狭いベッドの中、うつらうつらと舟を漕ぐ私に対し、こちらを覗きこむ彼は問う。
億劫ながらもゆっくりと目蓋を上げると、暗闇のなかで袈裟姿のままの彼と視線が交わった。深夜であっても、漆黒の瞳は変わらない。
「……苦しいよ」
身体をねじって彼に背を向け、私は続ける。
「本当に息苦しい。生き辛い。どこにも行けないし、何にも出来ない」
溢れ出しそうになる涙をぐっと堪え、掛け布団を顔の位置まで引き上げる。
口でなら何とでも言える。実際どこにも行かないのも、何もしないもの、動かないのも。全て私が決めた事だ。いかんせん、何でもかんでも他人のせいにして、出来ない理由を作っている。
「私はどこへでも付いていくし、なまえが何かをしたいのならば喜んで協力するよ。だから苦しまないで」
彼はそう言って、布団の上から私の背中にそっと寄り添った。大きな手で頭を撫でられたと思えば髪を梳き、そのまま包み込まれるように抱き寄せられる。
夏油傑という男は本当に卑怯極まりない。私が意気地なしということを知っているから、この人は口で何とでも言うのだ。
今日も私達は何も変わらないまま、夜が更けていく。