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耳を澄ましてセルの音を探る。しかし、あちらこちらから耳鳴りのような音が邪魔をしてドールの存在置をぶらす。聴こえてくる音を目をつむって聞いてしまったら、方向感覚が狂ってしまうほどだ。
「やっぱり音だけで探るのは難しいです」
「そうか」
「ふぅ…目を瞑ると酔いそうです」
「踏ん張れ」
「リミルトさん……あれ?」
じとりと睨み付けるが、ミレイユはあることに気がつき始めた。
「ん?何か察知したのか?」
「いえ、リミルトさん背小さくなってませんか?」
「は?」
言われてみれば、確かに袖の部分が長くなった様な気がする。
「セルの影響か」
「早くしないと…あ!」
刹那、耳鳴りが一層激しく頭に響いた。すると何処からか、誰かの悲鳴が聞こえてくる。まさかと思いリミルトの静止の声を後ろにし、声がする方へ足を走らせる。二階へと続く階段に差し掛かると、目の前からは長くなった髪を揺らしながらテンが駆けてきた。
「テンちゃん!」
「ミレイユ」
隣にハチヤの姿が見えないのを疑問に思ったが、二階から何かが割れる音に意識は自然と二階へと向けられ、見合わせた二人は階段を駆け上がる。すると、階段の踊り場には座り込んで額にハンカチを当てているクライドと、心配な顔で横に座わるエルヴィの姿。その横には襟首を掴まれたシセイと掴んでいるウィリアムが居た。
「狭っ!」
「わっ皆さん…!クライド大丈夫!?」
「う〜大丈夫だよ、けどまだ気持ち悪いかも…」
「クライド…」
「放せよっ!」
「もう少し落ち着きなさい」
そんなに広くは作られていない踊り場に、密集した仲間達の顔を見て少し安堵するのも束の間。
「しゃがんで!!」
「うわっ」
テンが声を張り上げ、咄嗟に身構える。
すると、二階の奥の部屋からカタカタと音が聞こえるのと同時に鋭利に硝子が割れていく音が一気に廊下を伝い時計屋達の目の前を駆けていきながら、向かい側の廊下を伝い硝子を割っていく。
「っー…」
「皆さん大丈夫ですか!?」
「やっと見つけた…!」
「エルヴィ行こう!」
「う、うん!」
「よしっさっさと片付けるぞ!」
一足早くテンが駆け出すとエルヴィはクライドを背負いながら跡を追う。シセイもやっと出番だと言わんばかりに駆けていくがまたもや、ぐんっと襟首を掴まれて宙に放り出されてしまった。
「お前はそこに居ろ!」
「ぐぅあっまたかよ!」
「きゃ!」
颯爽と駆けぬけて行ったルイスの姿はもうなく、シセイが投げられていくのと同じタイミングでミレイユは階段に躓いていた。が、横にいたウィリアムに支えられ転げずに済み、しゃがんだ状態になっている。
「ウィリアムさんありがとうございます」
「いえ、それよりそのままで」
「え?」
何故と聞こうとした時、ミレイユの頭上をシセイが通り抜けていく。おかげでお互いぶつからずに済んだがミレイユの後ろ、階段の下には座り込んでいたハチヤが居た。
「ハチヤ!?どけっ!」
「シセイ…?」
どけと言われても直ぐに動けるはずもなく、シセイと頭がぶつかる。そう思った寸前に駆けつけてきたリミルトが丁度良いタイミングでシセイを横からキャッチした。それと同時にシセイの服の中から宝物室にあったであろう一冊の本がボテッと音を立ててハチヤの目の前に落ちた。
「これは…」
誰かがそう呟いた瞬間、何か動物の鳴き声が別館内に響き渡った。
2012/07/25
制作:サラキさま