立海とシンデレラ
とある街に、とても美しい女性が住んでいました。
その美しい女性は、貴族の娘でとても裕福で幸せな毎日を過ごしていましたが、彼女の母親は死んでしまいその日からというものの、美しい女性は悲しみに明け暮れておりました。
そして、段々と立ち直りだしていたある日のことでした。
自分の父親のジャッカル公爵は、再婚するらしく、三人の女性を屋敷に連れてきました。
「今日から名前の母親、そして姉となるサナダ、ブンタ、アカヤだ。仲良くな。」
「うむ。今日から君の母親となる真田だ。よろしく頼む。」
「うっひょー!でっけえ屋敷!長女のブン太だぜ!よろしくぅ!」
「へぇ、アンタがジャッカル公爵の娘…次女の赤也だ」
継母と、その連れ子である義理の姉。
この三人は、屋敷に住みだした途端、
「シンデレラ〜!このお菓子飽きたからいらねぇ、違うの持ってこいよ!」
「む、ここにもホコリが。ちゃんと掃除も出来んとは…たるんどる!」
「あれっ、ここに置いてあった俺のゲーム………はぁ?アンタが片付けた?……アンタ、あんまり勝手なことすると、潰すよ?」
とても意地悪で、ワガママでした。
おまけに毎日その
そして、いつも掃除をして灰を被っている姿から、皮肉をこめて継母達は灰かぶり姫、"シンデレラ"と名付けました。
そして、そんなある日。
「武道会か。うむ、なるほど。それは楽しそうだ。」
「お母様、武道会じゃなくて舞踏会っすよ!」
「舞踏会ってどんなケーキ置いてあんだろうな!」
珍しく、ドレスを両手いっぱいに持ちながら鏡の前に立って一つ一つ合わせていく継母と姉をシンデレラは見つけた。
(……継母は、駄目だ。)
姉はいい、まだ中性的な顔をしてる。特にブンタの方は。
継母の場合、もう既に大変老けていらっしゃるのに、その顔でピンクのフリフリドレスは…駄目だ。
と、シンデレラは1人大笑いしていると、シンデレラに気づいた継母達は、
「お前は、留守番だな。」
「そんな汚い格好で舞踏会なんか行けねぇだろぃ?」
「ひゃーはっはっは!ざまぁみろ!」
とりあえず、何だかよく分からないけど機関銃のようにすぽすぽと言葉を発したかと思えば、キラキラの格好のまま高笑いしながら馬車に乗って舞踏会へ出かけるのであった。
そして、シンデレラは、1人残された屋敷の中で、寂しく泣く……
『あーあ、疲れた〜!……ぶはっ!ぶっふふふふ!!!!あ、あれはないわ〜!継母のピンクのフリフリドレスは無いわ〜!ぶははははは!!!!!……あ。雑巾、アカヤ姉様のゲーム機の上に置きっぱなしだわ。……ま、いっかー』
泣くわけがなかった。
強かった。図太かったシンデレラ。
どんなに虐められ、怒鳴られても継母達に反抗するシンデレラ。その図太さは、母親が死んでから更に増した。
『さーてと。当分帰ってこないだろうし、あたしは寝てよ〜っと』
自室の狭い、暗い部屋へ戻り、小さな木のベッドに寝転がると、3秒でシンデレラは眠りに落ちた。
めでたしめでたし。
「……ちょっと待つナリ。寝て終わる物語ってなんじゃ」
『……………ぐぅ』
「オマケに寝たふりする主人公も見た事がないのぅ」
『…………誰』
寝て終わる筈もなく、意識が完全に飛ぶ前に起こされたシンデレラは不機嫌ながらも不法侵入して来た変な喋り方の男を一瞥する。
すると、銀色の髪をした男は、無駄に色気のある口元でニヤリと笑い、
「俺は魔法使いじゃ」
と、言った。
『………』
「何じゃその目は。……さては、信じておらんのぅ?」
『………中二病?』
「断じて違う」
いや、どう考えてもその発言は、中二病にしか見えない。いや、すみません、本当は中二病の使い方よく分かってない。
とりあえず、怪しいのでシンデレラはお得意の金テキをお見舞いする………しまった、外れた。
「ちょっと待ちんしゃい、会って間もない男に金テキする主人公見た事ないぜよ」
『えへ、褒めないでよ〜』
「断じて褒めとらん」
あれ、褒めてないの?といった顔で自称魔法使いを見ると、魔法使いははぁ、とため息をついた。
「……明らかな人選ミスじゃな…」
『で?自称魔法使いさんが何の用?あたし寝たいんですけど』
「(やっと話が進むぜよ…!)俺は、いつも継母達にこき使われている可哀想なお前さんを舞踏会に連れていく為に来たんじゃ」
完全なドヤァを見せた魔法使いは、どこからか出した杖をこちらに向けてきた。
(いや、そんなこと言われても。)
『ジャッカルお父様は優しいし大好きだから別に可哀想なシンデレラなわけじゃないんですけど』
「つべこべ言いなさんな」
ほれ、と言いながら杖を一振りすると、あたしの薄汚れた服は、とても綺麗な青色のドレスになった。ついでに顔に化粧も施された。
そして、気になるのが靴。
普通の靴ではなくて、何故かそれは落とすと割れそうなガラスの靴だった。
おお…センスいい……!
