誕生日なんて、気にしたこともなかった。

祝われたところで、それは俺の本当の誕生日じゃねぇし。(つーか本当の誕生日がいつかなんてしらねぇし)








『陣へ happy berthday』

「…なんか間違ってねぇかこれ…」

深夜のラジオの収録から帰ると、キューブは珍しく静まり返っていた。いつもなら誰かしらが起きていて、リビングで台本を読んでいたり、歌詞カード片手にソファに寝転がってるのに。


ふと、ダイニングのテーブルの上にある茶色い袋が目にとまった。紙が添えてあって、それを手にとって見てみると、さっきの『berthday』。

きっとこれを書いたのは湊だろう。ふっと笑った拍子に、肩の力が抜ける。


今日は4月1日。


俺が施設に置き去りにされた日。


子供の頃の記憶は曖昧で、ただ、自分がひたすら泣いてたことしかもう思い出せない。


思い出したくもない、後付けの誕生日。



だけど、こんな風にメッセージカードまで添えられちゃ、な。




「…もう少し勉強しろよ、バカ」


メッセージカード片手に笑う。


名の知れた雑貨屋の名前が書いてあるその袋を見て、どうせふざけたオモチャでも入ってるんだろうと思いながらも。


(祝われるってのも悪くないもんだな)


少しだけくすぐったい気持ちで、俺は袋の中に手を伸ばした。




袋の中身は何だろう。

























「ねぇ湊、この間のオフ、どこ行ってたの?朝から変装して、えらい張り切ってたじゃん」
「あー、あそこ行ってたんだよ!えーっとね、ほら、あそこ!志朗も知ってるって!えーっと…あぁ!ヴィラッジバンガード!!」
「…………もしかしてヴィレバン?」
「そう!そこ!あそこ面白いよな!色んな雑貨あってさー!」
「(………ビラバン………)」



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