「えっ、と」
「ちょっとごめんね」
「ん、ふぁっ、……はあはあ」
 どうも気が乗らないのか、あるいはイイトコロに当たらないのか。正常位から体位を変え、いつもよりも反応に乏しいなまえを、胡座をかいた僕の膝のうえに乗せてやる。
 抜けてしまないようすぐさま腰に手を回したが、浮遊感を伴ったようで、彼女の細足も細腕も同時に僕の身体をギュッと抱き込んだ。ついさっきまで離れ離れだった胸板が、隙間なくペタリとひっついた。
 慣れない奥に当たって痛かったのか、なまえは反射的に少しばかり腰を引いたものの、膣内のうねりも呼吸とともに落ち着いてくる。ちょっと浅い気もするが、僕の方もまあ悪くはない。それに小柄な彼女を見上げるのも、たまには良いだろう。
「今夜はなまえが上ね。ちゃんと合わせてあげるから、好きに動いていいよ」
 どうしてと訴えかける涙目に対して、僕は言った。これは罰ではない。ただのしつけだ。



 ほとんど同じ位置でへこへこと腰を揺らすだけのなまえだったが、頬は上気し呼吸も乱れ、先刻僕に突かれていた時よりも明らかに感じている。その最中で、立ちあがった乳首が潰れるくらいギュッと抱きしめたところ、甲高い声をあげて彼女はあっけなく絶頂を迎えてしまった。とんだ誤算である。
「今からこんなんじゃ、僕が枯れる頃にはもっとすごくなってるんじゃない」
 僕の意地悪な言葉に対し、上に乗ったままのなまえは唇を噛み締め、首を横に振った。こういう風に否定するから追い詰められるのだと、彼女はなかなか学ばない。
 未だに絶頂の波から抜け出せないのか、僕が姿勢を正すため軽く動いただけでも、彼女はまた自身の膣内を過剰に収縮させた。刺激にはなるものの、僕の方は出すには至らない。
 潤んだ瞳が何を欲しているのかは分からなかったが、自分がしたかったので首に回されたままの腕を引き寄せて、なまえと唇を合わせた。すると促されるでもなく、上から蕩けるような熱い舌が咥内に侵入し、唾液を送りこむ要領で僕の舌を押し込んだ。おまけに後頭部まで掻き抱くようにされる。本当にとんだ才能だ。
「さとるさんに、してほしい」
 ひと通り堪能し終えたのか、唇を離したなまえは甘い言葉で強請るように僕に言った。身体が動くたびクチクチと鳴る結合部から、彼女もまだ僕を求めてくれていると解釈しても良いのだろうか。
 結局言われるがまま、いつものように僕はなまえを押し倒し、無我夢中になってそこに精を放つのだった。
Beaver moon