どうやら中二病だと思っていた魔法使いは、本物だったらしい。
『魔法使いさん、あたしは正直舐めてたよ!凄いね魔法使いさん!』
「…………っ、!
……魔法使いじゃなか、仁王じゃ」
シンデレラが珍しくニコニコ笑いながら魔法使いを見ると、魔法使いは違う方向を見ながらまさかの自分の名前を名乗りだした。
(いや、何いきなり…)
「なかなかいい小さいベッドじゃな。……やっぱり舞踏会はやめてここで俺と……」
『何?』
「(………。)よし、馬車を出すぜよ」
シンデレラと謎の会話をした後、魔法使いはまた杖を一振りすると、カボチャの馬車が出てきた。
(嘘だろ、カボチャて……)
「……文句言いなさんな、ほれ、城で王子様が待ってるナリ」
まだ文句を口に出してないのに怒られ馬車に押し込まれる。
何!この魔法使い雑っ!もっとちゃんとエスコートしてよ!バカ!
とか言ってると時間の無駄なので、大人しく乗る。
「その魔法は、夜12時には解けるんじゃ。」
『じゃあ12時までに帰ってきたらいいのね。おっけー』
「…まぁ、無駄だと思うがのぅ」
魔法使いは、謎の言葉を残し、
魔法使いの更に謎の「プリッ」の言葉で馬車は出発した。
え、何今の音。
魔法使い、屁したの?
放屁?放屁なの?
と、考えながらカボチャの馬車に乗るシンデレラはゆらゆらと揺れていた。
すると、シンデレラは何かに気づいた。
(………あれ、前に誰か乗ってる。)
馬車の外で、馬を操る(?)人かな。
思わず、あの、と声をかけると、
「はい、何でしょう?」
思いのほか普通の人が座っていた。
(何だろう、久々に普通の人を見た)
と、軽く感動していると、
「あ、今から少し森の中を走ります。揺れるので上のつり革を掴んでいた方がイイですよ」
オマケに紳士だった。感動。
そのおかげで、何故つり革があるのかと疑問に思った心はどこかへ飛んでいってしまった。アデュー。
メガネをしたお兄さんが、シンデレラは気に入ったので軽く会話をしていると、
「おや、お城が見えてきましたよ。」
目の前にとんでもなく大きなお城が建っていた。
***
『ちょっと待って。これどっちかというと魔王城に近いと思う。』
大きなお城に着いて、柳生と名乗ったメガネのお兄さんと、わりとブサイクだった馬とお別れをしてお城の扉の前に立ったのはいいものの、
これはどう考えても魔王城である。
『…くっ、かなり禍々しいオーラを感じるが、ここまで来たからには入るしかあるまい……』
恐る恐る、魔王城の無駄に大きな扉を開く。
(やだ、無駄にギィギィ音鳴んじゃんふざけんなよ怖いじゃないか)
若干へっぴり腰になりながら開いていくと、思っていた魔王城よりも明るく、人で溢れかえっていた。
え、
すごー……、シャンデリアとかも
「凄くオシャレでかっけえ、マジハンパねぇ!と、お前は言う」
(え、怖い。)
「今、俺のことを怖いと思った確率
84.3%」
目、見えてんの?という感じの糸目のお兄さんが開いた扉の正面から出てきた。
『……いやいや、怖っ!怖っ!嘘っ、怖っ!ええええええ、何その無駄な確率!』
シンデレラは今、失言をしたことに気づかなかった。
糸目のお兄さんの目が、ゆっくりと開かれる。その目はかなり鋭い。
「………無駄?」
『いえ滅相もございません素敵な確率、素晴らしいでござる』
ゆっくりと開かれる目に、さすがの図太いシンデレラでも恐れをなした。
シンデレラが急いで謝ると、再び目は閉じられた。
(あの目は解放されてはいけない……)
シンデレラは、頭の中で髪が蛇のメデューサを思い出した。
「………時間を少し無駄にしたな。さあシンデレラ。行くぞ」
糸目のお兄さんはどこからかノートを出しながらそう言った。けれど、
