仙月が小さくなる話
「擬似AIとか言ってたけどね、なにかお願いするの?」
「ニセモノと分かってても綺麗だよな。……でも願い事かぁ、……うーん……お前の小さい頃とか、1日でもいいから見てみたいな」
「えー、小さい頃、見てみたいの?なんで?」
「うん。だって気になるし、てか何年前?」
「小さいっていうのはどの辺を指すかによるけど」
「普通に5歳児くらいだろ?てか龍人族ってどうやって成長すんの?卵だっけ?」
「5歳っていうとまだ赤ん坊だよ?」
「そんなに?」
「人型を取れるのが50年〜100年くらいだし……」
「うえ、壮大すぎ……」
「人型を取れてからの児童レベル?」
「う、うーん?そうなるのかな?そうかも?」
「その時は……うーん、陽国?慶仙にいた頃かな?人に頼まれて仙術を施していたいた頃かな?覚えてないや」
「果てしなさそうなのは分かった」
「叶うといいね」
「あは、期待しておく」
次の日。
――カシャンと皿の落ちる音がする。
そこには小さな赤い鱗の龍の子がいた。
『ここは、一体……?』
「えっ仙月?ちっちゃ、えっ?なんで?かわいいんだけど」
確かに昨日流れ星に仙月の小さい頃って願ったけどまさか本当に叶うとは。俺は夢でも見ているのか?
『何処だここは慶仙ではないのか?』
「うわ、何歳くらいなんだろう?いくつー?」
『――喧しい。鬼人如きが余に触れるな、無礼者め』
「お、おお?なんて?」
『仙月とは誰だ、貴様は何者だ?馴れ馴れしい』
「何語だろう?陽州語?それとも慶仙特有の言葉?俺の言葉分かんないのかな?」
『どうせ我が仙術を愚かにも盗みに来たのだろう、これだから鬼人は卑しくて嫌になる』
「俺の言葉分かんないのかな?なんか嫌なこと言われてる気がするけど、ねー、仙月?」
「――喧しいと言っている!」
「わ、びっくりした。なんだ俺の言葉分かるんじゃん」
「鬼人の分際で余に話しかけるとは無礼千万、首を撥ねられたいのか?」
「なんか怖いこと言ってるぅ♡」
(多分威嚇してるんだけどちびっこが睨んでるようにしか見えない……!かわいい……)
「けど、なんでこんなにツンケンしてるんだろう?初めて会った時はそんなんじゃ無かった気がするんだけどな」
(先生なら知ってるのかなぁ……?)
「っ、お、?」
どこから取り出したのか、小刀が首筋に添えられていた。
「冗談を言っているのでは無い。――次はその首を殺る」
首筋に赤い線が1本引かれる。鬼人の性か、小さくても龍人族に睨まれるとぞくりと背筋が震える。たしん、と苛立った龍の尾が床を叩く。
「わ、わぁ……♡」
(威嚇の仕方が仙月だぁ……♡この頃から仙月だったんだなぁ……)
仙月もこんな暴君のような時代があったんだなぁ……。生意気すぎて可愛い。お転婆な孫を見るような気持ちでぽやんと見ていると顎をくいと掬われる。
「もしや性奴として使っていたのか?黄金眼……まぁ見目は悪くないが」
「……ませてんなぁ子供のくせに」
「余は300だが、貴様よりは年を経ていると思うが」
「300!?この見た目で俺より年上なの?龍人族どんだけ長寿なんだよ……」
「それよりも仙月とはなんだ?」
「え?お前の名前だけど」
「余に名など無い」
「そんなわけ……、いや、じゃあいつもはなんて呼ばれてるんだ?」
「……さぁ?人間が龍神などと呼んでいたが。仙人に名など不要だろう」
「それじゃあお前の名前を呼べないじゃん?」
「……っ、呼ぶ必要が無いだろう」
「なんで?俺はお前と話したいよ?」
「……貴様は……」
「?」
「捧名せよ」
「なんて?」
