「これはどういうことか双方の意見を聞こうか。」
会議室に根付さんに呼ばれて早数分。
プリントアウトされたSNSの記事に目を通す。
そこには俺と佐城さんが仲良く手をつないでいる姿と共に有る事無い事が書かれていた。
「…やましいことは何もしてません。」
佐城さんが前へ出て意見をする。
「…佐鳥隊員。
君からも聞こうか。」
「は、はい。
俺と彼女は帰り道に寄り道をしただけです。」
彼女のように真っ直ぐ前をみて言えない。
少なくとも俺は彼女のことを好いている。
彼女はどう思っているか知らないが、下心がなかったとは嘘は言えない。
「双方の証言を信じよう。
だが、今後、こういう行動は慎むように。」
二度はないぞと念を押され、厳重注意で終わりほっと胸をなでおろす。
その日は解散となった。
*
次の日から連絡することも減り、俺も寂しさを感じながらも日常へと戻っていく。
広報のスケジュールのミーティング後、ぼんやりと薄れゆく彼女との記憶を思い起こす。
終始、絢辻さんに心ここに在らずですねという指摘を受けたりした。
そんなつもりはないのだが、知らず識らず彼女を好きでいたんだなと寂しさを感じる。
「どうした佐鳥?」
嵐山さんが顔を覗き込んでくる。
彼くらい自信があって行動力があればなぁ。
「なんでもありませんよぉ〜!
佐鳥は元気です!」
いつも通りに振る舞うが余計に無理をするなと言われてしまう。
「佐鳥、無理して元気を出さなくていいんだ。
俺に話しにくいことなら友達とかに話してみたらスッキリするかもしれないぞ。」
嵐山さんの優しさはとても嬉しい。
だが、これは俺の問題だ。
もやもやと考えているととっきーが鶴の一声を言う。
「悩んでるのもいいけど外にお客さん待たせてるよ。」
隊室の扉を開けると佐城さんが立っていた。
「お話があってきました。
お時間よろしいでしょうか?」
面と向かって俺にいう彼女の目は何か固い決意のような物を感じ取り、ゴクリと生唾を飲む。
「い、いいですよ。」
上ずった声で答えると屋上へ行きましょうと手を引かれる。
もしかしてこれはもしかしなくてもこれは。
だが、城戸司令に先日厳重注意を受けたばかりだ。
足取り重く二人して屋上まで登る。
屋上はしん、と静まり返って余計に緊張感を感じる。
髪が風に攫われ彼女の色素の薄い髪がキラキラと舞う。
「佐鳥さん。」
凛とした声が俺の背を正す。
「佐城さん…。」
「私、佐鳥さんのことが…。」
そこで待ったをかけた。
俺らしくもない。
女の子から告白されるなんて夢に見た瞬間だ。
だけれどもこういうのは俺から言わせて欲しい。
「佐城さん!」
「は、はい!」
「貴方のことが俺は…俺はずっと前から…好きです!
だから!付き合ってくださーーーい!」
言った瞬間とともに懇願するように頭を下げる。
言い切った。
言ってしまった。
後悔はしていない。
コレで違うことだったというオチでもいい。
この一ヶ月間、モヤモヤとした気持ちにケリをつけられる。
「えへへ、先に言われてしまいましたね。」
花がほころぶ様に彼女は明るい声で言う。
それは告白を受け取ったと言う解釈でいいのだろうか?
俺が顔を上げると愛おしそうに微笑む彼女がいて心臓が早鐘を打つ。
「改めてお答えします。
佐鳥さん…いえ、賢さん、私もお慕い申し上げます。」
「…夢じゃないよね?」
「はい、夢じゃないですよ。」
手を握られる互いの熱で汗ばんでいるが気にもならない。
目の前の好きな人から好きだと言われて実感が湧かない。
喉の奥からひりつく声が出てくる。
「い、イャッター!
やった…やった。
本当にありがとう。
こんな俺だけどよ、よろしくね。」
「はい、あ、私のことも理沙と呼んでください。」
「う、うん呼ぶよ!理沙ちゃん!」
「はい、賢さん。」
気がすむまで互いの名前を呼び続けていると急に咳払いが聞こえて振り返る。
気まずそうな嵐山隊一同がそこにいた。
「全く、佐鳥先輩はTPOというものを弁えてください。
叫び声が階段まで丸聞こえですよ…おめでとうございます。」
嫌味の様にいう木虎。
そんな彼女をとっきーが宥める。
「まあまあ、丸く収まったからいいんじゃないの?
おめでとう佐鳥。」
嵐山さんもニコニコ笑いながら俺の肩に手を置く。
「おめでとう佐鳥!
そして佐城さんも悟りをよろしく。」
絢辻さんもニコニコ穏やかな笑みで祝福の言葉を述べる。
「お二人ともおめでとう。
一時はどうなるかなって心配だったけど良かった。」
みんなから祝福されて胸がいっぱいになる。
嗚呼、俺は本当に幸せ者だな。
「…えっと言いにくいことなんだけど。」
言いにくそうにとっきーが切り出す。
「何?とっきー。」
「何ですか?」
「後、五分で任務なんだ。」
唐突な知らせにさっきまでの幸せな気持ちは何処へやら。
だが、サボるわけにはいかない。
「理沙ちゃん…俺行ってくる。」
「ええ、行ってらっしゃい。」
まるでメロドラマのワンシーンの様に別れるが何を大げさなと貴虎のつぶやきが刺さる。
早く終わらせて彼女との時間を作り出すために俺は駆け足で屋上を降りるのであった。
後日、学校での補修後、空いてる教室にて。
休み時間に惚気を聞かせていると皆んなに微妙な顔された。
「佐鳥、それ何回めだ。」
呆れた様子のコアラとうんうんと頷くとりまる。
「いやーだって俺の可愛い彼女を知って欲しいからな!」
そう答えるとちょいちょいと肩を突かれ振り返るととっきーが窓の外を指差す。
「彼女自慢もいいけど、早く行ったほうがいいんじゃない?」
窓の外を見ると眩しい笑顔で手を振る理沙ちゃんの姿が。
俺は窓を開けて大声で叫ぶ。
「迎えに来てくれてありがとー。
愛してるー!
すぐ行くから!」
バタバタとカバン片手に階段を駆け下りる。
やれやれやっと行ったかというつぶやきは知らんぷり。
「賢さん、今日もお疲れ様です!」
「いやいや、大した事ないよ。
じゃあ行こう。」
仲良く手を繋いで下校する。
この幸せな時間を手放したくないと握った手に想いを込めた。
【END】
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