(いや、行くってどこですかていうか何であたしのこと知ってるんですかていうか元々あたしを待ってたみたいな感じだけど実は何か企んでるんじゃないですか)
いきなり、行くぞ、とか言われてほいほいついて行くような教育は、ジャッカル公爵がお父様のシンデレラはされていなかった。
…かといって、自分の恐怖対象に対して反抗する強い心もあまり持っていなかった。
シンデレラの図太さはあの屋敷にいる時が一番発揮されるのである。
というわけで、
結果大人しく着いて行った。
***
糸目のお兄さんに連れられて城の大広間にでると、玄関よりも更に人で溢れかえっていた。
でも、それより気になったのが、
『ねぇ、もしかしてあの無駄に豪華なイスに座ってる人って』
「精i………この国の王子だ」
『今ちょっと本名でかけたよね、絶対そうだよね』
「俺は知らない」
ぷいっとどこか違うところを向く糸目のお兄さん。
いやいや、不覚にもちょっと可愛いとか思っちゃったから、
(ちょっとムカつく)
シンデレラは、ふと気がつくとかなり前の方まで来てしまっていた。そして、何だか長蛇の列が出来ていたから何だか嫌な予感がしたシンデレラはその列から離れようとすると、
「お前はここに並んでいろ。
逃げたら…………………………」
と、糸目のお兄さんは、一言言ってどこかへスッと消えた。
(……いや、逃げたらなんだよ!最後までいえよ!)
どうやらシンデレラは気の遠くなるようなこの列に並ばなきゃいけないらしい。
「あーん、幸村様ぁ」
「あたしと踊って欲しいですぅ」
「あたしと結婚してぇ」
ふとそんな声が聞こえてきて、ゾッとする。
(何だろう、あの幸村とかいう王子、見た目人畜無害そうな顔してるのに腹の中では……)
考えれば考える程寒気がしてきた。
(よくこんな王子の妃になりたいとか言えるねぇ……)
そして、ぼーっと並んでること数時間。いや、数十分。……どれくらい並んだか分からない。けれど気づけばあの長い列はかなり短くなっていた。
シンデレラは改めて、自分は何で並んでるんだろう、と気づきました。遅い。
まず、この列は何の列なのだ、と思い、目を凝らして1番前の方を見ると、どうやら王子の前で踊っているらしい。
(誰と踊っているのかは知らないけど)
ちょっとだけ気になって自分の前に並んでいる、う○こみたいなのを頭に付けてる人に話を聞いて見た。
「何をしてるかでヤンスかって?そりゃ、王子様の妃を選んでいるんでヤンス!{emj_ip_0698}{emj_ip_0698}先に柳様と踊って、その雰囲気とか振る舞い、ダンスとかを王子に気に入ってもらったら、王子の妃になれるんでヤンス{emj_ip_0698}{emj_ip_0698}」
『なるほど。
要するに、とりあえず上手くそのよく分からない柳様と踊れると王子に気に入ってもらえるのか』
「そんなに甘くないと思うがな」
気づけばもう前のう○こ付けてる人の出番で、その柳様とかいう人はシンデレラの話をばっちし聞いていたらしい…………って、
『い、糸目のお兄さんと踊るの?!』
「嫌か」
開眼した目でシンデレラをちらりと見ると、糸目のお兄さん…もとい柳様はう○こ付けた人と踊り始めた。
けれど、それは数回ステップを踏んだだけで、豪華な椅子に座った王子に「違う」とだけ言われて帰らされていた。
そして、シンデレラの番。
シンデレラは昔からダンスが得意な方ではない。
むしろ苦手分野に入る。
まず、知らない人と密着して踊るなんて、シンデレラは嫌だった。
行くのに躊躇していると、見兼ねた柳様はシンデレラの手を取り、引っ張って無理矢理シンデレラを密着させた。
『ちょ、』
「黙って踊れ」
