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天井裏を捜索し、そのまま足場が抜けて真下に落ち、挙げ句その上で子猫と格闘すれば全身ほこりまみれになることは必至である。事実、天井裏捜索隊をはたけばほこりが舞う。「うううシャワー浴びたいです……」
髪についたほこりをとりながら、ミレイユが呟く。外に出てみると確かに体の煤け加減がよく分かる。
「なんかいつもと違うからかなぁ、無駄に疲れたような気がするね」
「いつもよりちっちゃいといつも通り動けなくて辛いしね」
割に元気を取り戻したクライドがエルヴィの腕に抱えられてふう、と溜め息をつく。終始響く悲鳴のような音が原因の頭痛により、青白くなっていた顔には赤みが戻っている。
「つーかシセイ大丈夫なの? まだげっそりしててさ」
「あー……服が甘ったるい」
「匂いが残ってるってこと? 大変だね」
全くだ、とシセイはうなだれた。聴覚に長けた双子やミレイユにも耳鳴りは残るが、気になる範囲ではないのが羨ましく思える。
天井の抜けたあの階と天井の掃除は誰がするんだろう、と皆がぼんやりと考え始めたそのとき。
にゃあ。
先ほどまで聞いていたまだか弱さの残る子猫の声ではない、はっきりしっかりとした
猫の声。一瞬ユークリッドかとも思い、そちらを見るも違う。
では、どこに。きょろきょろとあたりを見回す。すると、ハチヤが小さく「あ、」と何かを見つけた。
「あ、猫さんだ」
「ほんとだー。ねーこさーん!」
ハチヤの視線を追った双子がてくてくと猫に近寄る。いきなり近づいてくるものにびっくりしたのか、猫はすばやく距離をとる。それ以上近寄らない双子に警戒しながらも、つかず離れずの位置をうろうろとする。その姿は、何かを探しているようにみえた。
「もしかしたら、さっきの子猫の母親かもね」
テンが猫を目で追いつつ、ぼそりと言う。言われてみれば、子猫と毛色が似ていた。あの子猫をそのまま大きく、したような。
猫は同じところを何度もうろうろした後、かの別館のほうへ歩いていく。我が子の匂いを辿っているのだろうか。そうだとしてもその先に子猫は既にいない。
疲れたような、やりきれないような、そんな空気が猫を見ていて更に重くなったような気がした。
2013/04/30
制作:黒羽さま