飛び出して行く。
式神に乗り、向かうは千葉にある薙原家の邸宅。

 全ての下準備は、整いつつも歯車を軋ませる。
夏油傑という男に付き従う呪術師は大半は彼の思想に感化されたもの達だ。
だがこの女ー匂坂晃にとって呪術師だけの世界など至極どうでもいいことなのだ。
彼女の双子の兄、匂坂千春をこの手で殺せればそれで充分。
夏油の事は男として愛して居るが同時に畏怖の念を振り払えないのである。
いつ捨てられるかという恐怖、兄に執着する私へを哀れむ視線。
考えただけでも億劫だ。
晃が思考を巡らせてる内に式神は屋根に降り立つ。
気配を察する為に瞳を閉じれば薙原の家の者とは異質の呪力を感知する。
だが攻撃はしない。
あくまで偵察が目的だから。
呪力から察するに晃に一番近しい恐らく千春のものだろう。
「嗚呼、なんてわかりやすいのかしら兄様…。」
翡翠色の瞳をにいっと釣り上げてクツクツ喉で笑う。
その姿はさながら悪魔のようだ。
おっといけない、屋敷の出入りを見張っていないと。
10分門の方を見ていると晃と同じ黒髪の男が出てくる。
「…ったく、傲慢な爺さんだ。
ちょっと次代党首の顔を拝みたいって言うだけなのに。
先生に報告どーっすかな。」
ガシガシと頭をかく男。
月明かりに反射する翡翠色の瞳は見覚えがある。
晃の兄、千春だ。
見つからないようにとの事だが兄の事は愛憎渦巻く感情を抑えられず呪霊を召喚する。
「さぁ、お兄様。頑張ってくださいね。」
そう言って呪霊を放つ。
帳を下ろして晃は笑み深く踵を返した。
【続く】

〜オマケ豆知識〜
匂坂千春の好きなおでんの具はがんもどきと卵。
居酒屋のおでんより下町の橋の下に有るような屋台のおでんやさんが好き。


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