(見事に無理矢理…けどあたしが妃に選ばれる可能性はないし)
そして、無理矢理慣れないダンスをし始めた途端、
「もういいよ。下がれ」
と聞こえてきた。
シンデレラは自分に下がれと言っているのかと思い、内心ほっとしながら下がろうとすると、
「お前はここにいろ」
『はい?』
そう言われると反射的に止まる身体。
すると、ちょっとした階段を下りてくる王子の姿が。
王子が階段を一段一段下りる度に沸き上がる黄色い声。
(初めて立った赤ちゃんかよ)
うるさい黄色の声に耳を塞いでいると王子はそんなシンデレラの手を取って、……手の甲にキスをした。
(なんと………似合いすぎて困る。)
何というか、禍々しいオーラは腹の中に閉じ込めて、外側にキラキラオーラを装備してる感じだった。
王子は顔も中性的で、女の人と間違えるくらい綺麗な整った顔立ちをしていた。
(まあ、皆が騒ぐわけが分かった)
そして密着する身体。
王子とシンデレラは先程とは違った曲に合わせて踊る。
王子に合わせてターンしている途中に継母達と目が合い、かなり睨まれたのでシンデレラは見なかったことにした。
暫く踊っていると、王子はいきなり止まってシンデレラを抱き締めた。
『え、ちょっ、』
「ずっと、君に会いたかったんだ」
そう呟いてシンデレラを再び深く抱き締める王子。
(会いたかったって…どっかで会ったっけ?)
そう、無礼のない様に聞こうかと思ったけど、シンデレラは聞けなかった。
ゴーン
ゴーン
と鳴る鐘の音。
何の音かと思えば、王子は、
「12時になるまでのカウントダウンだよ。……シンデレラ。そろそろ戻らないと、色々まずいんじゃないかい?」
王子にそう言われて、思い出すあの銀髪の魔法使いの言葉。
《その魔法は、夜12時には解けるんじゃ》
(マ ズ イ)
そんなこと、すっかり忘れてしまっていた。
流石に、こんな公衆の面前でお掃除してた薄汚れの服に戻ってしまうのは流石にキツイ。恥ずかしい。
その時、シンデレラは焦って気づけなかった。
王子のおかしな発言を。
(と、とにかく、逃げよう!)
そう思うや否や鐘が鳴り終わる前にここから出ようと走り出すと、後ろから王子に手を掴まれ、
「________」
『……っ、え?』
「じゃあね、シンデレラ」
ゴーン
最後の鐘が鳴り響く。
***
あれから1週間後。
結局あの後は何とか城の外の誰もいないところに出てこれたと思ったらすぐに最後の鐘が鳴り響き、シンデレラの気に入っていたあのドレスは綺麗に消え去った。
しかも、その途中にあのガラスな靴の片方をいつの間にか、なくしてしまっていたらしくシンデレラの足は少し切れていた。
そして現在。
「お菓子がたんねぇ!お前もそうだろい?!」
「キエエエエエエエエ!!!!!」
「赤く染めてやるぜ!」
継母達は、相変わらず、…いや、言葉の暴力にしてはかなり悪化していた。
けれど、それは別にどうでもよくて。
(あの日の王子の言葉……)
《もう君を離しはしないよ。名前》
そう耳元で囁かれた。
何でそんなことを言われるのかよく分からなくて、悩んでてもお父さんは最近家にいなくって相談出来る人はいなかった。
はあ、とため息を吐きながらいつもの様に掃除をしていると、お父さんが慌ただしく帰ってきた。
「おい!真田、赤也、ブン太!名前もちょっと来い!」
最初はお父さんが帰ってきて喜んだが、帰って来て早々偉そうに呼びつけられて、少し腹が立ったので、反抗して行かなかった。
けれども何事かと気になるのが人間で、そーっと柱の影から覗くと、
『…ぁっ』
お城の家来達に、柳様、そして、
王子がいた。
そしてその前に立つ会えて嬉しそうな継母達。
