Crack Clock - NPC
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「修理工事は今日開始する予定です」
「そう、引き続き別館修復状況報告と今回の任務に当たった時計屋の給与から修理代分を差し引くわ。代わりに臨時任務として手当て分をお願いね」
「わかりました」

情報課のトゥーリアは手元に渡された書類を受け取れば、無意識のうちにむすっとした表情に。
数日前、本部の別館に入り込んだタイム・ドールの回収の際に破損した屋根裏や部屋など、時計屋達が苦戦した跡が痛々しく残る。その様々な傷痕と回収後の彼らを思い出したトゥーリアは、なんとも言えない気持ちが心に渦巻いた。

「トゥーリア」
「え、はっすみません」
「あなたも少し休みなさい」
「はい総監、失礼します」

アニタに促され、意識を戻したトゥーリアは、一礼をすると慌てて執務室を出て行った。するとメトロノームが6時間置きに鳴らす鐘の音が辺りに響き渡る。本部は今、白夜から平穏な朝を迎えた。

「さぁ、今日も働いてもらいましょうかしらね」

頭に響く鐘の音で目を覚ませばゴツンと頭に積み重ねた雑誌がぶつかり、それはばらばらと床へと散らばった。ハチヤはそれを横目で見届けると床に落ちた雑誌を拾い、自分の掌を確認するように暫く見た。そしてゆっくりと上体を起こし部屋に視線を移せば何ら変わりない自室がある。だが、ここ数日と比べれば幾分か狭く感じた。
元の姿に戻ったのだと、まだぼやける思考で確認をすると、欠伸がでる。どうやらまだ寝足りない体の怠さに、ハチヤは再びベットに横たわった。
数日前、本部から出払っていた者が続々と帰ってきたのだ。もちろん彼らの姿に驚き様々な出来事が起きたのは言うまでもない。もちろんハチヤも幼い姿になり連日あれこれと忙しかったらしい。
そんな二度寝に徹したハチヤの部屋の前の廊下を知ってか知らずか、バタバタと騒がしく走るのは朝から元気いっぱいの双子。
と思いきや、エルヴィは唐突に足を止め、その少し先でクライドは同じく足を止めて振り向く。この少し離れた距離に仄かに寂しさを感じた。

「ねぇクライド!」
「なに?」
「やっぱり同じが良いね!」
「そうだね」

先程感じたそれは、エルヴィの無垢な笑顔と言葉により吹き飛び、二人は互いに歩み寄って手を繋ぐとまた一緒に走り始めた。

「もうミレイユもいるのかな?」
「そうかもね、ところでエルヴィ」
「なに?」
「お腹すいた」
「実は僕も!じゃあ食堂に行こう」
「うん、行こう!」

行き先を変更した双子はまた元気よく廊下を走る。その二人が部屋の目の前をバタバタと過ぎ去っていく姿を見たミレイユは、呼び止める隙もなく、独り言の様に呟いた。

「あ、二人とも行っちゃった…」
「ねぇミレイユ、この服なんだけどさぁー」
「で、どうして俺だけまだ縮んだままなんだぁー!!」
「シセイうるさい」
「まぁまぁシセイさん、動くとまた髪の毛踏みますよ〜」
「ぬぁ!」
「ほらっシセイ、これなんか良いんじゃない?」

白夜だった為か普段より早めの起床をしたテンとミレイユ。元の姿に戻った二人は、部屋で軽い朝食を済ませていたシセイの部屋に突撃していた。そんなシセイは一番タイム・セルの影響を受けて今も尚、幼い姿のままだ。そう、その姿のせいで可愛らしい服を着せ替えたり、長くなった髪を結っては外し、飾りを付けたりと好き放題に弄られている。もちろん彼自身は抵抗した。がしかし、可愛いものに目がないミレイユは豹変し、テンは悪乗りに拍車をかけてシセイを弄り楽しんでいる。今、目の前にいるこの二人から脱け出すのは誰かの手助け無しには難しい。更にこの二人が去っても次は双子が遊ぼうと来てしまい休む暇さえない。そんな日が二・三日続き目をぐるぐると回しているシセイの耳に、二人の聞き慣れた声が届いた。

「随分と賑やかですね」
「鍛練する暇もないようだな」

わいわいと1人を除いて楽しんでいる三人の背後。開いたままの扉の前には、赤々しい髪を靡かせたルイスと爽やかな笑顔のウィリアムの姿。

「三人とも仕事だ」
「わかった!直ぐ仕度する」
「シセイちっさいままだけど?」
「いや、俺は行くぜルイスっ」
「シセイさん、ならこの服に着替えた方が良いですよ!」

思わぬ助け船だといつもより仕事に行く気満々に返事をすれば、ルイスの隣で書類を改めて確認し終えたウィリアムが仕事内容について説明を始めた。

「今回はアーキタイプのタイム・セルと思われています。以前より報告されている例の場所ですね。大体の範囲の特定はされていますが君達が行かないと詳しいことは解らないです」
「援護は任せろ、支度が整い次第出発だ」

ルイスの呼び掛けに各々返事をした。
その頃、食堂近くの廊下では双子が廊下を走ってはいけません!と、トゥーリアに怒られていた。その様子が伺える食堂のテーブルには目の下に黒い隈をつくり眼鏡を鈍く光らせていたリミルトが居たそうな。

本部内はまた、忙しく賑やかな一日が始まった。

何らか変わりない日々に思えるが、あの事件の様に、形だけは過去や未来が入り組み変動するこの世界。けれど、時は確実に進み続けている。だからこそ、あの小さな命も共に在ることを祈って、今日も彼らは飛散した時間の中でそれぞれの思いを抱き、特別な今を過ごしながらまた時を集めるだろう。



End.



2013/05/26
制作:サラキさま

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