トントン拍子にB級まで上がり三毛島さんのスカウトによって部隊を結成。

オペレーターは国近さんの紹介で小湊千聖という子を迎えた。

迅さんに手取り足取りスコーピオンを仕込まれた。
B級に上がりたての頃は構ってくる彼に対して随分反抗的だった。
それもそのはず、私は人間不信な時期真っ盛りだった。

三毛島さんに狙撃とシューターの技術を学び一安心。

だが、その後、地獄のような模擬戦による模擬戦という体で覚えろという熱血論な特訓によりまともに戦えるまで成長し、私は三毛島さんの事が少し苦手になった。

特訓の成果もあり、機動と幼い頃から習っている柔道を生かした近接寄りのオールラウンダーとして活躍する日々。

無事、B級ランク戦をパスして晴れてA級下位の部隊となった。

迅先輩のことは感謝しているがまだ彼を完全には信用していない。
だが、その考えを一新する出来事があった。
それを今から語るとしよう。

あれは、A級としての初の防衛任務に向かう途中、迅先輩に出くわした。
「A級入り、おめでとう。」

ニコニコとぼんち揚片手に話しかけてくる。
「こちらこそ、先輩のおかげでここまで行けました。」

ありがとうございますと頭を下げるとふわりと頭を撫でられる。
『できれば玉狛に引き抜きたいんだけどなぁ。』

ふと彼の思惑が流れ込んでくる。
厄介なSEの所為で口を尖らせていう。
「言いたい事があるのなら口で言ってくださいよ。」
「いや、俺もそれは無意識に思った事だからごめん。」

困ったように頬をかく彼。
意識的な考えと無意識的な考えを区別するのは難しい。

だが、彼が示した未来で悪いことに転がった事はそうそうないからだ。
きっと何かあるのだろう。
これまでも彼に幾度となく助けられたのだから。

「転属の件、相談してみます。それでは、また。」
「嗚呼、またね。
それと今日は頭の上注意したほうがいいよ。」

ひらひらと手を振り見送る先輩。
彼の言葉に一抹の不安を覚えながら作戦室に向かう。

ノックをすると空いてるにゃーという機嫌のいい声が聞こえた。

「失礼します。」

作戦室にはダラダラとソファに寝転がっている三毛島さん。
それに女性向け雑誌を広げて鼻歌を歌っている小湊さん。

「なんかいいことあったかにゃー。」
あくびをしながらいう三毛島先輩。

「なんです、急に。」

私が訝しげに答えると雑誌から顔を上げた小湊さんがニヤニヤという。

「えーだって龍樹先輩なんか機嫌が良さそうな感じだもん。頬が緩みきってる。」

小湊さんの言葉に私は思わず自身の頬を叩く。
別に緩むことは何もなかった。
そう思い己を律する。
「もー、龍樹ちゃんは真面目だにゃ。
それじゃ、今日も頑張っていこーにゃ。」
「「はい。」」
元気よく返事をして本部から出る。
三毛島さんと私は禁止区域に入って大きなゲートを見つめる。
「「トリガーオン!」」
換装姿でスコーピオンを出す。
敵はバンダー3体、バムスター4体。
相手にとって不足はない。

「にゃーは援護するから龍樹ちゃんはガンガン攻めるにゃ。」
「雛菱、了解。」

片手にスコーピオン、片手にアステロイド。
私の持ち味は機動力だ。
攻撃力がない分、スピードで何度も切りつけ粘り、勝ちをもぎ取る。
途中誘導するためにイーグレットで牽制する三毛島先輩に感謝をしながら相手の間合いに突っ込む。
そして弱点である一つ目を斬りつける。
一回で足りないないなら二撃目を。
10回試して倒せないのなら空いた左手で至近距離アステロイドを撃つ。
それでも足りないのならゼロ距離でメテオラを打っ込む。
トリオン体なら痛みもない、自分を犠牲にしても誰も何も言わない。
自戒の様に曲がりなりにも親友だったあの子が過るのだ。
何故、見捨てたのと。
そんな考えを振り払い、眼前の敵に集中する。
考え事の一瞬の隙を突かれてバンダーの砲撃が腕を掠った。

