CCGアドゥシール


ランチから戻ると、平子班は即座に次なるターゲット(喰種)の情報収集へと駆り出した。

「班長」

局を出てみんなで歩き出すと、私は前方を歩いている班長の隣に並んだ。

「班長、さきほどはすみませんでした。道端さんから聞きました、私を探していたんですよね?」
「……?」
「え……」

後方を歩くミッチーを、二人で振り返る。

「……あは」

一番後方にいるくせに、即座に目が合った。
そして、やばい、と書いてる表情のミッチー。察し。

「ウソなの!?」

光の速さでミッチーに詰め寄る。うわーんもうまじ泣き!

「いや、だってさ!希咲ちゃんがあまりにツレないから!班長だったらどうなのかと思って!」

ミッチーが本気で焦り始めてるけど、私だってまじ泣きしてるんだ。

「班長が私をランチに誘うために探してくれてるって聞いて、私うれしかったのに!ヒドイよ!ドMなの!?確認のためにそんなことして!ドMなの!?」
「ちょ、何度もドMドMって罵らないで……あ、でも良いかも……希咲ちゃんもう一回言っ、」
「うわああん!この気持ちどうしてくれるの!班長のバカぁ!」
「班長かよ!俺にくれよ!だが最後は全力で同意!」

まじ泣き二人組。

「……おい、あれ……」
「放っておけ、梅野」

同期同士の根津と梅野は、喧騒を無視してさっさと歩いて行く班長を横目に、二人の先輩に哀愁を飛ばして互いに顔を見合わせため息をつくのだった。

「希咲」
「はい班長!」

班長に呼ばれただけで光の速さで機嫌を直して班長に駆け寄る平子班紅一点の姿に、72期組は今夜はミッチーセンパイを飲みに誘おうと思うのだった。
そして、渦中の平子班長が川瀬希咲一等捜査官を呼んだ理由は。

「希咲はこと戦闘に置いて優秀だ。白単翼章を叙勲された実力は、伊達ではないな」
「えへへ、ありがとうございます。平子班のホープを目指してますから!私頑張ります!」
「平子班のホープか」
「はい!“平子班の”ホープです!」

だから、私はずっと一等のままで良い。出世なんて考えてない。
というものCCGでは、上等になると自分の班を持つことになる。そうなれば、班長とは一緒に居られなくなってしまうから……。

「そうか」

班長が私に優しく笑いかけてくれた。
そんな二人の様子に、ミッチーだけでなく72期組までイラっとしたとかしてないとか。

「……電話だ」

班長のスマホに着信が入った。

「はい。……はい。分かりました」

電話はすぐに切れた。

「希咲」
「はい、班長」
「……」
「……?」

なぜか、班長が言葉を詰まらせるように見えた。私は次の言葉を待ち黙って班長を見つめる。

「……有馬特等がお呼びだ」
「へ?」