時刻は夜の中頃。下を向いてシャンプーを洗い流していると、突如バスルームの扉がひらいた。
 ろくに目も開けられないまま後ろを振り返ると、そこには全裸の悟が立っていた。
「ただいまー」
「おかえり」
 私は再び前を向き直して、洗髪の続きを始める。背後では、彼が壁際のバスチェアーを引っ張り、掛け湯をしているようだった。その飛沫が私の背中にはねる。

 なんの断りもなく、私の入浴中に悟がバスルームに入ってくることについて。今回が初めてではない。過去に二犯、三犯と繰り返しており、毎回行われる警告は未だ無視に近い状態である。
 取り調べならぬ対話の結果、彼には『羞恥心』という感情が壊滅的に欠如しているという結論が出た。だから今回も必要以上に驚かなかった。
 しかし、私は明るい場所で身体を見られる事に対して恥じらいを捨てた訳でもなく、ましてや堂々と晒される悟の鍛え抜かれた裸体を見慣れた訳でもない。
 部屋でセックスをする時は毎回薄暗くしてとお願いするし、口や手でしてあげる時も彼のモノを直視するのは、回数を重ねた今でも躊躇う。
 けれどここで照れや含羞を言葉や仕草で表したり、逆に下手に嫌がったり拒否したりすると、性格の悪いこの男はやけに喜ぶのだ。
 以前それをして「じゃあなまえには慣れてもらわなきゃね」と全身くまなく手洗いされて、さらには完全に勃ちあがるまで身体を使って洗わされて、本当に懲りた。
 だから今回は「おかえり」という言葉ひとつに留めておいたのだ。
 さっさと身を清めて出てしまおうと、私は算段をたてる。しかし悟に至っては、洗髪はシャンプーのみでリンスもトリートメントもしない。洗顔も洗身もボディソープで一括となれば、ちまちまと手間を分ける私が追い越されるのはあっという間だった。

「ささ、どうぞ」
 私が身体を洗い終えたタイミングで、先に浴槽の中にいた悟はそんな事を言いながら腕と足を広げた。ものすごく歓迎されている。
 けれど私は全く乗り気でない。身体の大事な部分を腕で隠すようにしながら、彼のつま先側に足をおろし、体育座りで向かい合った。
「きゃん」
 それが気に入らなかったのだろう。すぐさま身体の向きを変えられた。悟の分厚い胸板に、背を預けるような姿勢となる。
「あー癒される」
 後ろから伸びてきた手は、すでに下から掬い上げるようにして私の胸を揉んでいる。小ぶりだからと言って、ふにふにと口に出して効果音をつけるのは虚しいから止めてほしい。
「こんな事されるんだったら、もう出る」
「ちゃんと肩まで百秒つかりなさい」
「ひゃあ!」
 彼の大きな手を振り払って立ち上がろうとしたら、太ももを掴まれてバスタブのふちに膝裏を掛けるようにされた。
 強引に体勢をくずされ、慌てて底に手をつこうとするも、下半身が持ち上げられた事により、先に悟の肩へ私の頭と首の重心が乗る。おかげで上半身は沈まずに済んだ。波打つお湯が、鎖骨を撫でる。
「おっぱいだけじゃ、やる気になってくれないかあ」
「やん!ちょっと!」
 彼が手を緩める事はない。私の身体を知り尽くす悟は、急所を狙うかのように的確にクリトリスを人差し指と中指で挟んだ。力加減もあったものじゃなくて、堪らずあられのない声をあげてしまう。もーばかバカ馬鹿!
 すぐさま脚を閉じようと抵抗を試みたが、今度はバスタブに引っ掛けられていない方の脚を、彼の立てた膝の外側に追いやられて、私は強制的に股を開くような格好になった。
「はは、正面から見たら絶景だろうね。完全防水のカメラ買うから、今度風呂場でハメ撮りさせて」
「絶対に嫌っ、ひいっ、」
 クリクリと指をスライドさせるなんて反則だ。あーもうコレ、いつまで続くんだろう。ていうか先にのぼせそう。
 先程から、私の腰やおしりにツンツンと当たるモノの事は考えたくもなかった。
バスルーム