兵士になる理由


『生きたいなら、巨人に遭遇しないこと』それが世間の常識。巨人に会うすなわち、死。だけど私は子どもの頃から、将来は兵士になると決めていた。

「なるのにもなった後も大変な兵士になって、わざわざ死ぬことないじゃない」

妹はそう言うけど。私は、唯一の肉親である妹を、守りたい。

『100年壁が壊されていないと言うのは、100%安全だと言い切れるのだろうか?』両親が亡くなった時にそう思った。

私たち姉妹は、幼くして両親を巨人によって亡くした。もう奪われたくなかった。

私はいつも恐怖を感じている。壁が壊されるのは、今、この瞬間なのでは、と。

だから、どこに居ても巨人に脅かされることに、変わりないと思う。だから、自分で戦える力を得るため。大切な人を守るため。

兵士になろうと決めた。

「お姉ちゃんなら言うと思ったよ」

妹は、最後まで私の意志に同調することはなく、ついに私の訓練兵志願の日となった。

「私が家を出ると、あなたが一人になってしまうけれど……。でもたった一人の家族であるあなたを守る力が、欲しいの。お姉ちゃんを許してね」
「そんなの今更言いっこなしだよ」

妹の言葉にクスりと浮かんだ笑みを消し、妹を見つめる。

「……ねえ、やっぱり一緒に訓練兵に行く気はない?」
「何度も言わせないで。それより、もう行って?遅れちゃうよ」
「ふふ。どちらが姉かわからないわね」
「ふふ」
「手紙を書くわ」
「手紙だけ?」
「わかったわ、帰るようにする」
「待ってるね」

暫く会うことはできない。会えない分を補うような、妹をぎゅうっと抱きしめた。

両親が亡くなって10年。残されたたった一人の家族である妹に見送られて、私は生家を巣立つ。大切な人を守るために。世界から巨人を根絶させるために。