※捏造中学生時代(仲違いする前)
「よし、できた。」
今年のバレンタインは受け取ってもらえないだろうと見越して彼のお姉さんとお兄さんにお世話になりましたココアクッキーを作る。
四人分のラッピングされた包みを紙袋に入れるときはドキドキしたがこれもお隣としての交流の一環だと言い聞かせた。
『…はい、どちら様?』
インターホン越しに不機嫌な焦凍君の声が聞こえて少しだけ安心する。
「隣の水無月です。
渡したいものがあって今いいかな?」
『…親父になら事務所にでも送れ。』
「ち、違うよ!焦凍君に作って来たものがあってねその…受け取ってほしいなって。」
取り繕う様に言葉を矢継ぎに話すがちゃんと伝わっているだろうか?
『はぁ、わりぃ勘違いしてた今開ける。』
しばらくして、申し訳なさそうな顔の彼が戸の隙間から覗く。
私は彼の境遇を知ってるからこそ今はこの距離で精一杯想いを伝えたい。
だからこれもその一歩だ。
「こんにちは、これ、バレンタインの贈り物。
いつもお世話になってるから、お姉さんとお兄さんで食べて。」
「…ああ。」
「それじゃ、また学校でね。
お返しとか別にいいから。」
小さく手を振って別れを告げると手を掴まれ引き止められる。
「待てよ。上がって茶でも…。」
追い縋る様な瞳で私を見る彼。
でも知っているその瞳は私を見てないことも。
ここで彼を拒絶して見せることは簡単だその手を振り払えばいい。
だがそんなことは友人としても好きな人としても水無月雫という人間には出ないことだった。
「わかった。お言葉に甘えようかな。
お邪魔します。」
本当は良くない兆候だとわかってる。
けれども今はただ、ぬるま湯の様なこの関係が心地いい。
さて、今日は何の話をしようか。