例えば貴方の腕の中で



邸内には少しの光の侵入を許さない、窓という窓全てに遮光カーテンが覆われている一室。

「人間の体ってこうも弱いのね…」
彼女の唇から紡がれた言葉に否定の言葉は見つからず、唯僅かに首を縦に振る。
「……」
瞬きをして此方を見詰めながら
「もう足も動かせなくなってしまったの、少し前までは沢山足を動かして色んな所に行けたのに…」
「ふん、貧弱な奴め…」
本来ならば素直に励ます言葉をかけてやりたい。だがその想いとは裏腹に口から出るのは棘のある言葉ばかり。そう言いながらも彼女をゆっくりと抱き寄せ
「ねぇ、ディオ。天国で貴方のお母様に会えるかしら…?」
「会えるさ、母さん…きっと喜ぶぜ」
「フフ、良かった」
そう言って綻んだ彼女の表情は一層儚く、そして誰よりも美しかった。今にも消えてしまうのではないかという一抹の不安を覚える程に。開かれた唇から揺らぐ言葉を一語一句も聞き逃さぬ様に耳傾けては相槌をうつ。
その不安を隠すかのように彼女の額へ唇を寄せては触れるだけのキスを落とし。
「」
「お母様に会うことが出来たら…貴方の幼い頃のお話が聞きたいわ」
「」
「貴方は、ディオはうんと生きてね。この先ずっと…」
「うっかり日を浴びてちまったらお前のところへ逝ける」
「もう…ふふ、うっかりさんね。お母様と一緒に叱らないと」
嗚呼、彼女の体温はまだ残っている。人為らざる者と化し己の体は冷たい血が通っているが未だくっきりと温もりは思い出す事ができた。ついさっきまで言葉を交わしていたというのに、もう彼女はピクリとも動きはしない。脆弱で…儚い、其れ故に愛おしい。
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