アングレカム:祈り、いつまでもあなたと一緒。
冬の花、アングレカム。
私の家の玄関にそれは飾られて居る。
母が好きだった花、でも彼女はいない。
父も時たまにこの花を飾っては乾いた笑いをこぼす。
花言葉は祈り、いつまでもあなたと一緒。
なんて皮肉な言葉なんだろう。
仕事人間である父に嫌気がさした母は突然いなくなったというのに。
その花の輪郭をそっと指先でなぞる。
「…こーちゃんと私はいつまで一緒に居られるんだろう。」
捨てられるのが怖い。
愛の誓いは絶対ではない。
グルグルと嫌な思考が頭を駆け巡りヘタリ込む。
息が苦しい、体の力が抜ける。
助けを乞うにも私以外誰もいない家には無駄なことだ。
それでも手を伸ばす。
「何してるんだよ!」
扉がいつのまにか開いており、そこには愛しい彼の顔。
心配そうに眉をひそめて柔らかく私を抱く。
その力は力強くも暖かい。
「こー、ちゃん。」
インターホン鳴らしても出てこないから心配したと彼が言い、背を撫でる。
「な、何でもないよ。」
平然を装い、名残惜しくも彼から離れると困ったように笑う。
「俺はそんなに頼りないか?」
「違うの、ただ …。」
「ただ?」
「幸せになることが怖いよ。
この幸せがいつまで続くのかって不安になっちゃうの。
こーちゃんと一緒にいることが一番の幸せなのにこーちゃんがいなくなってしまうことを考えてしまう自分が許せない。
それなら一層の事「千聖、よく聞いてくれ。」こーちゃん?」
私が幸せを拒絶しそうになると大きな手が頬を包み込んで上を向かせる。
「大丈夫だ。どんなことがあっても千聖を見捨てない。それだけは約束する。」
そんな誓いを立てても絶対にはならない。
わかっているけど私にはその言葉一つで酷く安心するのだ。
わあわあと泣き出し、彼の名前を呼んで縋る私を優しく再び抱きとめる彼。
私に戦う力も立ち向かう精神もない。
だけどつなぎとめておくだけの関係はある。
幼馴染から恋人という雁字搦めの縁になった。
側から見れば可愛らしいカップルに見えるのだろうか?
傲慢で欲張りな私はきっとバチが当たるんでしょうね。