「貴様の名を教えろと言っている」
「俺の名前?……俺は沈黙。黙だよ」
「黙……黙か。では沈黙。正式に我が下僕になることを許してやる。喜べ」
「あ、ありがとうございます……?」
「これで余と貴様のえにしは結ばれた。片時も離れることはゆるさぬから覚悟しておけ」
「え?」
「貴様は余のものだ」
「そ、そんなあ…」
「不満か?」
「滅相もない!」
「ならば良い。せいぜい励め、鬼人」
「はい……」
「嬉しくないのか?」
「とっても嬉しいです! 」
「それで良い」
◇◆◇
「――黙。『ソレ』は何?私に無断で隠し子を?」
「隠し子とかじゃなくってぇ……、信じられないかもしれないんですけど、朝起きたら何故か仙月が小さくなっちゃってて……、原因も分からないし途方に暮れていた所なんです……」
「……夜縁?……確かに赤鱗だけど……」
「黙。コイツは何だ?」
「あ、そっかまた小さいから先生のこと知らないんだ」
「先生?貴様の師か」
「師……うん、俺の雇い主で、俺の、恩人だよ」
「……」
「?どうしたの?」
「余に触れるな鬼人」
「ひぇーん……せんせぇ、今の見た?あの馬鹿みたいにゲロ甘だった仙月がこんなに俺に冷たいのぉ……」
「きみはほんとうにトラブルホイホイだねぇ」
「俺のせいなのぉ!?」
「泣かない泣かない。ふーん……これはまた厄介なことになっているねぇ……でもこれ呪い、か……?」
「紫蘭のとこにも行こうとしたんだけど、こいつがなんか嫌がっちゃって……」
「だからって私のところに連れてこられてもなぁ……」
「俯瞰サンが呪いなら先生の方が詳しいって言ってたし……」
「いや、これは、呪いと言うより……、」
「呪いじゃないの?」
「えっとねー……、」
「……嗚呼、そうか、ようやく合点がいった。貴様……、黄龍か。なるほど、随分と、若作りが得意なのだな?」
「ん?黄龍って?」
「……『オマエ』はどこまで記憶が遡っているのかな」
「どこまでも。唐の絡繰はもう『使って』いないのか?」
「……民国の時代に総て消えているよ」
「ほう、そうか。つまらんな」
「な、なんのはなし……?」
「何も。おい下僕、ここにはもう用はない。戻るぞ」
「え?ええ、俺は用があるんだけど……」
「下僕?うちの従業員を勝手に使わないでくれるかな?」
「仕方ないだろう?余は此奴の仙月になったのだ。此れは余のものなのだから、余の意思は黙の意思だ」
「なんだと……?……しぃ?」
「だっ、て……、この時の仙月名前が無いって言うからあ……!いつもみたいに呼んだだけなんです……!そんな強い意味があるとは思わなくってぇ……」
「いや。確かに名付けは龍人族にとって大事ではあるけれど、四六時中側にいる契約だとか、主従のような関係が結ばれるわけではないと思ってたけど?」
「あれ?でもコイツがずっと離れてはいけないって、えにしが結ばれてしまったって……」
「私の認識と齟齬があるね、龍人様?」
「貴様の理解する時代が違うのではないか?」
「苦しい言い訳だね?この子の優しさに漬け込んで上手く言いくるめて使ってたのだろうけど、勝手は困るよ」
「余と黙の縁が繋がったのは事実だ。……お前も余と離れたくはないだろう?なぁ黙」
「う、うん……。その、あの、先生、これってたぶん、ちびっ子の特有の独占欲みたいなものだしそんなに気にしなくても……!」
「子供の我儘に付き合う必要は無いよ?ってか子供じゃないだろうお前」
「貴様はこれが児戯だと思っておるのか?」
「ん、違うの?」
「余は貴様より年を経ていると言うのに!」