「しまっ…よくも!」

左手が吹っ飛ばされてトリオンの粒子が飛び散る。
それに気にも留めず、スコーピオンで串刺しに。
ズガンと活動を停止したバンダーが危険区域に落ちた。
「こちら雛菱、任務完了。」
ひと段落ついてインカムで小湊さんに連絡を取る。

「はいはーいお疲れさまでーす。
もうゲートの反応も…ってこの位置!龍樹先輩離れてください!」

小湊さんの焦った指示、だが遅い。
三毛島とは距離が離れてしまって援護が期待できない。
私が気付く前に頭上にはぽっかりとゲートが開かれていた。

「ふーん、やってやろうじゃない。」

好戦的に空を見上げてトリオンが漏れる腕を抑える。
こうすることによってトリオン漏れをある程度抑えることができるのだ。
ゲートから出てきたのはモールモット数体。
相手にとって不足はない。
だが、片腕がないのでトリオンも残り少ない。
彼が別れ際にいった「頭上注意」とはこのことかと苦笑いする。
だがここで引くと禁止区域をはみ出す。
意地でも止めなきゃならない。
「ここから先は一匹でも通してたまるものか!」
スコーピオンで目を潰し、アステロイドで脚を壊す。
救援を待てという小湊さんと三毛島さんの通信は無視をする。
ここで私がベイルアウトしたら終わりだ。
脚を*いだモールモットを見下ろしながらとどめを刺そうとスコーピオンをふりかざそうとした瞬間、後ろに殺気を感じ振り返る。
振り向くがとっさの反応にワンテンポ遅れ動揺が隠せない。

「シールド。」

間一髪、シールドで攻撃を防がれる。
まるであの日のようだ。
青色のジャージをはためかせ、スコーピオンで一撃。
私の師匠であり先輩である迅さんがモールモットの上で笑っていた。

「大丈夫?
まーた無茶したでしょ。」
「ありがとう…ございます。
ですが…。」
「でもも、だってもないよ。
トリオン体でもベイルアウトがあるとはいえ、その自己犠牲はいつか身を滅ぼすよ。」

まるで私の考えを全て見透かしたようなセリフ。
私と彼の間を風が攫う。
はためく私の髪と彼のジャージ。
図星だった。
悔しくなり、下を向いて拳を握る。

「あたしは裏切られることが怖いから…。
それなら最初から一人でいた方が…
私が一人で頑張れば一人でも多く救える違いますか?」

あーうん、という困った声が降ってくる。
迅さんはモールモットから飛び降りて私の目の前まで歩み寄る。
そして、いつものように頭を撫でた。

「一人で頑張っても救える範囲は少ない。
だから仲間がいるし龍樹が思うほどボーダーは怖い人、いないし俺もいるからね。」
「…その言葉、本気で信用しますよ?」
あたしがそういうと彼はおどけたように笑う。

「嗚呼、実力派エリートの名にかけて保証するよ。」
彼の考えを読むと嘘偽りがないことがわかる。
この人といると妙に調子が狂う。
ずっと頭を撫でられてるのが恥ずかしいので手を払いのける。

