ホワイトデーのお返しといえば飴やチョコが好まれると聞く。
だが、少しでも彼女の心に残るものをプレゼントしたい。
姉さんと買い物に行ってあれこれと悩む。
「焦凍、こんなのどう?」
姉さんが見繕ってくれたのは可愛らしい猫柄のマグカップ。
そういえば、あいつ、ココア飲むの好きだったもんな。
だが、自分一人で選びたいと申し出をやんわりと断り、雑貨屋をぐるりと一周する。
「…おっ。」
髪留めのコーナーに差し掛かった時、俺はふと顔を上げた。
何気なしに見た白と濃紺のストライプのシュシュに目が止まる。
それを手にとって何気なしに眺めてみた。
あいつの髪は長いし、これからヒーローを目指す上で邪魔にもなるだろう。
切ればいいと思うがあの綺麗な髪を切って欲しく無いという俺もいる。
だからこそこれが一番贈り物としていいのでは無いのかと会計へと足を進めた。



ホワイトデー当日、A組男子はお返しに追われたり女子が友チョコのお返しをして合っている。
水無月も水無月で耳郎と菓子を交換しあってるらしい。
「ちょっといいか、水無月。」
「轟君どうしたの?」
いつも通り、不思議そうに小首を傾げる彼女。
「この間の…その、返しをしたい。」
気恥ずかしくなって視線を泳がせると優しく手を包まれる。
「うん、いいよ。いこう。」
行くとはどこにと口を開こうとしたがグイグイと手を引かれて廊下に出る。
後ろから頑張れよ轟という言葉が聞こえたが何を頑張ればいいのだろうか。
廊下を突っ切り空き教室に入り向かい合う。
「…ここまで行かなくてもいいと思うぞ。」
怪訝な顔でそう答えると水無月は呆れた顔で言う。
「焦凍君って突拍子も無いこと言うから。」
「それは…。」
お前を大事に思ってるからなんて今は言えない。
「言い訳なら聞くけど。」
「何でもねぇ。そんな事より、これこの間の礼だ。」
ラッピングされた包みを渡すと彼女は嬉しそうに礼を言う。
「ありがとう。家に帰ったら開けるね。」
できればここで開けて今すぐつけてくれてもいいと言うと。
「それはやっぱり悪いよ。
楽しみが減っちゃうから。じゃ、帰ろ。」
再び、手を引かれて教室に戻り家路へ着く。

次の日、一纏めに留めた髪に俺が選んだシュシュが使われていたことに気をよくする。
耳郎と談笑して居る水無月は俺の視線には気がついて居ない。
「雫、いいのつけてるじゃん。」
「あっ、これは…。」
不意に振り向いた彼女と目が合いドキリと心臓の音が鳴る。
「なに黙り込むってことは…。」
耳郎の勘繰りに顔を真っ赤にして反論する水無月。
「違う、違う。これはお返しだから。」
そう照れ笑う彼女に察したのか今度は耳郎がこちらへ振り向き口パクで何かを伝えてきた。
(受け取ってもらって良かったじゃん。)
急に気恥ずかしくなってあいつらから目をそらす俺。
きっと顔は麗日を相手にして居る緑谷よりも赤いだろう。