長編の孤児院時代の餓鬼リドルの一緒に行動し始めた時期設定







彼女は、実に不思議だ。




「ねえ、トム、見ててね、お花っ」



僕が殺風景な部屋でベットに腰掛けながら本を開けていれば、彼女が不躾にドアを開けそのまま僕に閉じたままの手を見せた。

その様子をチラリと見てやれば、ニコニコとした明るい笑顔で僕に向かって掌を開けて見せる。

彼女の小さな手のひらから色とりどりの花がホロホロと落ちた。


「私、お花を出すのが得意みたい。素敵な魔法でしょう?ふふふ」


そういってバカみたいに僕に笑いかけながら隣に腰掛ける彼女を見ていると、とても不思議な気持ちになる。

この気持ちの名前がなんなのか気になって色々調べたけど分からなかった。


子供の僕にはまだ分からない問題なのだろうか。




「ねえ、トムもやってみる?こうやってね、」


「花なんてどうでもいい」


「トム、トム、どうしてそんな風に言うのよ。冷たいわ」


プクーっと拗ねたように頬を膨らませた彼女をジっと見つめれば頬をしぼませ、次は赤らませて「なあに?」と首を傾げた。



「……君って、僕のこと好きだよね」



どんな反応をするのか見て見たくて、わざと呆れたような声色でそう言えば、彼女はさも当然というような顔で、


「あら、今気づいたの?私トムのこと大好きよ。でも、それはトムも一緒だわ」


「どういうこと?」


「トムも私のことが大好きってことよ」



その言葉に思わず、ハァ?というような怪訝な表情を見せれば、クスクスと笑いながら「そういう顔すると思ったわ」と僕の肩に寄りかかった。


彼女はとても軽くて、甘い匂いがした。



僕も彼女のことが好きなんだろうか。……どう考えてもバカらしく思えてしまってそんなこと、あり得ないと感じてしまう。


好きとか、嫌いとか、僕にはどっちでもいいし、
興味もない。

恋だとか、愛だとかどうしても僕には現実味のない不確かなものとしか思えなかった。


だけど、……


寄りかかってきた彼女が突然静かになったので眠ってしまったのかと視線を寄越せば、

茶目っ気たっぷりな大きく丸い目が僕を上目遣いで見つめていた。



「トム、大好きっ」



そんな彼女を、離したくないのは確かだった。
















花死