「えーごめん怒んないで」
「ねぇ黙、ソレだったら龍胆紫にも影響が無さそうだし、そのままにしておいたら?」
「え、?えー、でも……」
「だって今自分で君より年上だって言ってたんだよ?ひとりでも大丈夫って事じゃないかな」
「黄龍……」
「多分今の君より知識はあるだろう」
「それはそうだけどぉ」
「でしょ?さぁ黙。君は早く仕事に戻って……」
「――黄龍、貴様は余をひとりここに歩かせるつもりなのか?こんな状態の余を?いいのか?」
「ねぇ先生、俺もこいつを見張っておく必要はあると思う」
「……。好き勝手されるのは困るけど……まあいいさ。どうせ一時的なものだし」
「あまりにも浅慮。あまりにも愚か。一時の感情で左右されるなど、
「……ねぇそいつほんとに記憶無いのかな」
「うーん?俺のことは分かってないみたいだったけど……」
「口調こそ違えど、この人を小馬鹿にした物言い、まさに……」
「――童如きの戯言に真になるでない、黄龍。器が知れるぞ」
「餓鬼にも手を抜いてやらないのが私の信条でね?不穏分子は小さな芽のうちから摘んでおくべきだろう?」
「アー!先生抑えて抑えて!」
「ハッハ!負け犬の遠吠えは耳に心地よいなぁ黙?」
「い、いえいえ、そんな滅相も無い……っ!先生ぇ、お願いですから抑えて、っ!この子小さくなって調子乗ってるだけなんですぅ……!」
「――沈黙。貴様の主人は誰なのだ?」
「仙月様ですぅ……っ」
「分かっているなら良い」
「はぁ……、しぃ、今日は非番にしておくからそれを何とかしておいで」
「っ、はい、ご、ごめんなさい……っ」
「……多分、すぐ元に戻るよ」
「そうなんですか?」
「……ああ。そしたらちゃんと戻っておいでね?」
「はい……っ!」
「……沈黙、疾く致せ」
「はぁい……」
◇◆◇
「呪いか。よく言ったものだ」
(これは呪いではなく、むしろ――……)
◇◆◇
「――と言っても、なぁ……」
すぐ戻るっていつ?
「なあなんで旧凰城跡に行かないの?なんか1番手がかりありそうじゃん」
「慣れ慣れしくするな鬼人 」
「急に塩じゃん。傷つくう……!」
「喧しい」
「まぁいいけどさ」
「……今日、あそこは既に旧であり城跡なのだな」
「うん……?」
「ならば余のことを知るものは居らぬ」
「あ、そういう……」
「そうでなくとも悪意の巣窟であった彼処にはもう行きたくは無い」
「なにかあったのか?」
「ハ、辛気臭い面が更に醜くなっておるぞ、何故貴様がそんな顔をする?」
「……だって、お前が辛いのは悲しいよ」
「単純だな鬼人。……いや、だから愛いのか」
「うい?」
「いや、ただの馬鹿だな」
「う、うるせえ」
「――沈黙、余は空腹だ」
「ん、お腹空いた?つっても俺あんまり料理しないし仙月の方が料理は上手いんだよなぁ」
「貴様は余に炊事をせよと言うのか」
「ごめんそうじゃなくってさ、んじゃちょっと待ってて」
「……ふん」
――リビングに小龍を残してキッチンに立つ。
ご飯は全部仙月に任せていたからここに立つのは随分と久しぶりだった。冷蔵庫を覗くと食材やら調味料やら作り置きやらが様々に詰め込まれていて、急に仙月の存在を突きつけられた気がした。今日もまたここでご飯を食べる予定で、全部用意してたんだよな……。そう考えると少し寂しくて、ため息が漏れる。
とりあえず今はあの小さな暴れん坊を大人しくさせなければ。
卵、薄力粉、牛乳、砂糖。ベーキングパウダーとかバニラエッセンスもちゃんとあった。
(あの顔で結構甘党なんだよなぁ、あいつ)
(あれはいつ形成された嗜好なんだろうか?)
