幼馴染兼彼女だと、長い付き合いで互いの好みやマイブームも大体わかる。
わかるのだがこうも毎年毎年お返しに悩むとは中々辛い事だ。
「えーっと、去年は柚宇さんからオススメもらったお菓子だし一昨年は姉貴から教えてもらった香水だし。」
うんうん唸ってラウンジで考える。
「よーっす弾バカ!」
「弾バカいうな!」
「何そんなに悩んでんだよ。」
ケラケラと米屋が俺の前に座る。
「いや…な、千聖に今年のお返しはなんにしようかと。」
真剣に考える俺がそんなに珍しいのか再び吹き出して米屋は笑い飛ばす。
「ははは、何難しい事考えてんだよ。
大体幼馴染ちゃんが好きなものお前は知ってるだろ。」
「あいつの好きなもの…好きなもの…。」
確か音ゲー、タピオカミルクティ、ファッション雑誌だったような。
「うーん、ほぼ全部過去にあげたような。」
腕を組んで余計に考えがこじれる俺を今度はキョトンとした顔で米屋が見てる。
「ちげーって、そういうのじゃなくてもっと単純にお前のことが好きなんだろ?
だったらプレゼントは俺くらいの度胸で行ってこい。」
「はぁ?正気かよ槍バカ!」
俺の叫びがラウンジにこだまする。
その叫びに注目を集めてしまったので顔を真っ赤にして座り込む。
畜生、相談すべき相手じゃなかった。更に追い討ちをかけるように緑川がひょこひょことこちらへやってくる。
「なになーに、よねやん先輩といずみん先輩なに揉めてるの?」
「み、緑川…。」
「よーっす、緑川、弾バカが幼馴染ちゃんのお返しに悩んでる所に相談に乗っているだけだ。」
にやっと緑川は生意気に笑うとその話乗ったと行って米屋の隣に座る。
「いずみん先輩ってさ、難しく考えすぎなところがあるよね。
合成弾作るときもあれこれ考えたの?」
緑川の問いかけに俺はハッとする。
思い悩んでいたことがバカらしくなる。
好きなやつと同じ時間を共有できるなら彼女も一番喜ぶはずだ。
「おっ、いい顔になってきたじゃねーか。」
「おかげさまでな。
緑川、ありがとな。」
緑川に礼を言って席を立つ。
後ろから俺に何か礼は?と聞こえるが無視した。
*
デート当日、姉貴に見立ててもらってシンプルな服装であいつの家まで迎えに行く。
インターホンを鳴らすと間をおいて返事が返ってくる。
『はーい、小湊です。』
「おはよ、千聖。」
俺が挨拶するだけで嬉々として戸を開けて飛びついてくる千聖。
可愛い奴めと撫で回すと余計にすり寄ってくる。
「こーちゃんこーちゃん!
会いたかったよー!」
「ははは、落ち着け、落ち着け。
それじゃあ行こうか。」
朝の抱擁が終わり、手をつないで仲良く歩く。
単純だけれどもこの時間が今一番楽しい。
それだけで何も必要ないじゃないかと改めて隣にいる彼女と目が合う。
「あのね、こーちゃん。
ホワイトデーのお返しなんかよりこうして隣にいるだけで嬉しいよ私は。」
「ああ、俺も楽しいよ。」
セットしたであろう千聖の明るく柔らかな髪を撫でてやるとくすぐったそうに目を細める。
何気ない幸せってこういう事なんだなと再確認する。