Crack Clock - NPC
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 体を襲う衝撃に、シセイの意識は強制的に浮上させられた。背中から全身に広がるじんわりとした痛み、見上げると映る穴の開いた天井を見ると、状況は嫌でも分かる。自分は、落ちたのだ。そして、誰にも受け止めてもらえなかったのだ、と。
 この際、それはどうでもいい。過去のことをどうこう言ったところで、この痛みが消えるわけではないのだから。問題は、今だ。現在進行形で襲い来る痛みの原因だ。

「……なあ、俺、これ」
「動くな」

 どうすれば良いのかと問おうとしたのに、言い切る前に、遮られる。流石に、その態度にはイラつく。だが、文句を言う気にもなれない。実年齢はともかく、今の体は幼い頃の者。その状態で、床に横たわった状態のままで周囲を立った人間に囲まれていれば、きっと当然だろう。もう、本当にどうでもよくなってきた。この状況でも、誰一人として自分の心配をしてくれていそうにないことなんて。誰が制止の声を上げたのかが判別できないくらい、同時に発されたその声。もう、助けは諦めよう。
 痛みの発生源へと、視線を走らせる。幸いなことに、痛みには生活上、職業上慣れてしまっている。耐えられないものではない。痛む右腕から意識をそらし、左手をゆっくりと動かす。

「……これ、犯人でおっけー?」
「だろうな」
「というわけで、シセイ、もう少し頑張ってねー」

 他人事だと思いやがって、という言葉は飲み込んだ。流石に、それを言ってもどうしようもないことくらいは分かる。
 痛みの元辺りに降ろした手は、もふもふとした毛並みに触れる。視線を下ろしてみれば、しっかりと右腕に噛み付いてくれているそれと、しっかり目があった。

 それは、一匹の白い仔猫。

 感染型であるこの猫が、おそらくは今回の原因なのだろう。そして、この様子から察するに、彼(彼女?)が天井から落ちて驚いている上(或いは近く)に、シセイが落下。驚きのままに取りあえず噛み付かれた、といったところだろう。妙なところで、セルに寄ってこられるという7時の時計屋の特性が出てしまったと言えなくもない。
 正直な話、嗅覚でセルを感知するシセイにとって、この諸悪の根源と密着した状態は非常に辛い。不快な匂いでは無いのだが、いくら好きな匂いでも間近で嗅がされ続ければ嫌になるのと同じだ。ハッキリ言うと、そろそろ離れたい。

「なあ、さっさとセル、回収してくれ」

 他のメンバーが捕まえようと手を伸ばすたびに、怯えた仔猫は牙と爪を立ててくれるからたまったものではない。さっさと口を離せばいいものを、何をやっているのか。とりあえず、全ては時計屋としての自分の特性に理由を求めておいたシセイは、もう逃げないようにと仔猫をしっかりと抱きかかえた。



2012/12/13
制作:雲房十時さま

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