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薄暗い屋根裏部屋での探索が始まった時、シセイはぼそりと呟いた。テンのバカヤロー、と。それに反応したのは、真後ろを歩いていたミレイユ。「それ、本人に言ってみたらどうですか?」
「はぁ? 言えるわけねーだろ!」
思わず大声を出して反論したシセイに、真横を歩いていたクライドから「煩い」と鉄拳が飛ぶ。ハチヤは天井に頭をぶつけないように注意をそちらに向けている──というアピールをして、見て見ぬふりを決め込んでいる。どうやら、未だに本に対するシセイの対応が気に入らないらしい。そろそろ、本格的に自分の「不憫キャラ」という立場が確立され始めている気がするのだが、あえて目をそらしておこうと思うシセイである。
気を取り直して、早速、屋根裏部屋の空気を注意深く嗅ぐ。一瞬だけ意識が遠のきそうになったが、何とかこらえ、一言。
「いる。ここに」
普段ならば「分かりきったことを言うな」と言われそうな台詞だが、朝からの一連の騒動で疲れ切ってしまっていたり、セルの存在感に感覚がショートしてしまいそうだったりと、反応するだけの気力がなかっただけに過ぎない。
さて。セルがいることは重々承知しているのだが、問題はこの後の行動だ。正直、狭い屋根裏部屋とはいえ、駆け回るだけの元気は無い。
「下へと追い出す、か?」
「「それ、さんせいー」」
声を揃えてしまったシセイとクライドは、何となくお互いを見やる。が、口を開く力があるならばこれから駆け回るために取っておきたい、ということだろう。何も言わずに目をそらす。足が自慢のミレイユは、既に準備体操を始めていた。それは既に──獲物を狩る目。
「ミレイユ、気合入ってるな」
思わずハチヤがこぼした言葉に、シセイは小さく頷く。計時機関本部を混乱に陥れた敵とはいえ、あそこまで本気モードのミレイユに追いかけられるとなると、少し同情してしまう。経験者は語ろう。マジで怖い、と。
「さてと。どうやって下に追い出す?」
走って囲って、という方法しか浮かばないが、セルに対する感知能力が高い者ほど、この空間で走り回ることは辛いだろう。少し陣形が崩れてしまえば、そこから逃げ出されてしまう可能性もある。
足を活かす作戦でいくとあってか、陣形について考えることに張り切っているミレイユ。そんな彼女に対して申し訳なく思いながら、シセイは手を上げてる。
「はい、どうぞ」
「陣形とかめんどいから、適当に走ろう」
即座に飛んできた脚の回避も慣れたもの──かと思われたが、ここはいつものような屋外ではなく、しかも、狭くて薄暗い屋根裏部屋。いつも通りの回避行動が仇となり、シセイは近くに置いてあった品々の山へと突っ込んでしまう。
派手な音を立てて崩れる品々に、流石にこれはシセイの心配をしかけた面々だったが、やはりシセイはシセイだった。シセイの突っ込んだ山が崩れると同時に飛び出してきた、セルと同調した何か。そちらに気を取られた三人にとって、衝撃とセルの強烈すぎる匂いに目をまわしたシセイのことなど、即座に意識の外に捨て置かれたのである。
2012/08/28
制作:雲房十時さま