CCGアドゥシール


私が有馬班に異動して、早2年。
今日も有馬班は、有馬班らしい任務。私の捜査官としての成長は順調だった。有馬さんのもと、私は確実に喰種捜査官として腕を上げている。そして階級は、私の希望で一等のまま。
平子班のみんなとは、たまにお酒を飲みに行ったりできてる。でも平子班長とは……。
あの日、有馬さんから引き抜きの話の帰り道。

「一体、何を言いかけたんだろう……」

班長は、私に何か言いかけてやめたのだった。班長の、切羽詰まったような、でも何かを押し殺したような、表情。班長は何かを受け入れたようにため息をつくと、私の両肩から、スルリと、あまりにアッサリと。手を離したのだ。
そして、たった一言だけこう言った。

「今回の話は、希咲のためになると思う。俺は応援している。……未来の平子班のホープさん」

私の愛しい人は、私を見つめてそう笑顔で言ったのだ。
私はそれだけを胸にこの場所で日々がんばってる。だから私は捜査官として成長するため、有馬さんのもとで日々精を出すことにしたのだ。絶対、平子班に戻る。S3班としての経験を活かすんだって。
蛇足だけど、私は捜査官の階級は、立派な捜査官に比例するわけじゃないと思ってる。当然、優秀な捜査官なら、後輩指導をするべきかもしれないけど。でも本人が優秀だからって、指導も優秀かなんて、限らないと思うから。……言い訳してる?私は自分に嘘をついて平子班に戻る目的のために我を忘れてる?そんなことない。私は、平子班長を愛してしまってるから。

「希咲!」
「え、きゃあ!あっ…!!」

清光が破壊されてしまった。
お気に入りのクインケを破壊されたショックをすべて込め(戦闘中に考え事した私が悪いけど)、仲間がナイスなタイミングで投げてよこしてくれた予備でターゲットを葬った。

「清光ぅぅぅぅっぅぅっぅううぅっぅぅう」

戦闘が終わると、私は直ぐに破壊され地面に横たわる清光に駆け寄った。

「希咲!」
「有馬さん!見てください!私の清光が!」

平子班長ランチ事件ぶりかのまじ泣きで、有馬さんに清光を見せる。
なのに有馬さんと来たら、

「怪我はないな」

私の無傷だけを確認すると、さっさと私の手を掴んで立たせると、歩き始めた。その勢いで、私の手から大切な清光が零れ落ちる。

「清光ぅぅぅぅっぅぅっぅううぅっぅぅう」
「叫ぶなうるさい」

私は翌日一日寝込んだ。(ただの休日だっただけ)