「太刀川さーん。三鶴城君の好きなもの知ってるー?」
呑気にパズルゲームをしながらいうと餅を焼いてた彼が顔を上げる。
「エロ「エロ本以外で。」ちぇっ、エロ本あげときゃ男はだいたい喜ぶと相場が決まっとんだよ、なぁ、出水。」
「ちょっ、こっちに振らないでくださいよ。」
嫌そうに出水が顔を歪める。
今の太刀川じゃ当てになりそうにない。
そう思い、国近はくるりとキャスター付きの椅子で出水の方向に向き直る。
「いずみんはもらって嬉しいものとかある?」
出水は暫く考えた後に口を開いた。
「んー柚宇さんからもらうものならあの人、喜びそうっすけどね。」
「むぅ、それじゃあダメなんだってば。参考にならないから本人に聞いて来るー。」
「おうおう、聞いてこい。」
「ちょ、太刀川さん煽らないで。柚宇さんも自暴自棄になっちゃダメだから。」
頬を膨らませて出て行く国近を見送る二人であった。
*
防人支部まで地下道を歩いて行く。
防人支部とはボーダー隊員との争い事や遠征などを基本的に好まずだがネイバーに対しては絶対的な防衛を主とする支部である。
支部の廊下を通って三鶴城隊のネームプレートを探す。
「あった。こーんにちはー!
三鶴城君いますかー?」
トリガーをかざしてドアを開けるとポカンと呆れている三鶴城君と目が合う。
「へ?な、何で国近ちゃんが。」
「えへへ〜、ホワイトデーのお返し何がいいかなって直接聞きに来ちゃった。」
そうお茶目に言う国近にドギマギと赤くなる三鶴城。
(な、何意識しちゃってるんだ俺!別に彼女はお礼がしたいだけじゃないか!)
勘違いしそうになる思考を止めたくて手を思いっきりつねる。
「何してるの?」
「べ、別に、ううん、何でもない。
何でもないよ。で、お返しの話だったね。俺は国近ちゃんにもらうものなら、何でもいいよ。」
「むぅ、何でもは禁止〜!」
ポカポカと俺の胸を叩く国近ちゃんは可愛いが少しだけ痛い。
「そうは言ってもなー。あっ、じゃあ国近ちゃんが読んでる本を貸してよ。
俺本が大好きだからさ。それでいいよ。」
国近は小説よりも漫画や雑誌を読む方だ。
だがこの隊室には図書館の様に所狭しと小説が並んでいる。
「えっと…その、漫画とか読む?」
歯切れの悪そうに問うと三鶴城は優しく目を細めていう。
「最近は読んでなかったなぁ。
国近ちゃんが面白いって思うなら読んで見たいなぁ。」
「う、うん!じゃあいっぱい持ってくる。」
その後、ホワイトデー当日に紙袋いっぱいの漫画本を抱えて右往左往している三鶴城が本部で目撃されたとかされてないとか。