「太刀川さん…いつになったらこいつは目を覚ますんでしょうね。」
出水の重苦しい声が病室に響く。
その問いに太刀川は黙ったまま俯いた。
ピッピッと心電図の音が機械的に響き、僅かながらに上下する胸が生きている証拠だ。
出水の幼馴染は下校途中に子供を庇ってモールモッドにやられた。
イレギュラーゲートによる偶然の出来事。
迅でさえ防ぎようがなかったと語る。
何でも彼女は玉狛に所属しておりながら通いだったらしい。
「俺が目を離さなければ…。」
そう嘆く出水の肩を抱く国近。
誰も慰めようがない。
三毛島隊も見舞いには来たが席を外してもらっている。
彼女は死んではいないが生きてもいない、所謂植物状態だと聞く。
「なぁ、千聖。
俺、まだ伝えてねー事たくさんあるんだよ。
お前とやりたい事たくさんあったのに…何で…何で。」
泣き喚く出水に太刀川は力任せに立ち上がらせる。
「立て出水。
黙って聞いてりゃ女々しい事をぐちぐちといっても何も始まらないだろ。」
「た、太刀川さん…。」
「今は悲しいだろうが愛してるんなら立ち直れ。
腑抜けは太刀川隊に必要ない。」
それは最もな言葉だった。
だが三輪の様に憎しみに全てを費やすほどできた精神は持ち合わせていない。
「…わかり、ました。」
「太刀川さんその辺に、いずみんだって悲しいんだよ。」
庇うように仲裁する国近。
だが出水は目の前の愛する恋人を失うよりも辛い現実に打ちのめされている。
「ほら、行くぞ。」
「行くってどこにですか?」
太刀川隊の名アシストがいなくなってしまったら成り立たない。
有無も言わさず本部に向かい『小湊千聖』の記憶だけ処理を行った。
辛いなら決して仕舞えばいい。
それが彼のためにも三門市のためにもなる。
たとえ忘れても二度と会えないわけではないんだ。
*
あれから憑き物が取れたように出水は元気に振舞ってる。
だが、彼女は一向に目覚めの兆しはなく、とうとう父親も維持費をかけるより娘をより良い未来のためにドナー提供へと踏み出した。
三毛島隊は反対をしたが父親の権限により、一人の少女の命は失われ、彼は踏み出す。
誰も知らない誰も報われない二人の終焉。