柳様が家来に耳打ちすると、家来が何かを取り出す。
取り出したものは、
シンデレラがあの日落とした、ガラスの靴だった。
あれを何に使うのだろうとじっと見つめていると、継母の真田がその靴を履きはじめた。(え。ちょっと、割れるって。)
(もしかして、あれかな。
あの靴を履ける人を探してるのかな。)
ガラスの靴に足を差し込んだのはいいけど、踵がどうやら入らなかったみたいだった。
そして、ブンタ姉様とアカヤ姉様も履いた様だったけれど、同じく踵が入らなかったらしい。(どんだけ踵デカイの)
そして、ここにいる舞踏会に行った人全員が履けなくて、もう帰るのかと思えば、
「柱の影に隠れてる確率、92%」
「ふふ、隠れてないで、出てきなよ。俺のシンデレラ」
おいで。
一見優しそうな声でそう呟く王子。
かなりの高確率で当てられてしまったあたしは姿を見せるしかなかった。
しかも、
(おいで。とか言われたら、行くしかないじゃないか…!)
ていうか、あたしが隠れていること分かってて継母達に履かせたか、性格悪………と、読心術を心得てそうな2人に悟られないようにしつつ、
ゆっくりと王子達の元に向かった。
「やあ、シンデレラ。
ガラスの靴を置いていくなんて、そんなに迎えにきて欲しかったの?」
『イエ、ワザトジャナイデス』
「ふふ、照れなくてもいいのに」
「…照れている確率、12%」
『(言われてますよ王子)』
シンデレラがはぁ、とため息を一つ零すと、王子が「じゃあ一応履くだけ履いてね」とガラスの靴を下に置いた。
(履くだけ履いてね、って、あたしがガラスの靴の持ち主って確信してるな……)
とりあえず、置かれたガラスの靴を恐る恐る履くと、
「!!!履けたぞ!!」
「この方が王子の探し求めていたお人!!!!」
「この方を妃に!!!!!」
家来達が何やら騒いでいるが、まあ、そりゃあっさり履けるのはシンデレラのものだから。
「ふふ、これで君は俺のモノだよ、………名前、俺の妃に」
なれ。
そう一週間前と同じく耳元で囁かれた言葉は、とてもプロポーズには聞こえなかった。
完全に拒否権はなかった。
『………ワタシデヨケレバ』
「良かった、もし断られていたら俺………」
「監禁していた確率、130%」
『ちょっと待て、100%超えてるんですけど』
シンデレラ達がそんな会話をしている間、継母達は「嘘だろ?!あのシンデレラが?!はあ?!」とか何とか言って騒いでいた。え、気づいてなかったの。
お父様は、と、チラリ見てみると、「嘘だろ…名前…名前…」
と呟いていた。
(まあ、ジャッカル公爵には申し訳ないけど、とりあえず)
パシリから解放されるぅっっ!
妃とかになるのは嫌だったけど、まあ、毎日美味しいもの食べれて、遊んで楽に暮らせるのならいいやー
と、お気楽に考えるのだった。
「じゃあ、早速式の準備を!」
「「「かしこまりました」」」
「跡部王国の王様にも伝えなきゃいけないし、あいつらにもご褒美をあげなきゃいけないし……忙しくなるね、名前」
『………あいつらにも、ご褒美?』
「ふふふ、魔法使いとか、馬車、ダンスの列に並んでいた時、とかね」
『(……間違いない、)』
シンデレラは瞬時に事を悟った。
………やっぱり、妃になるの、やめようかな………………
「ん?今更、断るなんてあり得ないよ?」
『ですよネェ…………』
(さよなら、あたしのキラキラライフ)
幸村王子は全てを操る
(一目惚れだったんだ)
(愛してるよ、名前)
(永遠に)
ーーーーーーー
何だか衝動的にかきたくなったので、
かなり低クオリティです。
最終的幸村は王子より、魔王でした、というお話でした。
あ、真田のピンクフリフリドレス誰か描いてくださると嬉しいです。