思いつつ卵を溶いて砂糖を合わせていく。白っぽくなってきたら粉類を混ぜて、ここでバニラエッセンスも少し。この香り、こんなに甘そうなのに苦いんだよな。
油脂も少しづつ混ぜていけばパンケーキ生地の完成だ。
(うん、よし。子供ならパンケーキも多分好きだろ、安直すぎる?まあいっか)
熱々のフライパンに生地をとろりと流し入れ弱火で2分ほど。気泡がぷつぷつ出てきたらひっくり返す。
こんがりきつね色のまんまるのパンケーキ。
(ちゃんと美味しそうだ、よかった)
「……疾く致せ!」
「はいはいお待ちを!」
リビングから怒号が飛んできて少しびっくりする。まだ30分も経ってないだろ。
結構わがままとか言うんだなぁあいつ。
あの小さな龍は、大人の仙月より感情が分かりやすくて扱い易い。……今のアイツを作ったのが龍凰城なら、あんなに感情を殺すのが上手くなってしまったのにも何か理由があるのだろう。
(本人が話したくないなら無理に聞かないけど、俺ってあいつのことなーんも知らねえんだなあ)
同じように作ったパンケーキを3枚ほど重ねて、バターを乗せ、その上から甘いシロップをかける。凰西で流行ってるあのふわふわのやつじゃないけどおやつには十分だろう。
ナイフとフォークを持って行ってやり小龍の前へ置いてやる。
「なんだこれは」
「パンケーキだよ。甘くて美味しいんだ、お前はこれ好きで……」
「変なものを食わせたら承知しない」
「ふふ、はいはい。ほらあーん」
「な、っ、……」
「?」
1口大に切ってやり、口元へフォークを持って行ってやると小龍は一瞬変な顔をしたが大人しく口を開けてくれた。もぐ、と口の中で咀嚼すると胡乱げだった瞳にきらりと光が走り、口の動きが加速する。
(良かった、美味しかったみたいだ)
「美味しかった?まだ食う?」
こくんと頷き雛鳥のように口を開けるのが可愛らしい。
(あの仙月にかわいいなんて感情が生まれるとは……!)
親鳥のごとくせっせと口に運んでいくのを繰り返すと皿の中のパンケーキはいつの間にか無くなってしまっていた。
「まだあるけど食べる?」
「……寄越せ」
「はーい」
そうして最終的に6枚を食べきって小さな龍は満足したようだった。紙ナプキンで口を拭って小さく溜息を漏らす。
満足したのか動きが緩慢だ。
(お腹がいっぱいになって眠くなるってやっぱり子供なのでは?)
そんなことを言ったらまた殺されかねないので心の奥で呟いておく。
◇◆◇
「この龍神と呼ばれる余と鬼人が同衾だと……!?」
「同衾て」
「身分を弁えろ」
「ハイハイ寝よう寝よう」
「貴様……っ」
「坊や良い子だねんねしな〜……」
「坊やでは無い……」
「よしよしいーこいーこ……」
「……ふん……」
◇◇◇
「……寝かせる方が先に寝てどうするのだ。全く鬼人は能天気で困る」
この鬼人はどうにも龍人族に対して油断しているきらいがあるな。この時代の龍人族の力が弱いのか、それとも『この』龍人族のせいか。
「ん……、」
開襟シャツのせいか寝返りを打った際に白い首が晒される。晒された首の喉仏を撫でて、そのまま親指で軽く握る。気道が少し圧迫されたからか、寝顔の眉が少し寄った。幼龍の手のひらにさえ納まる首だ。こんな細い首など幼子の腕力で簡単に折れてしまうだろう。折ったらこの鬼人は死ぬのか?首を折ると脅したらこの鬼人は泣き喚くのだろうか?殺さないでと慈悲を乞い、許してと媚びを売るだろうか?
(今是れを壊したら『この』龍人族は嘆くかもしれないな)
鬼人が龍人族にこんなに油断出来るほどに懐くにはどれだけの年月が必要だったのだろう。
『わたし』もいつかこの鬼人を我がものにできる日が来るのか?それはいつだ?