「いい加減にしてください。
それと、一つだけ約束してください。」
払いのけたことにわざと痛い痛いと手を抑えながら彼は問う。
トリオン体だから痛くないはずなのに。

「ん?何?」
「先輩も苦しいなら苦しいと素直に言ってください。
悲しいなら悲しいと。
後輩として愚痴ぐらいは聞ききます。」

あたしは彼がこう問い詰められることが苦手だと深層心理を読み取った。
暗躍し続けている彼にとって弱みを握るというのは余り良くないと思うが私なりの意趣返しだ。

「参ったなぁ。
龍樹のサイドエフェクトは相性が悪いと常々思ってたけど…わかった。
どうしてもって時は俺からいうから勘弁して。」
「わかりました。」
そう言ってインカムで回収班に連絡して事なきことを得た。
帰る途中、妙にご機嫌な先輩に手を引かれて本部まで行く。
伝わってくる考えは「後輩が素直になってくれて嬉しい。」とか夕飯の買い出しのことばかりだ。
離してくださいと言っても聞かないしベイルアウトと叫ぼうものなら口を手で塞がれる。
渋々、トリオン体を解除して彼と帰り道を歩く。
どうやら意地でも一緒に帰りたいらしい。
「…先輩、私を使って遊んでますよね?」
「うん、無茶した罰。」
ほらやっぱり嫌な予感はしていたし何か無意識化でモヤモヤと良くない考えは読めていた。
なのに何故、逃げなかったのか。
その考えも彼の言動も嫌いじゃないとはいえ突発過ぎる為だ。
考えるよりも見えた未来についての対策が多い彼の考えは読みにくい。
思慮深い風間さんや動物的な勘を無意識化で処理している太刀川さんとかは読みやすい。
だから私はこの人が最初は苦手だった。
サイドエフェクト同士相性が根本的に悪いのだ。
だが、彼の行動でこうして助けられたのはこれで二度目。
そして、この日を持って私に訳のわからない感情が生まれてしまった。
この感情を煩わしくも捨てきれない自分に呆れながらも日が暮れていく。


オマケ
本部に仲良く手を繋いで帰ってきた雛菱と迅はそのまま食堂でお茶をすることに。
その様子を三毛島と太刀川が見ているとも知らず。
三毛島は太刀川の勉強を見る代わりに好物である食堂のアップルパイを奢ってもらう約束だ。
最初に迅達に気がついたのは太刀川だ。

「おー、迅…もがもが…な、何するんだよにゃー先輩!」

声をかけようとした瞬間、三毛島が彼の口を押さえて黙らせる。

「しーっだにゃ。
たっちん、たっちん、それよりあの二人あんなに仲よかったっけ?」

小声で顔をしかめていう彼女に太刀川は首をかしげる。

「さぁ?師弟子関係だからあんなの普通じゃないっすか?」
「んもう、たっちんは鈍ちんさんだにゃ。
アレはラブの香りがそこはかとなくするにゃ。」

キランと効果音がつきそうなくらいのドヤ顔をする三毛島。
ラブという事はあの二人が付き合ってるということになる。
だが、今の今まで、寄らば切るという雰囲気を醸し出していた雛菱がどことなく柔らかい雰囲気なのだ。

「確かに…なくはない…。」
「そうだにゃ。あの二人がくっつくのはにゃーにとっては面白いんだがにゃ。
龍樹ちゃんはたっちんよりも鈍ちんさんだにゃ。
何も考えてにゃい可能性が高いにゃ。」

二人して他人の恋路をあーだこーだと言っていると、
呆れたため息が降ってくる。
恐る恐る上を向くと呆れ顔の風間が腕を組んで立っていた。

「げっ、か、風間さん!」
「にゃー、そーたんごきげんうるわしゅー。」

冷や汗をかく太刀川と対してなんだ詰まらんと三毛島は机に突っ伏す。

「二人とも、忍田さんに勉強をしていると聞いたが…酷い有様だな。」

真っ白なノートを見つめながらもう一度ため息をつく風間。
そんな彼に悪びれる様子を見せない二人。

「だって、たっちんが…。」
「話を振ってきたのはにゃー先輩だぞ。」

二人とも自分は悪くないと言い合いをし始める始末。
喧嘩両成敗と言わないばかりに風間は二人の頭を軽く叩く。

「こんなところで言い争うな!
見てやるから二人とも反省しろ。」
「…はい。」
「…にゃー。」

渋々と言った態度で二人は頭を抑える。
迅と龍樹はと思い二人は振り返るがすでに時遅し。
席には誰も座っていなかった。

してやられたと二人して舌打ちをし、聴いているのかと風間の怒り声に二人は身震いするのであった。

To be continued
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