その人はそう言って、玉犬と戯れていたときの同じように、わしゃわしゃと俺の頭を撫でた。力任せのようで案外と丁寧で、気持ち良さとくすぐったさの間で俺は目を閉じる。
しばらくすると、その人はそのまま俺を抱き寄せて、先程よりもより身勝手に触れた。頭だけでなく、首すじを通って肩や背中も形を確かめるように大人の長い指がすべる。撫でられているのは俺なのに、まるでそうすることによって、彼女が自分自身を落ち着かせているようであった。
「これから先どんなことになろうと、私はずっと恵を愛してる」
そう告げて、あの人は一度だけ俺をギュッと抱きしめた。すぐに離れて行ったので、俺はその時の彼女の表情は見ていない。
けれどこれを聞いた数日後、あの人が五条悟と婚約したことを俺は知った。
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割り当てられた部屋の狭いシャワールームでは真昼には似つかわぬ、くちゅくちゅという卑猥な音が轟いていた。白濁が指を伝って俺の手首へと滴り落ちる。
「あっ、やだっ……、そこはダメなのっ、」
「……我慢してください」
粘膜との境目が分からなくなっているドロドロの膣内から、別の男の放った精液を掻き出していく。彼女のものと混ざり合って、ほとんど半透明になってきた。
「ゃっ、」
奥の方まで指を伸ばすと、一瞬だけ甲高い声が上がりピクンと彼女の身体が跳ねた。汚れないように、自身で捲り上げるよう指示したセーターの裾を掴む指が震えている。あのとき俺の頭を撫でたものと同じ、華奢で美しい手だと思いたかった。
「ったく……」
「ごめんなさ、ぁっ、」
こんな事はとっとと終わらせたくて、指の本数を増やす。どんだけ出されてるんだよ、と俺はひとり心の中でごちた。
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指を抜きシャワーで自身の腕を洗い流したあと、彼女の下半身にも温水をかける。熱かったのか刺激になったのか、この人はキュッと目をつむった。
あらかた流し終えてシャワーの栓を締めると、俺を見下ろす涙が滲んだ瞳と視線がぶつかる。
「物欲しそうな顔で見ないで下さい」
「……見てないもん」
腕を伸ばし脱衣所からバスタオルを取って、水滴を拭っていく。片方ずつ腰から太もも、そして膝から下へ。あの日とは違い、今日は彼女の方が俺に全てを委ねていた。
「入籍の日取り、決まったんですか」
「まだだけど、どっちが先でもいいって」
拭き取る過程で臍の下をくっと押すと、どこに残っていたのか再び白濁が太ももを伝った。
「絶対孕まないでくださいね」
「うん……」
俺よりも年上のはずなのに、とても頼りのない返事だった。