――今この鬼人を犯したら『わたし』のものに出来るのか?細いこのからだを暴いて、杭を打ち込んで、その身を汚したら。この鬼人はどうやって乱れるのだろうか。
(黙……)
音にならなかった音が聞こえたのか鬼人がゆっくりと黄金の眼を開く。
「ん、どした?ねむれない……?」
労るように頬に伸ばされた手を取りその手のひらに口を寄せる。鬼人は寝起きで何も分かっていないのか擽ったそうに目を細めた。
「……お前のことを考えていた」
「そおなの……?」
「ああ。だが貴様はもう眠いのだろう?寝てしまえ」
「……うん、また。あしたな……」
微笑んで黄金眼はゆっくりとまた瞼の下へ隠れていく。
――また明日。その明日は余にはもう来ない。このままこの鬼人を攫ってしまえたら。
じわりと滲む欲に静かに蓋をする。龍が鬼に絆されるなどあってはならないのに。
「恐らく余が……、わたしがここにいるのは夢だとか幻術だとかの類で、ここにいるのは不具合があるのだろうな」
こんなぬるま湯の未来などあってはいけない。こんなことを望む立場でもない。わたしは早くあの時間へ戻るべきなのだ。
「正しい時間に戻った時、もしわたしがお前を憶えていたら……、」
小さく開いた唇に己のものを重ねてそのまま首筋に噛み付く。龍神に気に入られたことを後悔するといい。
「……そのときはきっと……、この手を離すことは決して許さない」
――次会うのが楽しみだな、黙。
◆◇◆
「……んん、」
小龍を寝かしつけるついでに自分も一緒に寝てしまったらしい。
ぼんやりする頭のなか、うつらうつらしながら目を開くと目の前に美しい龍人族の顔があった。
「……オハヨ?」
「おは、よ……?」
「我を寝かすのに自分が先に寝てどうするの?寝てるのにがっちり掴まれてて寝るに寝れなかったよ?」
「ごめん……?あれ?あ、そっか仙月、戻っちゃったんだあ……」
「なぁんでそんな残念そうなのー?」
「だって小龍可愛かったし……」
「今も可愛いでしょうが」
「胡散臭さがどうもなぁ」
「ひっどーい!そんなんだったら泣いちゃうんだから!エーンエーン」
「そういうのが胡散臭いんだよなぁ……。そういえば小さくなってた時の記憶あるんだ?」
「だってあれ我が意図的に設定してた時間だもん」
「は?」
「だから、時間経てばちゃんと戻るし別にニノマエのところに連れていかなくても良かったんだよー?」
「そうだったんだ……、ってそうじゃなくて!」
「あ、でも旧龍凰城に嫌な記憶があったのもほんとだよ」
「……それはそうかもしれないけど!なんでそんなこと」
「だってシーちゃんが我の小さい頃見たいって言ってたんじゃん?」
「言った、けど……、俺が言ったからなの?」
「うん、もちろん」
「そんな……過去に戻ったとしてちゃんと小さな仙月が俺の傍にいる確証もないし、どうなるか分かんないのに」
「まーでもシーちゃんは我の事見捨てないかなって思ったし、小さい我もきっとシーちゃんを気に入るだろうって思ったし」
「だからって……。お前、俺の事好きすぎだろ……」
「そうだよ?」
「そ、そっか……」
「シーちゃんは小さい我のほうが良かった?なんならまた、」
「戻らなくていい!いいから!すんな!」
そんなにぽんぽん肉体を変化させていいわけがない。
仙月を窘めて、その頬を両手で包み込む。
「……ちゃんと今のお前が好きだよ」
「ほんと?」
「……うん、」
目を細めた龍は俺の手を取りそのまま手のひらに口を付けた。
(ん?なんか既視感……?)
「あのときから、ずっと、手に入れたいと思ってた」
「……あのとき?」
「あれは我の記憶からの咒骸だから正確な子供時代ではないんだけど、当時の記憶と環境、そしてその時触れたあらゆるものは今の我の記憶として残っている」
「……うん、?」
「シーちゃんがパンケーキ作ってくれたことも、ニノマエが我を殺そうとしてた事も過去のこととして覚えてるってこと」
「……つまり?」
「だから我はパンケーキが好きだし、おまえとのえにしを終わらせてやる気もないってこと」
「ひえ」
「500年分の愛もちゃんと受け止めてね、黙?」
「ひええ…」