※春休み入ってる設定です。
来たるホワイトデー当日。
三雲修は悩んでいた。
露乃のお返しについてだ。
例年通り、母の作ったクッキーでいいかと思いラッピングをしていたら母から一言。
「修、今年だけは自分で露乃ちゃんへのお返しを考えなさい。」
ぴしゃりとそう言われてクッキーを取り上げられる。
「な、何で?」
「あなたは気がついてないかもしれないけれど、露乃ちゃん、ここ最近、修のためにって私にお料理を習いに来たりしてるのよ?」
「へ、へぇーそうなんだ。」
嬉しい様な恥ずかしい様な汗がでて頬を伝う。
「千佳ちゃんもいい子だけど露乃ちゃんもいい子ね。お母さんって呼ばれても悪くないわ。」
話が飛躍し過ぎだと反論したくなるがうまく言い返せない。
だが、露乃の事を意識せざる終えないのは確かだ。
「全く、そんなに悩むのなら花束を突きつけて愛の告白くらい出来る度胸を持ちなさいな、いったい誰に似たのかしらね。」
「こ、こく、告白だなんて…。」
息子の慌て様にクスクスと笑い、花屋の名刺を渡す。
「冗談よ、でも、あの子は素直で可愛いから誰かに取られちゃうかもねぇ。
ちゃんと捕まえておきなさいよ修。
取られたくなかったら行動して見なさい。じゃあお母さんはお買い物に行ってくるから後はあなた次第よ。」
そう言ってエコバッグを持つ母はやけにご機嫌だったと彼はいう。
「行動に移せ…か。」
名刺に書かれた場所は三門市では結構有名な花屋だった。
*
いらっしゃいませーと女性の声に出迎えられて修は萎縮する。
こう言った店にはあまり馴染みがない。
結局のところ、母の言う通りに花屋に向かい、花束を送る事に決めた。
色とりどりの花を見ていると店員が声をかけてくる。
「何かお探しですか?」
「い、いえ、その、ホワイトデーのお返しに花束を送りたくて。」
顔中の熱がカッと集まる。
きっと赤くなっているであろう顔を見られて恥ずかしさに俯く修。
「それならカーネーションとかいかがでしょうか?」
スッと店員はピンク色のカーネーションを差し出す。
「カーネーションって確か母の日とかに送る花ですよね?」
「感謝を伝える花なんですよ。他にもアネモネとか可愛らしくてオススメですよ。」
ピンクのカーネーションの隣に赤いアネモネを刺すと色のまとまりからか明るい花束のイメージがまとまっていく。
「じゃあそれで。
あまり花とかには詳しく無いんでお願いします。」
「かしこまりました。他にご要望の花やメッセージカードはご入用でしょうか?」
確かにカーネーションとアネモネだけじゃなんか物寂しい。
そう思って辺りを見回すとピンク色のガーベラが目に入った。
「これ、追加でお願いできますか?」
「ガーベラですね。結構花束で人気なんですよ。メッセージカードはいかがいたしますか?」
サンプルを見せられてオレンジ色の可愛らしいラメの入ったカードが露乃のイメージと重なる。
「このオレンジ色のやつで、メッセージは書きます。」
「はい、ではラッピングはこちらでお包みしますね。」
カードを受け取ってペンを貰う。
いっぱい伝えたい事があるけど先ずは感謝の気持ちを綴る。
『いつもありがとう。』
これだけじゃ物寂しいが他には何を伝えようか?
(…雛菱の笑顔は見てて安心するしそのことを書くか。)
『雛菱の笑顔に元気をもらってる。』
これでいいかとカードを渡して会計を済ます。
予算より若干オーバーしてしまったが大輪の花たちがとても可愛らしくまとめられたピンクの花束を持って雛菱家へ足を進める。
*
インターホンを鳴らすと明るい返事が聞こえて来る。
『はーい、雛菱です。
どちら様でしょうか?』
「三雲だけど今ちょっといいか?」
『ちょ、ちょっとだけ待っててね!すぐ用意するから!』
ドタンバタンと慌ただしい音が聞こえた後、露乃が出てきた。
「お、お待たせー。」
「慌てなくても良かったのに。
それと…これお返し。」
ふわっといい香りをさせて花束を露乃の眼前に出せばこげ茶の瞳が大きく見開かれる。
「えっえっ、ありがとう!
嬉しいよ修っち!」
花束ごと抱きつけば後ろによろけだが踏み止まる。
「おっと、花は小まめに水を変えれば長持ちするって聞くから大事にしてくれ。」
「うん、うん、絶対大事にする。本当に本当にありがとう。」
両手いっぱいの花束に嬉しそうな彼女の笑み。
名前で呼ぶのはまだ照れ臭いがこの気持ちにそろそろ名前がつきそうな予感がする。
カーネーション(ピンク):女性の愛、美しい仕草
アネモネ(赤):君を愛す。
ガーベラ(ピンク):感謝、思いやり、希望、常に前進